中国の思惑通りにはいかない(その3)

2020.07.16


中国が香港に国家保安法を適用することに対し、欧米は批判の度合いを深めています。
たしかに香港の民主主義は風前の灯となることが予想されますが、日本としては慎重な見極めが必要で、まだ動くべきではありません。
政治的な論評は、7月15日号で述べるとして、今号では、この処置が中国の金融に多大な影響が出るだろうということを論じます。
 
前号で、中国が発表している外貨準備高の数字はかなり怪しく、しかも90%は米国債というアキレス腱を抱えていることを述べました。
外貨準備高はピークだった2015年6月から4年半で7000億ドルも減少し、さらに減り続けています。
この減少の主因は資本逃避であり、そのメインルートは香港市場です。
香港に対する国家保安法の適用は、政治的には民主勢力を弾圧するためですが、経済的な事情もそれに劣らず大きいことがうかがえます。
つまり、習近平政権は、香港市場を北京の監視・統制下に置き、カネの脱出口をふさいでしまおうと考えたのです。
そうしないと、中国経済は金詰りで崩壊すると判断したのでしょう。
 
当然、欧米の反発は予想したでしょうが、トランプ政権の主導で欧米が結束して対中制裁を行うことはないと判断したと思われます。
また、親中派の影響が強い安倍政権は同調しないと、日本を侮っている(?)ことも伺えます。
尖閣諸島への領海侵犯の頻度を上げていることは、軍事的な野心とは別に「米国に同調するな」という脅しの意味も大きいと思われます。
こうした中国得意の「離間の計」をどう切り返すか、日本外交の能力が試されているのです。
 
日本国民の多くは、軍事政策と経済政策は一体のものという根本が理解できていません。
国際政治の世界では「金持ちケンカせず」ではなく、その反対で「金持ちはケンカ好き」なのです。
金持ちになった中国との付き合いは、貧乏だった時代の中国との付き合いとは180度変える必要があるのです。
軍事と経済を合体させた硬軟両面の付き合いこそが、独裁国家との付き合い方なのです。
 
次回は、中国独特の「社会主義市場経済」なるものを解説します。