2018年4月30日号(経済、経営)

2018.05.22

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2018年4月30日号
┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓
   H  A  L  通  信
┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛ http://www.halsystem.co.jp
発行日:2018年5月1日(火)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
           2018年4月30日号の目次
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★コンビニの衰退が始まった?
★米中貿易戦争の行方
☆まだビジネス社会に入る前の子どもたちに向けて
◇バッテリー技術が鍵をにぎる電気自動車
 
http://magazine.halsystem.co.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
こんにちは、安中眞介です。
今号は経済、経営の話題をお送りします。
 
日銀は「2019年にインフレ率2%達成」を目標としてきましたが、2019年という期限を削除しました。
日銀の無策を非難する声もありますが、それは少々酷です。
2%という数字は欧米先進国の水準ということで、円高を抑える意味から、目標としては当然の数値なのです。
また、最近、じりじりと物価が上がり始めているので、達成は非現実的ではありません。
問題は、来年の消費税10%です。
政府は難しい判断を迫られることになります。
 
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃★コンビニの衰退が始まった?              ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
経済誌などで「コンビニの衰退が始まった」という記事を見かけるようになりました。
それでも、コンビニチェーンの業績は右肩上がりを続け、限界など無いかのような上昇ぶりです。
大手3社の店舗数は平成29年度で5万店舗を超えました。
「コンビニは絶好調ではないか」と言いたくなりますが、そこに衰退の芽があるというわけです。
 
そこで過去のデータを見ると、売上高と店舗数の上昇カーブがまったく一緒なのです。
つまり、新規店舗の出店が業績を引っ張る機関車役を果たしてきたのです。
これは、最終消費者を相手にする商売の王道であり、これまでの成功例も、みな同じパターンです。
 
しかし、ここにきて、既存店舗の客数が落ちてきているのです。
2019年2月のデータでは、セブン-イレブン1.6%減、ファミリーマート3.1%減、ローソン2.2%減となっています。
客単価が増えていて、そのおかげで売上高は、セブン-イレブンが1.1%増、ファミリーマートがトントン、ローソンが1.2%減となっています。
「コンビニの衰退が始まった」は少々大げさですが、「来客数の頭打ち」は確かなようです。
 
コンビニの成長期、店舗数の上限は「4万店舗」と言われていましたが、それを1万店舗以上も超えてしまっています。
限界線を超えているのは確かです。
その一方で、既存店の驚異になりつつあるのが、ドラッグストアです。
ドラッグストアは、単なる薬屋ではなく、コンビニ並に飲料や食品類を揃え出しています。
しかも価格はコンビニより安い。
そのからくりは、薬販売という粗利率の高い商品を有していることにあります。
飲み物や食品類の利益を犠牲にしても、客が薬やサプリメントも買ってくれればOKなのです。
 
しかし、コンビニがこの真似は出来ません。
薬を販売するには高いハードルがあって、逆攻勢が難しいのです。
その理由は簡単ですね。
法律と製薬会社との関係のためです。
 
読者の中にも、飲み物や菓子類はコンビニからドラッグストアに乗り換えた方もいるのではないでしょうか。
この動きは、まだまだ大きくはなっていませんが、コンビニの客数減少の一因になっていると言われています。
 
1974年5月に東京・江東区豊洲でセブンイレブンの1号店がオープンして44年です。
30~40年が一区切りといわれるビジネスモデルの節目にコンビニも来たのでしょうか。
しかし、1号店は今も顕在で1日平均売上は200万円を超えるということです。
1号店に手を上げるほどのオーナーですから、44年の間、漫然と経営してきたわけではなく、努力と改革を続けてきたはずです。
経営の消長は、「商売として“当然のこと”をするかしないか」だということを物語っている話です。
 
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃★米中貿易戦争の行方                  ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
北朝鮮問題の影に隠れてしまった感がありますが、米中貿易戦争の行方は世界経済に大きな影響を及ぼす恐れがあります。
米国が勝った場合、味をしめたトランプ大統領は、他国への脅しを次々に仕掛けていくでしょう。
結果として世界の貿易量は減り、巡り巡って米国にもその波が降りかかってくると思われます。
そして、世界経済は縮小に向かうという悪夢が現実化するかもしれません。
 
逆に、米国が白旗を揚げ、中国が勝利した場合、「政治は独裁で経済は市場経済がベスト」という中国式を目指す国が増えると思われます。
その波は、開発途上国だけでなく先進国にも蔓延し、民主主義はピンチに陥るかもしれません。
 
どちらに転んでも「良かった」とは言えない未来ですが、世界はトランプ大統領の言動に振り回されっぱなしです。
トランプ大統領は、微妙なバランスでようやく保っている世界経済を根底から揺るがす行動に出ていますが、この姿勢を貫けば結末は悲観的にならざるを得ません。
しかし、何の迷いもなく方針を180度変える人です。
どこかで「そんなこと言ったっけ」とツイートする可能性もあります。
平気でそれが出来ることも、この大統領の特別な性格です。
ある意味、「うらやましい」性格です。
 
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃☆まだビジネス社会に入る前の子どもたちに向けて     ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
少し前の話題になりますが、子どもたちの「将来なりたい職業」のベスト5が発表されました。
そのランキングは、以下のとおりです。
1位 ITエンジニア・プログラマー
2位 ゲームクリエイター
3位 YouTuber
4位 プロスポーツ選手
5位 エンジニア
 
3位の「YouTuber」は、「金儲けが出来る」ことが支持される理由だそうで、大人としては「どうかと思う」職業ですが、他はいたって“普通”ですね。
そう思いながら、“遠い昔”の自分を重ねてみました。
模型作りや機械いじりが大好きだった子供時代、5位のエンジニアを目指していました。
同時にスポーツも大好きでしたので、大学時代はスキー競技に熱中し、一時は4位のプロスポーツ選手を目指した時期もありました。
結局、就職先に選んだのは、1位のITエンジニアでした。
この仕事は、米国に行けたこともあり、面白く全力を上げて取り組みました。
しかし、訳あって20代の途中で建設技術者という5位のエンジニアに転職しました。
結局、少年時代の夢に戻ったわけです。
 
そんなわけで、2位と3位を除く職業を経験しました。
実を言うと、ITエンジニアをしていた時、頼まれて2位のゲームクリエイターの仕事を手伝ったことがあります。
ゲームソフトの黎明期だったこともあって、大手のコンピュータメーカーにいた者は結構、似たような副業をしていました。
でも、自分で創ったゲームで遊ぶのはバカバカしく思えて、間もなく飽きてしまいました。
(他のゲームも似たり寄ったりですから、同様に興味を失いました)
 
つまり、3位のYouTuberを除いて、すべて経験した上で、5位のエンジニアの道に進み、やがて経営の道に入ったわけです。
 
子供たちに聞くと、2位のゲームクリエイターに人気があるのは、創るという意味より「金儲けができる」という理由らしいので、2位と3位の人気の理由は「金儲け」ということになります。
ちょっと寂しい理由ですが、やがて、それが「経営」への興味に変わるならば悪いとは言えません。
 
でも、1位と5位にエンジニアが入っていることは心強いと思いました。
最近、技術立国としての日本の地位がぐらつきだしているという報道もありますが、このランキングを見る限りは、捨てたもんじゃないなと思いました。
子どもたちには、自分の夢の実現に向けて進んでいって欲しいと思う次第です。
 
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃◇バッテリー技術が鍵をにぎる電気自動車         ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
自動運転車の話題が多いですが、自動車産業のもうひとつの波が「EV(電気自動車)」です。
多くの経済評論家は、すぐにも電気自動車の時代が来るとの論調の記事を書いていますが、本当にそうなるでしょうか。
 
まずは、統計データを見てみます。
2017年度の新エネ車の世界販売台数は122.3万台(前年比58%増)ですが、中国市場だけで77.7万台(前年比53.5%)です。
つまり、市場の6割近くは中国が占めているというわけです。
 
ちなみに「新エネ車」とは、EV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリット車)、FCV(燃料電池車)の総称で、ハイブリット車は入らないということです。
 
中国は、大気汚染が深刻なこともあり、国家が大々的に自動車のEV化を推し進めています。
価格の半分もの補助金が出るということで、近年一気に台数が増えてきました。
しかし、販売台数が増えて行政の負担が膨れ上がり、地方政府の中からは補助金を打ち切るところが出てきています。
当然といえば当然の結果ですが・・
 
また、自国産業を保護するため、中国政府は露骨な政策を推し進めています。
一言で言うと「中国車の外国への輸出は自由に行うが、外国車は中国で自由に売らせない」という、まことに自分勝手な鎖国政策です。
 
外国の完成車を締め出すだけでなく、中国で生産されるEVに積むバッテリーについても、露骨な自国優先をむき出しにしています。
中国で生産していない外国製品の締め出しが難しいとなると、技術移転の強要といった政策を次々に打ち出してきます。
どうやら、中国は「世界最大のEV市場である中国市場を独占するため、自国のバッテリー企業を徹底的に保護すべき」と思っているようです。
 
この政策で、まず、韓国製のバッテリーを使った車を補助金対象から外すという処置で韓国を排除し、次に、似たような難癖で、日本メーカーが中国企業に買収されたり、補助金対象から外されたりしています。
 
中国のこうした態度は論外ですが、バッテリー技術がEVの要であることを如実に示しています。
その理由で、私は「EVは早期には普及しない」と主張する一人です。
日産が大々的に宣伝している電気自動車「リーフ」の航続距離は、カタログでは「400Km」となっていますが、実際はフル充電でも300km少々と言われていて、遠出には不安を覚える性能です。
 
京都市などではEVバスも登場して話題になっていますが、採算は取れないと言われています。
公共のバスは、多少採算を度外視しても「環境にやさしい」などの文句で市民の賛同を得られるでしょうが、民間はそうはいきません。
台数が多い運送用大型トラックは、採算を考えると24時間稼働が当たり前です(ドライバーは交代制ですが)。
つまり、充電時間を取ることが出来ないのです。
バッテリーそのものを交換するという技術も開発されていますが、予備のバッテリーを台数分用意し、常に充電するという膨大な手間が発生します。
バッテリー技術そのものが、今の数十倍に高くならない限り、普及は難しいですね。
 
-----------------------------
<編集後記>
予想を遥かに超える活躍で大リーグの大谷選手が野球の話題を独占しています。
実力もさることながら、だれからも愛される風貌や爽やかな印象で、米国での人気もうなぎ登りです。
大リーグを悪く言うことで存在感を出している(?)張本氏も、しぶしぶ認めざるを得ないようで、批判の舌鋒も湿りがちなようです。
怪我が心配ですが、あれだけの体格と見た目以上に柔軟な筋肉の持ち主です。
天はこれだけたくさんの才能を一人の若者に授けたようで、ちょっぴりうらやましいと思いますが、長く活躍を続けて欲しいものです。