2024年2月29日号(経済、経営)

2024.03.04


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2024年2月29日号
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発行日:2024年3月1日(金)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2024年2月29日号の目次
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◇「日経平均株価が最高値を更新」の意味すること
◇2024年への展望(3):日本経済が上りきれない理由
◇これからの中小企業の経営(3)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
2月は短くて“きつい”です。
でも、今年は29日まであって助かりました。
それでは・・
 
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┃◇「日経平均株価が最高値を更新」の意味すること      ┃
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日経平均株価がバブル期を超え「史上最高値」とマスコミが騒いでいます。
ですが、「30年以上も昔の時代と比較して、どうすんの?」と言いたいです。
米国NYダウの株価は、この30年で約13倍になっています。
 
中国の経済がボロボロになり将来への展望もなく、中国国内も含めた投資家が逃げ出しています。
そうした投資家の目に、円安が続き割安感の大きい日本株はとても魅力に映ります。
さらに円安は輸出型大企業の収益を押上げる効果があり、賃上げにも十分堪えられます。
こうした企業の株価は「まだ上がる」と見ている投資家は、さらに買い増しに動くでしょう。
バブル時の壁だった株価4万円を突破する可能性も大きくなっています。
 
しかし、日本経済の行方を手放しで楽観視するわけにはいきません。
経済アナリストの中に指摘する人もいますが、史上最高値更新から一転して日本経済転落という事態もあり得ます。
 
物価高は大企業にとっては追い風であり、賃上げで従業員を集め易くなる効果も増します。
しかし、会社数で9割以上、従業員数でも7割以上を占める中小企業の多くにとって、円安は、材料費、燃料費、電気・ガス代等が増え、経営を圧迫します。
賃上げも、大企業のように上げていくことは難しいのが実状です。
全体の実質賃金は21ヶ月連続マイナス、消費支出も10ヶ月連続マイナスという数字が、そのことを表しています。
つまり、中小企業に勤め、株も持たない多くの庶民は、株高による好景気をまったく実感できていないのです。
 
外国投資家は、今、「日本はデフレ経済から脱却できるかもしれない」とみて日本株を買い増ししています。
たしかに、中国や韓国に投資するより、ずっと安全だといえます。
マスコミは「GDPがドイツに抜かれ4位に落ちた」と騒いでいますが、そのドイツはインフレ状態が続き、国民の暮らしを直撃しています。
「日本を抜いた!」なんて騒ぐドイツ人は、ただの一人もいません。
 
話を日本に戻します。
このような状態が続くと、大手企業と中小企業の格差はさらに広がり、結果として中小企業から大手へと従業員が流出していくでしょう。
大手とて人手は不足していますから「中小企業のことなど、かまっていられるか」とばかり、高値の給料で釣り上げに来るでしょう。
実際、熊本で操業を開始する台湾企業のTSMCは、年収600万~1200万円で従業員の募集を開始しています。
熊本の平均年収が、男性で450万円、女性で331万円ですから、地場産業にとっては恐怖以外のなにものでもありません。
TSMCは、第二工場の建設も発表していますので、激震はさらに続くと思われます。
やがて、日本各地で中小企業の人手不足倒産の動きが増えることが懸念されます。
 
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┃◇2024年への展望(3):日本経済が上りきれない理由    ┃
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前項の続きとなりますが、ドイツの2023年の実質GDP成長率は0.3%減で、日本は2.0%増です。
つまり、ドイツ経済は下降状態にあり、日本経済は「少し上向きつつある」といったところです。
一方、インフレ率は、ドイツ6.6% 日本2.0%です。
「日本経済が良い方向に向かっている」とまでは言えませんが、「ドイツ経済は、かなり“ひどい“状態だ」とは言えそうです。
経済指標は、いろいろな角度から見て自分で分析しないと、本質を見誤る恐れがあります。
マスコミは、インパクトを与える側面だけにスポットライトを当てて煽るのが商売です。
その尻馬には乗りたくありませんね。
 
さて、国の経済政策をコントロールする役目を担っているのは、政府・財務省ですが、そのトップである鈴木俊一財務大臣の答弁は、常に官僚の作文を読むだけです。
腹が立つより「こんなんで大丈夫?」という心配が先に立ちます。
鈴木財務相は、よく知られているように、第70代総理大臣の鈴木善幸氏の子息です。
それ以外、功績らしい功績は思い浮かばない政治家です。
知識においても、財務や金融理論に関する自分なりの考えを聞いたことは皆無です。
(私が見落としているのかもしれませんが・・)
これからの厳しい時代をリードすることには、不安しか感じません。
 
ならば、もう片方の日銀に頑張ってもらうしかありません。
こちらのトップの植田和男総裁は、「超」が5つ付くくらいのエリートです。
東大の理学部を出てすぐに同大の経済学部から大学院へと進み、米国マサチューセッツ大学経済学部の大学院でPhD(特定テーマでの博士号)を得ました。
その後も、日本や米国の大学教授を経て、昨年、日本銀行総裁に就任しました。
学歴社会には疑問を呈する私ですが、ここまで凄い経歴だと、何も言えません。
 
ただし、日銀総裁としての評価はこれからです。
その学問的知識をどう活かしていくかが問われるわけです。
植田総裁は、マイナス金利を続けた黒田前総裁の路線をしばらく引き継ぐ形で政策金利の据え置きを続けてきましたが、昨年後半「1.0%までの上昇は容認する」との姿勢を打ち出し、すぐさま金利は1.0%に張り付きました。
金融界は、日銀が物価高などを問題視し、円安の是正に向けて動くと見ているようです。
その背景には、米国が金利を下げる方向に動き、そのタイミングで、日銀が「マイナス金利政策を見直す」と言えば、円買いが進み、円安から円高に振れると考えていることがあります。
 
こうした見方に対して、経済アナリストの森永康平氏は「日銀の愚策になる可能性が高い」と言及しました。
氏の論理を、以下にそのまま掲載します。
「マイナス金利の場合、民間の銀行は日銀に預金すると金利を取られる場合があるので、それならば企業に貸し出して金利をとろうと考えるんです。その流れがストップしてしまうと企業への貸し渋りが起きて投資が冷え込み、大変な状況になる可能性がある」
さらに「政府も日銀もバブルのトラウマがあるんです。少しでも景気が良くなるとつぶしにかかるところがある。ただ、バブルの時はわけのわからない上がり方でしたが、今の株価は適正価格。実際に欧米各国の株価は約30年間で数倍になっている」と続けました。
 
こうした見解に対し、一定の賛同はしますが、私の賛同率は40%ぐらいです。
森永康平氏は、著名な経済アナリストの森永卓郎氏のご子息です。
森永卓郎氏の講演やセミナーには何度か行きましたが、物事を言い切る口調で一定の人気がありましたが、予測の的中率は「20~30%ぐらいかな」が正直な感想です。
ある経済団体のセミナーで「消費税の増税はない」と言い切りましたが、それから半年も経たないうちに消費税は10%に上がりました。
以来、氏の話は聞かないことにしました。
でも、ご子息の康平氏が同じだとは思いませんので、これからの解説を聞いて判断したいと思っています。
 
一方、自民党の裏金問題に対する国民の批判の声が高まり、ついに国会の政治倫理審査会に旧安倍派の幹部が顔を揃えることになりました。
しかし、「大山鳴動して鼠一匹」の結果に終わりそうな気がしてなりません。
この問題、野党が徹底的に調べ上げ、表に引っ張り出したわけではないからです。
つまり、糾弾する野党側に決定的な材料が見当たらないのです。
それどころか、この糾弾の余波で、法人税や所得税、社会保険料の悪改定につながる恐れを感じます。
つまり、増税路線です。
今後、森永康平氏の見解も紹介しながら、税の動向、企業側の対処法などを解説していこうと考えています。
 
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┃◇これからの中小企業の経営(3)             ┃
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私は大企業に在籍した後、独立して、中小企業の経営を33年間行ってきました。
その間、幾つかの企業の経営も兼務し、また経営コンサル(この言葉好きではないのですが・・)として、多くの会社の経営を見てきました。
 
そこで一番強く感じたことは、経営者と従業員との意識のズレ(あるいは隙間)です。
これは、必然的に生ずる現象であり、経営の宿命ともいえるジレンマです。
また、企業が小さいうちは小さかった隙間が、成長すると大きく広がっていくことは、まさに自社の経営で痛いほど経験しました。
なんとか、その隙間を埋めようと必死に努力しましたが、その大半は虚しい徒労に終わりました。
そうした虚しい努力の代償は、恐ろしいものでした。
そうです。本当に倒産の縁に立たされたのです。
 
昨年の秋、現在の趣味の登山で50年ぶりに槍ヶ岳の山頂に立ちました。
山頂は、少し細長い6畳間ぐらいの広さで、実感では4畳半ぐらいにしか感じません。
そして、東西南北の四方は、すべて90度に思える断崖絶壁です。
おまけに足元は、大きめの石がごろごろで、歩くと“ずっこけて崖から落ちる~”で、四つん這いの移動がやっとです。
(若者は、スタスタ歩いていましたが・・)
その山頂で、倒産必至だった昔を思い出したのです。
 
登山される方はご存知ですが、よく「そんな山頂にどうやって登り、どうやって降りるんだ」と聞かれます。
答えは簡単。一本の長いハシゴが南面の崖に掛かっているのです。
「なんだ」と思われるでしょうが、しかし、初心者には恐怖のハシゴで、そこで断念される方もいます。
経験者である私でも、「一瞬たりとも気を抜けない」の思いで登ります。
 
話が少々脱線しましたが、つまり、絶体絶命の倒産の縁で必要なのは、このハシゴなのです。
間違っても、破れかぶれに、こうした断崖絶壁に素手で挑むべきではないのです。
 
何度か、倒産必至の会社のコンサルを依頼されたことがあります。
結果は、2勝8敗といったところです。
勝率2割ですから、野球だったら最下位ですね。
ゆえに、「もうやりたくない」が本音です。
 
ですが、8敗のうち、半分は救える可能性がありました。
しかし、その可能性を経営者自らが壊してしまいました。
理由はいろいろですが、従業員や取引先より自分自身が大事、というより、自身のプライドを優先してしまうのです。
 
本メルマガで何度も言及していますが、私は故武岡先生の下で、長年、孫子の兵法を始め、様々な戦略論を学んできました。
先生は、先の大戦においては最前線の将校(小隊長、中隊長)として戦い、戦後は陸上自衛隊の陸将補(旧陸軍では少将に当たるといいます)として、幹部候補生の教官を務めていました。
私は、現役の自衛官を含めた先生の研究会で戦略や戦術論を学びました。
先生からはマンツーマンでの教えも受けましたが、その中で絶体絶命状態に置かれた戦場での実際の話も聞きました。
数人の小部隊で300名程度の敵とぶつかった時、「ここで死ぬのか」と思い、どうせ死ぬなら破れかぶれの突撃をと考えたそうです。
だが、思い直し、最年長の上等兵の部下に「どうする?」と聞いたそうです。
なにやら、竹野内豊くんが演じるタクシー会社のCMのような話ですね。
あのCMを見るたび、先生の話を思い出します。
 
この話、長くなるので、次回に続けます。
お楽しみに・・
 
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<編集後記>
今回は、期待を持たせたような終わり方ですみません。
ですが、ヒントはあります。
絶対絶命に追い込まれた時は、その状況を楽しむことに気持ちを切り替え、最悪の中でも一番楽しいと思う策でいくのです。
「後は野となれ山となれ」ですね。
次号(3月31日号)をお楽しみに
 
 
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