2020年10月15日号(国際、政治)

2020.10.19


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2020年10月15日号
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発行日:2020年10月15日(木)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2020年10月15日号の目次
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◇菅首相の支持率が意味すること
◇政権の魔力に因われ出した野党連合
◇中国の思考法を学び、対処する(4)
◇抑止力という名の軍事力(6)
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は国際問題、政治問題をお送りします。
 
米国大統領選挙が間近に迫ってきました。
大統領の新型コロナウィルス感染というハプニングもありましたが、ここにきて、バイデン候補が10ポイントほどリードという報道が相次いでいます。
私の米国人の知り合いは民主党支持者が多いので、同じような傾向です。
しかし、中産階級以下の米国人は、隠れトランプ支持が多いという意見もあります。
最後まで「よくわからん」選挙になりそうです。
 
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┃◇菅首相の支持率が意味すること                  ┃
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各種世論調査で、発足時の菅首相の支持率は60~70%と予想を超える高さでした。
1ヶ月近くが過ぎた現在、支持率は落ちてきていますが、まだまだ高い水準といえます。
この支持率は、菅政権に対する支持というより、国民の願望を反映したものといえるでしょう。
 
8年前、国民は、民主党政権に託した期待を裏切られ、安倍政権を選びました。
安倍首相は、強引な財政政策で20年続いたデフレを食い止めることには成功しました。
しかし、第三の矢の規制緩和は進まず、経済を上昇気流に乗せることはできませんでした。
スキャンダルの火消しに追われた後半は、安倍氏から政務を遂行する気力を奪っていきました。
 
官房長官として安倍政権を支えた菅氏は、言動とは裏腹に冷静に安倍政権の末期状態を眺めていたわけです。
菅氏の首相就任を「瓢箪から駒」のように論じる評論家やマスコミがありますが、その見方には疑問です。
菅氏は、用意周到に自民党の実力者たちとコンタクトを重ね、連立相手の公明党への根回しも怠りなく、さらに官僚たちの懐柔(かいじゅう)にも抜かりはありませんでした。
そうした水面下での根回しは、地縁も血縁もない者がトップに立つ重要な要素です。
 
菅氏は、自身が政権に就いた時は、安倍氏ができなかった第三の矢、規制緩和を行おうと心に決めていたのかもしれません。
ならば、その一点だけに絞ってでも、初心を貫いて欲しいものです。
首相としての評価は「その後で」としておきます。
 
そうした中、日本学術会議の新会員候補6人の任命を菅首相が拒否したことで、マスコミや野党は「学問の自由への侵害」と大騒ぎです。
「日本学術会議」の名前は知っていても実態を知らない私には、ことの是非は判断しかねました。
 
そんな中、この問題に対し、静岡県の川勝平太知事が記者会見で「菅義偉首相の教養レベルが図らずも露見した」と批判しました。
川勝知事は、英国オックスフォード大で博士号を取得し、日本では大学教授や学長を歴任した学者知事と言われている知事です。
その自負が、さしたる学歴のない首相に対し、このように上から目線の物言いをさせたのでしょうか。
しかし、県庁にネットや電話による抗議が殺到したことで、「真意が伝わっていない」と、誰もが言う“いつもの言い訳”で逃げています。
 
日本学術会議の存在意義は、私には判断できませんが、運営に税金が使われていることから、任命拒否の是非を決めるのは国民であり、その代行者たる政府の役割になるのだと思います。
それより、国民がその実態を知らない、こうした会議の存在の解明のほうが先だと思います。
この問題を浮上させた今回の任命拒否、もしかしたら、菅首相の行政改革の一端なのかもしれません。
そうだとしたら、首相は相当にしたたかな政治家ということです。
 
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┃◇政権の魔力に因われ出した野党連合                ┃
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菅政権発足と同時に、様々なコメントが報道やネットに溢れました。
例えば、
・蓮舫氏:菅新政権に闘志満々「新内閣発足でも、数々の疑惑、問題はリセットになりません」
・小沢一郎氏:菅新政権に警戒感あらわ「国民の感覚が麻痺すれば、本当にいつか来た愚かな道に戻るだろう」
・古市憲寿氏:菅内閣と自民党新役員の顔ぶれに「おじいちゃんばっかり…古い日本を象徴していて嫌」
・小倉智昭氏:菅内閣の陣容に「やる気のある内閣かも分からないけど新鮮味はない」
 
予想された方々の予想通りの皮肉コメントで「面白さのカケラも無いな」と思うのみです。
ただ、以下の橋下徹氏のコメントには「なるほど」と思わされました。
「菅政権は改革のために権力をフル行使するだろう。だからこそ強い野党が必要だ。今後はこのようなツッコミが入らないように批判のための批判はもう卒業すべきだ。また野党の方向性について民意の確認をすべきだ」
橋本氏のふだんの言動には賛同できないこともありますが、上記の提言には賛成です。
 
ところで、先の国会における首班指名で、共産党は立憲民主党の枝野代表に投票しました。
枝野代表が選ばれるわけはないので、そのこと自体に意味はありませんが、共産党が立憲民主党と連立を組んで政権奪取を目指すという宣言に他なりません。
これまで共産党が綺麗事の建前論を言ってこられたのは、永遠に野党にいるという安心感(?)からでしたが、この立場を本気で捨てようと言うのでしょうか。
同党も「政権の魔力に因われだした」のでしょうか。
 
共産党が目指す政治は、党名が示すとおり日本を共産主義の国にすることです。
しかし、日本国民の大多数は、共産主義政治を望んではいません。
いや、それどころか、共産党に一票を投じている人たちの多くも望んではいません。
選挙の度に熱心に共産党の候補に投票するよう通ってくる知人がいます。
ある時、その知人がこう言いました。
「もし共産党の政権になったら、そのとき、私たちは反対勢力になります」
要するに、どんな政権になろうと、常に反体制側にいて政権の批判力になるということなのです。
共産党の幹部は、こうした支持者の声を知った上で、本気で政権奪取を目指すのでしょうか。
 
小沢一郎氏が、さかんに野党連合をけしかけていますが、氏が権力の亡者であることは誰の目にも明らかです。
それでも立憲民主党は彼を迎え入れました。
さて、共産党も、権力亡者の小沢一郎氏と組むのでしょうか。
 
私は、野党連合を否定しているのではありません。
野党が政権奪取を宣言すること自体は、正常な姿です。
ならば、橋本氏の言うように、野党は批判のための批判は卒業し、政権構想を堂々と掲げ、総選挙で民意を問うべきです。
野党の各議員は、たとえ議席を失い地獄に落ちようとも勇気を持って突き進むことを国民に示して欲しいものです。
政権とは、そのようにして奪うものです。
 
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┃◇中国の思考法を学び、対処する(4)               ┃
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中国は、米国を追い落とし、世界の中心に座るという野望を、ますますむき出しにしています。
まあ、今さら驚くこともないのですが、こうした世界制覇の野望が、逆に中国の落とし穴になる危険性を、どこまで考えているのでしょうか。
 
米国は、中国を侵略することなど考えてはいません。
もちろん、現代の日本も大陸侵攻の意志など毛ほどもありません。
それなのに、中国は、第一列島線だけでなく、第二、第三列島線と、ハワイを射程に収めるほどに戦線を拡大しようとしています。
当の中国に言わせれば、この線は中国を守る防衛ラインだということです。
でも、これって、どこかで聞いた主張です。
そうです。
戦前の日本が主張した大東亜共栄圏構想とそっくりなのです。
資源に乏しい日本を守るためには、満州や東南アジア、南西太平洋までを傘下に収めなければならないとした戦略です。
それで結果はどうなったかですが、誰もが知っている惨めな失敗です。
 
軍事戦略として、最前線を自国からなるべく遠くに置こうという考えは理にかなっています。
しかし同時に、限りある戦力を広く薄く分散することになり、かつ物資補給などの兵站が伸びてしまうという欠点を抱えます。
敵対国からしたら、薄く伸び切り、補給も乏しい防衛ラインの弱いところに、自らは戦力を集中して攻撃すれば良いということになります。
実際、米国のこうした戦略の前に、戦前の日本は前線を次々に破られ敗戦へと追い込まれました。
今の中国が戦前の日本より大きいとしても、拡大戦略を続けることは、戦前の日本の二の舞になることは明白です。
それでも、習近平主席は「そんなことは知っているが、そうはならない」とする確固たる戦略を持っているのでしょうか。
自身は、かの孫子をも凌ぐ兵法家だと自負しているのでしょうか。
 
中国が推し進めている一帯一路は、こうした防衛ラインの拡大に他なりません。
たしかに、一帯一路に参加している国の政府は中国のカネ漬けから抜けられないようですが、住民の間では、急速に中国の評判が落ち始めています。
この5月には、アフリカ・ザンビアの中国企業の工場が焼き討ちされ、中国人幹部3人の惨殺死体が発見されました。
彼らは、現地で「わが物顔で振る舞う」と反感を受けていたと報道されています。
ザンビア政府は、国連人権理事会で香港国家安全維持法への支持を表明しましたが、国民レベルでは急速に中国への反感が広がっています。
こうした反中運動がアフリカの各地で広がり出しています。
中国のカネにひざまずく政府と違い、民衆の対中嫌悪感は、マグマのように広がってきているのです。
一帯一路が掲げる「互恵対等の関係」などは口だけで、実態は「中国による植民地化」であることに国民が気づき出したのです。
 
ところが、当の中国は、一帯一路の理想と現実の乖離が世界から厳しく見られているという失敗をあまり気にしていないようです。
一応「搾取ではない」との宣伝活動は行っていますが、寛大さや誠実さで現地の人心を掌握し、長期的な関係を築こうという姿勢はまったく見られません。
次回、この問題をもう少し掘り下げてみます。
 
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┃◇抑止力という名の軍事力(6)                  ┃
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近年、ミサイルの性能がどんどん高性能化してきています。
核ミサイルの多弾頭化は当たり前で、航空機搭載型で2000km以上もの超遠距離から襲うミサイルや真上に近い高空から一気に襲う極超音速ミサイルなど、防ぐことが難しいミサイルが次々に開発されています。
しかも、こうしたミサイルの開発は、ロシアや中国、北朝鮮といった日本を攻撃する可能性の高い国々が熱心に取り組んでいて、日米は遅れているという懸念が大きくなっています。
特に日本は、専守防衛を謳っていることで、弾道ミサイルや巡航ミサイルなどの攻撃目的のミサイルの開発に制約がかかり、短距離のミサイルしか持っていないのが現状です。
 
「最強の盾と最強の矛は同時に存在し得ない」という中国の故事からとった「矛盾」という言葉を知らない方はいないでしょう。
専守防衛という日本の防衛概念は「矛を持たず盾だけで守ろう」というものです。
しかし、高性能化する一方の中国やロシアの攻撃ミサイルを果たして「イージス」という盾だけで防ぐことができるのでしょうか。
 
どんな鍵でも開けてしまう泥棒とどんな泥棒でも開けられない鍵を作る鍵屋の話もよく聞く話ですが、物語やドラマでは、だいたい泥棒が勝ってしまう結末が多いように思います。
また、「攻撃こそ最大の防御」という言葉もよく聞く言葉です。
 
では、「日本も攻撃用の弾道ミサイルを持つべき」と言いたいのかというと、そうではありません。
冷静に、また合理的に日本の防衛を考えるべきと言いたいのです。
そもそも、日本が中国の核ミサイルを防ぐこと自体できないわけです。
かといって、抑止力として日本が核ミサイルを持つこともできません。
故に、攻撃力としての抑止力は米軍の核戦力に頼るしかありません。
日本が核兵器禁止条約に賛成できない理由もここにあります。
 
抑止力戦力としての自衛隊の役割の一端は、この米軍を守ることにあります。
在日米軍の防衛戦力は、空母を守るイージス艦以外は脆弱です。
日本の自衛隊に頼る部分が大きいからです。
海上での戦闘が主になる日本防衛の性格から、主役は海上自衛隊と航空自衛隊となりますが、今後予定される南西諸島に配備される防衛ミサイル網は陸上自衛隊の管轄になります。
この陸海空の共同戦略こそ、これからの日本防衛の要となります。
 
当然、平和主義の人たちは「けしからん」と批判されるでしょう。
中国でも、日本のような平和活動が自由にでき、同様の声が政治に届くならば、こうした批判に賛同したいですが、現実は真反対です。
日米安保を堅持し、自衛隊の盾と米軍の矛の効果的な連携によって、中国が軍事侵攻を諦めるような抑止力を強化する以外に道はないのです。
 
昨年だけで947回という異常なスクランブル出動や尖閣海域への執拗な侵入が示すように、日本に対する中国の威嚇は増す一方です。
明らかに海上保安庁や自衛隊に対する圧力を加速させ、守ることしかできない日本の疲弊を誘う戦略です。
こうした事実から、もはや純粋な防衛力だけで日本を守り切ることが不可能な時代に入ったことを自覚するべきです。
 
安倍政権の残した「自由で開かれたインド太平洋」戦略は、前首相の最大の功績といえるかもしれません。
この構想は、中国の歴史に煩雑に登場する合従連衡(がっしょうれんこう)そのものといえます。
歴史では、短期間に終わってしまった例が多いのですが、アジアにおいて日本が扇の要の役割を果たせれば、大きな効果が出ることが期待されます。
次回はこのことを論じたいと思います。
 
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<編集後記>
日本に一時帰国していた米国在住の妹が昨日米国に帰りました。
同じ日、弊社の中国人社員が中国に帰国しました。
二人に接点はありませんが、私にとっては共に親しい人間です。
二人には、それぞれの国では、政治的発言は絶対にしないようにと話しています。
中国では政府の監視の目が怖いですし、米国では人種差別や異なる意見への不寛容さが怖いです。
私自身、両国で仕事をした経験がありますが、決して政治的な話題は口にはしませんでした。
その点だけでも、日本は“いい国”だと実感しています。
 
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