2021年1月31日号(経済、経営)

2021.02.15


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年1月31日号
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発行日:2021年1月31日(日)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年1月31日号の目次
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◇これからの近未来経済(3):バクチ化が加速する証券市場
◇中国の思惑通りにはいかない(その10)
☆商品開発のおもしろさ(8)
★今後の建設需要(13)
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
1月20日、嵐のようなトランプ政権が終わり、バイデン政権が発足しました。
バイデン新大統領は、就任直後に新型コロナウィルス対策を中心にした200兆円の財政出動予算と、今後具体化していく200兆円の温暖化対策を打ち出しました
中身はともかく、まずは金額の大きさでアピールしようということでしょうか。
「手堅い」と言うべきか「陳腐」と言うべきか、はたまた「皮だけ饅頭?」が最初の感想です。
それでも米国の知人は新政権の対策に大きな期待を寄せているようでした。
企業経営者の切実な思いは国境を超えて共通なのだなと、妙に納得した次第です。
 
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┃◇これからの近未来経済(3):バクチ化が加速する証券市場         ┃
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コロナ禍の効果(?)で世界的に株価の高騰が続いています。
それも当然といえます。
米国FRBや日銀などの中央銀行が、異次元のコロナ対策資金を市場に供給しています。
しかし、コロナ禍で落ち込んでいるリアル市場にその資金を吸収する力はなく、必然的にバクチ場(投資市場)に大量の資金が流れ込む構図になっています。
その資金を狙って、新興企業のIPO(株式初公開)が大盛況の状態です。
昨年、米国で新規に株式上場した会社の調達総額は1800億ドル(18.7兆円)と史上最高額でした。
しかも、すでに、上場後の時価総額は、その何倍にも膨れ上がっています。
例えば、ある民泊紹介サイトですが、日本円で10兆円の時価総額に跳ね上がっています。
トヨタ自動車の時価総額が約22兆円ですから信じられない数字です。
言い方は悪いですが、たかが民泊紹介サイトの企業価値がトヨタの半分近くなんて、「馬鹿げている」とつぶやきたくなりませんか。
 
大量の余剰資金を背景に企業のM&Aも異常なブームになっています。
M&Aによる買収総額は、2020年の下期だけで1.9兆ドル(約200兆円)を記録しています。
投資を仲介する会社のボーナスは、コロナ禍をよそに空前の金額になり、笑いが止まらないようです。
 
この異常な金融ブームを牽引しているのが、SPAC(スパック)と呼ばれる「企業買収だけを目的」とした会社です。
日本では、ソフトバンクグループが先陣を切ってSPACを設立したと聞けば、実態は想像できると思います。
そうです。SPACは抜け殻のように事業実態のない会社です。
 
その仕組みを簡単に説明すると、以下のようになります。
近年、SBG(ソフトバンクグループ)が多額の損失を出したように、新興企業に投資した上で上場させるには大きなリスクが伴います。
そこで、大手ファンドは次のような安全策を考えました。
先にSPACを設立・上場させた上で、目を付けた新興会社を、このSPACに買収させるのです。
すると、この新興会社は自動的に上場会社となり、市場からすぐに資金を集めることが可能になります。
買収初期に、この会社の株を大手の資金で釣り上げておけば、一般投資家が争ってこの会社の株を買います。
後は、もうお分かりと思います。
危険を最小に抑えた上で多額の資金を集める“うまい手”なのです。
投資失敗で痛い目にあったSBG(ソフトバンクグループ)が飛びつくわけも理解できると思います。
 
しかし、読者のみなさまは、もうお気付きだと思いますが、SPACの最大の問題点は、その不透明さ、不明朗さにあります。
次号で、そのことを説明したいと思います。
 
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┃◇中国の思惑通りにはいかない(その10)             ┃
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中国では、今年(2021年)から第14次5カ年計画が始まります。
その中で「双循環」なる耳慣れない言葉が出てきました。
この言葉は何も意味しているのでしょうか。
 
経済政策のトップを務める劉鶴(リウ・ホー)副首相は、以下のように説明しています。
「国内の大循環を主体とし、国内と国際の2つのサイクルが相互に促し合う新たな仕組みである」
つまり、国内および国際の「2つのサイクル」を組合せた新たな発展形態を作るとの主張です。
しかし本音は、米国との経済戦争で苦しくなっている海外市場への依存度を引き下げ、内需主導型の経済を確立しようということです。
 
こうした政策を先取りする形で、中国の主要都市では飲食店の開店ラッシュが続いています。
米国や日本で仕事をしている中国人たちの間で、中国に帰ろうという機運が高まっているのです。
日本や欧米諸国の感染拡大を目の当たりにして、留学生の親たちが留学させている子女らを中国に呼び戻す動きも加速しています。
 
トランプ前政権が仕掛けた「世界経済から中国を切り離す」政策は確実に効果を上げ、中国は大きな打撃を被っています。
中国寄りだった欧州の中国離れも、結果論ですが、トランプ政権の成果といえます。
そして、バイデン新政権がこの成果を引き継ぐのは確実ということです。
 
近年の中国経済の驚異的な発展は、西側諸国の技術を合法、非合法を問わず、根こそぎ刈り取ってきた成果です。
莫大な投資費用を必要とする先端技術をタダ同然で手に入れてきたのですから、安値攻勢でも儲かるのは当然です。
昔話ですが、建設会社時代、私が中国へのODA事業で工場建設を担当した時、施工技術を細かいところまで教えることを執拗に要求されました。
鉄筋の結束工法や型枠の型取り、果ては空調設備のダクトのハゼ折(一枚板を折り曲げて箱状に加工する技術)の詳細な工法まで教えろと言われたのには閉口しました。
適当に受け流していると、日常生活も監視され、拒否を続ければ日本へ帰国できないのではないかとの恐怖を感じたこともありました。
おそらく同様の経験をした技術者は大勢いると思います。
 
このことは、中国人が悪いというより、技術開発の価値を認めない中国という国の未成熟さの現れです。
(日本も大差ないと言えますが・・)
欧米諸国が、そうした中国の違法性に目をつむってきたのは、経済が豊かになれば、中国も資本主義のこうしたルールを理解して民主化すると思ってきたからです。
欧米が、その幻想を捨て態度を変えたのは共産党政権の独裁姿勢による自業自得ですが、トランプ前大統領の実行力でもあります。
トランプ氏の人格はともかく、成果は成果として認めるべきと考えます。
 
偽善性がばれた中国政府は、欧米からの「技術の“兵糧攻め”」に遭っているわけです。
今になって「独自のイノベーションの強化で、過度な海外市場への依存度を避ける」として「双循環」という経済政策を打ち出したのは、ここに活路を見出すしかないという、苦肉の策なのです。
 
しかも、米国は、単独で中国に攻勢を掛けるだけでなく、機密情報の共有組織である「ファイブ・アイズ」(米・英・豪・新・加)やG7、T-12(民主主義の先進技術国家の集まり)、D-10(民主主義10カ国の集まり)、クアッド(日・米・豪・印による戦略対話)などの中国包囲網を十重二十重(とえはたえ)に掛けてきています。
こうした合従連衡(がっしょうれんこう)政策は、バイデン新政権も、そのまま継続するものと思われます。
 
この包囲網の効果で、中国は内需に活路を見出すしかなくなっているのです。
知り合いの中国人は「中国には14億人の市場がある。欧米の包囲網など怖くない」と言っていますが、
劉鶴副首相が「双循環」について、「自給自足を意味するものではなく、内需完結型経済を意味するものでもない」と述べているように、苦境は明らかです。
中国の経済関係の首脳部は、共産党独裁の下で資本主義を発展させるという絶対的矛盾は十分に理解しています。
しかし、皇帝として君臨する習近平主席が健在のままでは、西側との経済戦争は激化する一方でしょう。
 
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┃☆商品開発のおもしろさ(8)                   ┃
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コロナ禍で、テレワークなどの「ビジネスの非接触化」が進展したように報道されていますが、中小企業を中心に、徐々に元に戻りつつあるようです。
それはそうでしょうね。
ビジネスの非接触化は、働くひとり一人が自己確立して仕事が出来ていることが前提です。
そんな働き方が出来ている人が、果たしてどのくらいいるでしょうか。
ネットに繋がったパソコンさえあればOKというのは、さすがにムリと思いますが・・
そのような調査結果を見たことがないのですが、そもそも、調査データはあるのでしょうか。
 
その一方で、人間をまったく使わない完全自動化の世界は静かに広がってきています。
例えば、半導体製造は、工程のすべてが人間の目には見えない世界になっていることで、早くから完全自動化の世界になっています。
半導体の商品設計すら99%自動化された世界です。
こうなると、人間は不要なので、商品開発の“おもしろさ”など皆無の世界となります。
 
なので、毎度の“昔話”をします。
自分の話で恐縮ですが、一つの事例としてお聞きください。
少年時代から20代の頃まで、秋葉原に通い、自分で作成した設計図をチェックしながら必要な部品を安く手に入れ、模型だけでなく、ラジオからパソコンまで自作してきました。
どんなものを作ろうかの企画(?)から設計図作成、部品集め、組み立てまで、どれも時間を忘れる楽しい“しごと”でした。
夕飯も食べずに徹夜で設計図描きや組み立てをした日々は、この年になっても、懐かしい思い出です。
 
大学時代には、友人たちと手分けしてスクラップ屋から解体した車の部品を買い集め、実際に動く自動車を組み立てました。
もちろん公道は走れないので大学構内を走らせましたが、大学からはこっぴどく怒られました。
 
米国から手に入れた金属製の精巧なモデルガンを分解して、設計図を作成し、大学の工作機械を使って各部品を製作し、実際の拳銃を作ったこともあります。
もちろん犯罪になるので、組み立ては休みの日に密かに行っていました。
弾丸も数発製作し、友人たちと山の中で発射実験もしました。
10mぐらいの距離でフライパンをぶち抜きましたから、十分に殺傷能力があるものでした。
友達とは「これで“やまぐちぐみ”に就職できるな」なんて、とんでもない笑い話をしていました。
 
ただ、弾丸を撃ち尽くした後で調べたら、拳銃の筐体にヒビが入っていました。
「もう一発撃ったら、指がなくなっていたかも・・」と怖くなりました。
試作品から商品のレベルに引き上げる難しさを痛感した思い出でもあります。
 
このように、開発の面白さに没頭し過ぎると、善悪の垣根を飛び越えてしまうのが、技術者や科学者の常だと思います。
原爆を開発したオッペンハイマー博士らのマンハッタン計画に参加した科学者たちも、同様の心理だったのではないでしょうか。
広島・長崎の惨状を知った博士が「とんでもないものを作ってしまった」と言った話が伝わっています。
 
上記の例から分かるように、商品開発には、面白さだけでなく「社会に対する責任がある」ことを同時に考えるべきなのです。
しかし、昨今のAIなどの言葉の乱発には、そうした思いは感じられません。
それどころか、「人間はAI以下だ」と、人間を卑下するメッセージを感じるくらいです。
「これでいいのかな?」と思う今日この頃です。
 
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┃★今後の建設需要(13)                     ┃
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建設産業にかかわって半世紀近くになりますが、根本的な問題は何一つ改善されていないように思います。
発注価格やコスト構造の不透明さ、発注者や元下の上下関係、長時間労働、パワハラなど、私の新人の頃からの問題が今も続いています。
「適正価格」や「適正工期」などの“適正”言葉も耳にタコですが、言葉遊びから一歩も進歩していない現状があります。
 
発注者も大手企業も、それらの解決は諦めて、BIMや現場のIoT化といった未来技術に希望を掛ける姿勢になっています。
ここで、BIMなどを「未来技術」と言ったのは、未だ「普通に使える技術」にはなっていないという意味です。
私が度々、こうした技術に否定的な意見を述べてきたのは、技術そのものを否定しているからではありません。
取り組んでいるゼネコンやサブコンの企業努力は評価に値しますし、やがて施工現場に普遍的に使われる日が来るであろうことは疑っていません。
しかし、圧倒的多数を占める中小業者が、こうした先端技術を使いこなす日々は、果たしていつ来るのでしょうか。
世の中には、未だ数万台のWindows7のパソコンが動いていると聞きます。
「ウチは10だよ」と言う会社も、よく聞いてみると「7からのアップデート」だったりします。
 
私は、こうした現状を、どうこう言いたいわけではなく、IT化の前に、自社の現場運営や本社機構の支援体制のあり方を「ゼロベースで見直すべきでは」と言いたいのです。
つまり、企業の主役である従業員の働き方が半世紀前と変わっていないことに危惧を覚えるのです。
個人の技術力という点では、むしろ退化しているのではないかとさえ思うのです。
 
幸いというか、受注産業である建設業は、自社だけが劣っていれば業績悪化で消える運命が待っていますが、他社も同様のレベルであれば安泰なのです。
「ウチだけじゃないから、まあ、大丈夫」となります。
しかも、様々な規制に守られ、他産業からの参入がほとんど無いという恵まれた業界の構図があります。
また、お客様である公共発注者や不動産会社の設計・施工管理能力も低下する一方なので、その点でも相対的に心配するほどのことはないという皮肉な現状があります。
まして、一般企業や個人顧客は、てんで素人ばかりですから、いくらでもごまかせます。
小さなことですが、最近、水道修理などで「高額な請求をされた」というようなネットの書き込みが散見されます。
昔からある「シロアリ商売」の水道工事版ですね。
 
政府は「スーパーシティ」というAI機能を備えた新しい実験都市の公募を始めます。
北九州市は、すでに昨年末、同様の公募を初めたということです。
業界紙を読むと、市当局は以下のように言っています。
「デジタル先端技術を産業や社会生活に取り入れ、現実とサイバー空間を高度に連携させ、環境・経済・社会の好循環によるSDGs(持続可能な開発目標)の加速化、脱炭素社会の実現を目指す」
大仰な言葉の羅列ですが、肝心の中身は空っぽな印象です。
そう言えば、菅首相の所信表明も「デジタルとグリーン(脱炭素社会)」でした。
はやりの英語の頭文字言葉で“ごまかす”のではなく、人間味のある日本語で語ってもらえないかな・・と思ってしまいました。
 
私自身、一市民として、どんな街で暮らしたいかという思いは持っています。
次号から、そんな思いを形にする“まちづくり”を数回に分けて語ってみたいと考えています。
 
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<編集後記>
今年は久しぶりに雪が多く、スキー場はホッと一息のようですが、事故の報道が増えています。
それもコース外での事故が多く、死亡者も出ています。
ほとんどは、立ち入り禁止のコース外を滑走しての事故です。
近年、バックカントリーと称する自然の中での滑走がブームとかで、こうした事故は増える傾向にあります。
スキー場や地元にとっては大迷惑な話ですが、こうしたスキーヤーは、自分には自由にどこでも滑る権利があると思っているのでしょうか。
 
若い頃、スキー場のパトロール隊にいたことがあります。
その頃も、コース外を滑るスキー客がいて、その度に捜索に駆り出されていました。
ある時、二重に張った滑走禁止ロープの外側にからまって、もがいているスキー客を発見したことがあります。
手足をばたつかせて、まるで蜘蛛の糸にからまった蛾のようでした。
私は、その様子をしばらく見ていました。
本当はすぐに助けるべきなのですが、毎度のことで呆れて、「すぐに助けよう」との気が起きなかったのです。
もちろん、私の行為がパトロール隊員として“いけない”ことは承知の上でです。
少しして助けましたが、その人は礼もいわず、「チェッ」と舌打ちを残して去っていきました。
どちらが犯罪行為というべきなのでしょうか。
 
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