2021年11月30日号(経済、経営)

2021.12.01


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年11月30日号
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発行日:2021年11月30日(火)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年11月30日号の目次
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◇新しい日本型資本主義の中身(2)
★今後の建設需要(22):ユーザー目線の欠如
◇これからの近未来経済(13):山なり多重回帰曲線型経営(その4)
☆商品開発のおもしろさ(18):コンピュータの話(その3)
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
立憲民主党の新代表に、旧国民民主党出身の泉健太氏が選出されました。
4人の候補者がみな同じようなことしか言わず、盛り上がりに欠けた代表選でしたが、泉氏の47歳という若さと国民民主党出身ということが、これまでとは少し違うかなという印象を与えます。
 
ただし、選挙戦では、肝心の共産党との共闘については言葉を濁していました。
民主主義政党とはいえない共産党と決別しない限り、政権奪取などは夢のまた夢です。
それができないのであれば、解党して消えることが健全な野党が生まれる道であり、そして日本の政治がダイナミックに変化する道です。
泉新代表に期待するのは、その一点だけです。
 
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┃◇新しい日本型資本主義の中身(2)                ┃
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岸田首相の「新しい日本型資本主義」に対し、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が「新社会主義にしか聞こえない」と批判しましたが、「分配」という単語に危険性を感じたのでしょうか。
岸田首相は、選挙戦で「新自由主義的政策が、持てる者と持たざる者の格差と分断を生んだ」と主張し、所得の再分配を経済政策の中心に据えることを明言してきました。
三木谷氏ほどでなくとも、金持ちは反感と警戒心を抱いたはずです。
 
一方で、首相は「分配には成長が必要」とも言っています。
「成長なくして分配なし」と「分配なくして成長なし」は、「卵が先か“にわとり”が先か」式の循環論法です。
つまり、同時に実現はありえず、どっちを先行させるかの政治姿勢の選択です。
アベノミクスは成長を先行させる政策でしたが、岸田首相の言動には具体的な成長戦略への言及がありません。
選挙戦で配布した政策パンフレットを見ると、「下請いじめゼロ」「住居費・教育費支援」「公的価格の抜本的見直し」「単年度主義の弊害是正」という4つの方針が書かれていましたが、これでは明確な成長戦略を読み取ることができません。
 
そこで、選挙後の施政方針を読んでみました。
そこには「新しい資本主義を起動させる、その財源は2021年度補正予算」「保育士、介護職員の収入向上」「現場で働く人々や若い世代の処遇改善」とあります。
さらに、岸田首相を座長とする「新しい資本主義実現会議」が発足しましたが、緊急提言として「賃上げを行う企業から優先的に調達する」と、公共調達の対象企業にプレッシャーを掛けました。
どうやら、岸田首相の考えている「成長」の原資は国家予算(つまり、国債発行)で、「分配」政策としては企業に賃上げを迫る考えのようです。
ということは、分配先行の匂いが強い政策になるということです。
韓国で失敗した「所得主導型経済」の二の舞になることが懸念されます。
 
岸田首相と会談した経団連の十倉雅和会長は、当然、この方針に“もの申す”かと思われましたが、
「首相の掲げる『新たな日本型資本主義』と経団連が提唱する『サステナブルな資本主義』がいかに一致しているかを確かめ合った」と述べました。
外野からは「どこが?」と突っ込みたくなりました。
 
前号で麻雀の話をしましたが、実際の経済政策では「分配の前の清算」が麻雀ほど簡単ではありません。
日本の現状はさらに厄介です。
今の日本は、貧困者が増える一方、米国のような大金持ちは、ほんのわずかしかいません。
つまり、中間層から貧困層に落ちる者が増えているのです。
それはそうです。
この30年間、国民の所得水準は横ばいでした。
デフレで物価も横ばいなのでトントンと言いたいですが、そうはいきません。
食料や原材料など輸入に頼っている部分は値上がりしています。
GDPに占める輸入比率は12~13%ですから、その価格が上がる分だけ確実に物価を押し上げ続けているわけです。
その結果、下方向への格差が広がってきているのです。
 
格差の拡大は経済のマイナス要因となりますから、何らかの是正は必要です。
しかし、日本の現状を考えると、格差是正のための所得再分配には、金持ちだけでなく、相応のレベルの中間層の所得まで減らす必要があります。
当然ですが、所得を減らされる人は反発し、来年の参院選の結果にも影響するでしょう。
だからといって法人税の増税や新たな企業課税は、経済全体を落ち込ませる結果となります。
 
こうした矛盾を解決する手段はありますが、相当に過激な手段とならざるを得ません。
場合によっては、外交軋轢や政治問題に発展する可能性もあります。
果たして岸田首相はそうした政策に踏み切れるでしょうか。
それとも、なにかスゴイ秘策をお持ちなのでしょうか。
 
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┃★今後の建設需要(22):ユーザー目線の欠如           ┃
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全国建設業協会が、適正工期やダンピング対策の強化などの意見・要望書をまとめました。
この要望は、岸田内閣が掲げる「成長と分配」にも寄与するとしていますが、そこには「三方良し」で掲げる市民および顧客の視点が感じられません。
ユーザー側になる企業および個人の立場で読むと、業界の利益確保の要望にしか見えません。
 
また、日建連が「適正工期算定プログラム」をバージョンアップしました。
今回で6回目となるバージョンアップで、その努力は評価しますが、個々の建設会社が活用するかは疑問です。
 
これらの要望や策は、「競争をしない、させない」仕組みへの取り組みといえます。
たしかに低価格競争やダンピングは馬鹿げた競争です。
しかし、こうした取り組みが効果を上げるのは公共事業に限っています。
真の発注者である納税者には発注権限はなく、代行する国や地方行政機関の思惑だけで発注が決まるからです。
他方、市場の6割以上を占める民間分野においては、訴求効果はゼロと言っても過言ではありません。
大半の民間ユーザーは、価格以外の判断基準を持っていないからです。
こうしたユーザー目線への理解の薄さが建設産業の最大の欠陥と言ってもよいでしょう。
 
建設市場は、案件あたりの金額が高額になるため、人間の欲がもろにぶつかり合う市場です。
顧客の我欲と自社の我欲とのぶつかり合いを冷静に分析し、折り合う点を論理的に作っていく能力を地道に養う努力が欠かせないはずです。
それなのに、こうした努力が乏しくとも多数の企業が生きてこられた「奇跡」ともいえる産業なのです。
私自身、その最前線に身を置き続けながら、「おまえはユーザー側の目線を持っていたか」と問われると、まったく自信はありません。
現在は、ユーザー側に立った仕事もしていますし、自分自身がユーザーの場合もあります。
そこで、さまざまな利害のぶつかり合いを調整する難しさを、今になって痛感する毎日です。
 
ところで、長引くコロナ過によって、建設市場の様子に変化が現れ出していることに気づかれている読者の方は多いと思います。
在宅勤務の時間が増え、外出や旅行が抑制されたことで、人々の生活スタイルが変化してきています。
しかも、こうした生活スタイルが定着する傾向が強くなってきています。
たとえば、外へ出る機会が減ったことで、人と接触することが煩わしく感じている方もいるでしょう。
そうしたニーズを取り込もうと無人店舗に踏み込むコンビニなどが現れています。
諸外国と比べ「恥を感じる」意識が高い日本では、無人販売は効果がある方法といえます。
 
私自身、出張が激減したことで、出張することを“おっくう”に感じてきていることも事実です。
そのような中でも「お会いしたい」と思う人、「訪問したい」と思う会社はあります。
義理で会ったり訪問したりという“しがらみ”がお互いに薄れたことは、良いことだと思います。
営業の初期段階では、オンライン会議やネットを介したオンライン訪問は、お互いに効率的な良い方法です。
そうしたオンライン営業段階では、双方の情報をどう交錯させるかが重要なポイントになってきます。
一方的な売り込みは“うっとうしい”だけとなり、すぐに関係が切れてしまいます。
お客様のことを客観的に理解するためには、オンラインは便利で良い道具となります。
そこから、お互いにオンラインでは物足らなさを感じる付き合いへ発展させることが第二段階の営業となります。
そうなると、売り込む側が自分勝手に考える適正工期やダンピング抑制の訴えは、民間市場では逆効果でしかないことを、各社は自覚すべきです。
 
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┃◇これからの近未来経済(13):山なり多重回帰曲線型経営(その4) ┃
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弊社は、改善期から改革期に入った時期に始めた新規事業が好調に推移したことで、新たな成長軌道に乗ったように見えました。
しかし、改革に伴って起きる負の側面を軽視したことが大きなツケとなって数年後に降り掛かってきました。
新規事業の好調さと裏腹に、既存事業が頭打ちから衰退局面に入り、赤字状態に陥ってきたのです。
もちろん、経営数字の把握はしていましたが、自分自身を前線での仕事に100%近く投入していたため、経営管理の仕事に割く時間が激減し、当時の専務に任せっきりになっていました。
というより、新規事業の売上の伸びに幻惑され、既存事業の悪化に目をつぶってしまったのです。
しかし、その頃の社員の大半は既存事業に所属していました。
新規事業が特殊過ぎたため、そちらに移行できる社員は限定され、社員の多くは既存事業の赤字を膨らませるだけの存在となる現実がのしかかってきました。
 
今では理解していますが、「山なり多重回帰曲線」理論では「改革期」の先は「危機領域」になっているのです。
つまり、改革期においては、新規事業への挑戦や事業再編が必要なのですが、その成否とは別に行うべきことがあります。
それは、経営構造全体を根こそぎ変えることです。
製造業なら生産設備の一新や工程の全面改変、サービス業なら業態やターゲット市場を根こそぎ変えることなどです。
いずれも問題になるのが、このような劇的な改革に付いてこられない社員の処遇です。
つまり、人事や給与体系などに“大なたを振るう”ことが必須なのです。
 
私は、そうした自覚も無しに無為に時間を浪費しただけで、3年でいきなり業績の大幅低下という事態を迎えました。
今でも、この3年間の己の未熟さを嘆きます。
そのため、苦境は深刻化し、給料の遅配に至り、社員はどんどん辞めていきました。
何より、幹部社員たちから先に辞めていく現実に自分の甘さを思い知りました。
私は、この時から「社長を支えます」という言葉を信じなくなりました。
ただし、彼らが悪いというつもりはなく、自分の甘さを忘れないためです。
 
しかし、このどん底状態の中で「山なり多重回帰曲線」理論に至ったことを考えれば、プラスとマイナスの両面はどんな場合にもあるのです。
 
この理論には、企業が各段階に至ったことを認識するための点数付けがなされています。
「成長域」から「改善域」に入ったことを認識する点数、さらに「改革域」に入ったことを認識する点数、そして「危機領域」に落ちたことを示す点数があります。
これらの点数を算出する明確な算法があり、私は、これを何度もアレンジして使っています。
実は「危機領域」のさらに下があり、それを「整理領域」と呼びます。
そうです、文字通り、会社を整理する段階に入ったことを意味します。
ここまで来ると、もう会社を救う道はなく、被害を最小限に抑える策の実行があるのみです。
 
私は、「整理領域」の手前の「危機領域」に陥ったならば、会社を整理すると決めました。
弊社では、この算法をプログラム化してシステムに組み込んでいます。
かなり複雑な計算と条件設定が必要なので手計算では難しく、弊社はシステムが算出する点数を受けて経営方針を決めています。
 
しかし、この理論を理解したからといって好転するほど、経営は甘くありません。
弊社は、その後も低迷が続き、点数は悪化していきました。
やがて、自分の感覚では「もうダメだ」というところまで追い込まれました。
そして、会社を整理する覚悟を決めて、このシステムの分析結果を見ました。
てっきり「危機領域に落ちている」という点数が出ると思い、会社整理の準備まで始めていました。
ところが、予想に反し、ギリギリ「危機領域」に落ち込む寸前の点数が出たのです。
思わず天を仰ぎ、「これは、天が『まだ頑張れ』っていうことか」と思いました。
この続きは、また次号で。
 
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┃☆商品開発のおもしろさ(18):コンピュータの話(その3)    ┃
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1950年、現在のコンピュータのアーキテクチュア(基本理論・仕様)となっている「プログラム内蔵方式」の論文が発表されました。
別途に作成するプログラムをコンピュータの主記憶装置に置いて実行するというこの論文は、プログラムを入れ替えることで多種多様な数値算出が可能となることを実証した画期的な論文です。
この著者3名の中にフォン・ノイマンが入っているのですが、EDVAC開発に関して書かれた報告書の「プログラム内蔵方式」に関する文書にはフォン・ノイマンの名前しか書かれていませんでした。
そのため、その後、彼が「プログラム内蔵方式」の考案者であると言われて今日に至っています。
この「ノイマン型コンピュータ」が、現在のほとんどのコンピュータの動作原理となっています。
 
この論文から、コンピュータが実用になることを最初に証明したのが気象予測の分野ですが、気象予測は、観測結果の入力から予測の計算結果の算出までにかかる時間が、実際の気象が発現する時刻より速くないと意味がない分野です。
当たり前ですね。
雨が降り出してから「きょうは雨が降るでしょう」という天気予報を出したら、「ふざけんな!」と叱られるでしょう。
 
フォン・ノイマンは、自分自身でマシンを改良してプログラム内蔵方式の効率化に努め、数値予報が実用化できるほどにコンピュータを高速化しました。
しかも、このための気象予測プロジェクトを立ち上げ、その主導にも尽力しました。
彼がコンピュータのハード、ソフトの両面に詳しいだけでなく、数学の非線形流体力学方程式にも詳しいマルチなエキスパートだったから、可能だったことです。
当時の気象学者は電子コンピュータを扱えなかったし、コンピュータ技術者は気象には無知でした。
もし、フォン・ノイマンがいなかったならば、電子コンピュータを用いて数値予報を行うマシンの開発は困難だったと思われ、気象予報プロジェクトも生まれなかったと言われています。
 
その後、彼が開発したコンピュータを使って低気圧発達の再現に成功するなど、気象予報は飛躍的な発展を遂げました。
1956年には、大気大循環モデルの計算実験に成功し、地球大気の典型的な循環パターンの再現にも成功しました。
こうした成果が、今日の天気予報や地球温暖化の将来予測につながっているのです。
 
これほどの貢献をしたにも関わらず、フォン・ノイマンはノーベル賞とは無縁でした。
私も、それが不思議でした。
ノーベル賞の対象分野での功績が無かったという説がありますが、決定的な理由とは思われません。
私の推論ですが、彼が、本シリーズ第16回の最後に書いた「人間のふりをした悪魔」と呼ばれたことと関係しているのではと思っています。
その話は次回に。
 
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<編集後記>
プロ野球・日本ハムの新監督に就任した新庄氏、ド派手な衣装や言動で話題を振りまいています。
賛否両論がにぎやかですが、それも新庄氏の狙いでしょう。
その狙いは当たり、変則的ではありますが、同球団への注目度は上がっています。
球団の広報マンとしては最高の滑り出しといえるでしょう。
 
今年はセパ両リーグとも前年度の最下位球団が優勝し、しかも、両球団が激突した日本シリーズは多いに盛り上がりました。
ここ2年の「盛り上がり度ゼロ」の日本シリーズを思い返せば雲泥の差です。
さて来年、ここに日本ハムが最下位から加われば・・。
そこから先は今後のお楽しみとして、営利企業としては参考にしたいですね。
自社の新庄氏は「だれかな?」と探すのも良いかもしれません。
 
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