2022年5月31日号(経済、経営)

2022.06.16


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2022年5月31日号
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発行日:2022年5月31日(火)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2022年5月31日号の目次
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★日銀は政府の子会社?(前半)
◇これからの近未来経済(18):悪者になる勇気を持てない国
★急激な円安が示していること(その2)
◇論理思考は大切だが、もっと大切なことがある(2)
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
細田衆院議長の「100万円しかもらっていない」発言が、当然のごとく炎上しました。
続けた「上場企業の社長は1億円もらっている」に、財務省を退官した友人の言葉を思い出しました。
彼は「上場企業の社長に比べ自分たちの給料は低すぎる。だから、天下りでその分を補填してもらうことのどこが悪い」と言いました。
官僚になる前は、そんなことを言う人間ではなかったのですが・・
細田氏は、世襲で何の苦労もなく議員になり、父親の名声で衆院議長になった人です。
「環境が人を作る」と言いますが、自分に甘い環境より厳しい環境に身を置く大切さを考えてしまいました。
 
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┃★日銀は政府の子会社?(前半)                  ┃
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安倍晋三元首相の「日銀は政府の子会社」発言が波紋を広げています。
この子会社論、本当なのでしょうか。
答えは「そう」とも言えるし、「そうではない」とも言えます。
それに関し、鈴木俊一財務相は13日の閣議後の記者会見で、「日銀には政策や業務運営の自主性が認められているし、会社法で言うところの子会社には当たらない」と否定しました。
一方、日本維新の会の松井一郎代表は、安倍氏の発言を「間違いではない」と述べました。
さて、どちらの意見が正解と言えるのでしょうか。
 
日銀は「日銀法」に基づき設立された認可法人で、資本金は1億円(少ない!)です。
このうち政府が55%、民間が45%出資していますから、普通に考えれば、政府が支配権を持っているといえます。
しかし、鈴木財務相は「政府株には議決権がなく、日銀法で業務運営の自主性も担保されているため『政府が日銀の経営を支配している法人』とは言えない」と子会社論を否定しました。
 
実は、この騒動の本質は日銀にあるのではなく、安倍氏に対するマスコミの姿勢にあります。
そもそも、安倍氏の発言の中心は「日銀が政府の子会社論」ではありませんでした。
以下に、発言のその部分を5月10日付けの「西日本新聞デジタル版」から抜粋します。
「日本人は真面目だから、経済対策を実施すると『日本はたくさん借金しているが大丈夫か』と心配する人がいる。政府の財政を家計に例える人がいるが、大きな違いが一つある。政府は日銀と共にお金を発行できることだ。家計でそれを行ったら偽札になる。1千兆円ある(政府の)借金の半分は、日銀が買っている。日銀は政府の子会社だ。60年の(返済)満期が来たら借り換えても構わない。何回だって借り換えていい。世界中の中央銀行と政府の関係はそうなっている。心配する必要はない。日本の国債は今でも信認されている。金利を低い状況に保てている。自信を持ってもらって構わない」
 
マスコミが、この話の中の「日銀は政府の子会社だ」だけをピックアップしたのが、今回の騒動の発端です。
ところが、安倍氏の発言の中心は「1000兆円という政府の借金の半分は日銀が買っている。日銀は政府の子会社のようなものだから、心配ない」というものです。
つまり、国債が増えても心配ないということが、この発言の主旨でしたが、マスコミは、この主旨を意図的にずらして報道したわけです。
 
日本のマスコミは国民の不安を煽ることに執心しています。
同じ日、財務省は「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(令和4年3月末現在)」を公表しましたが、これに対するマスコミの報道は、こうです。
「国の長期債務、初の1000兆円超え。 財務省は10日、税収で返済しなければいけない国の長期債務残高が3月末時点で1017兆1072億円になったと発表した。18年連続で増え、初めて1千兆円を超えた」(5月10日 日経新聞デジタル版より)
 
それに対し、鈴木俊一財務相は「日銀が保有する国債は、日銀が物価安定目標の実現に向けて金融政策の一環として買い入れているものだ」と説明し、マスコミ報道と財務省の発表に一線を引きました。
どうやら、この問題は、財務省、財務大臣(つまり岸田政権)、安倍氏、そしてマスコミの4者の思惑が複雑に交錯しているようです。
いったい、国民は誰を信じたら良いのでしょうか。
次号の「後半」で、それを解き明かそうと思います。
 
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┃◇これからの近未来経済(18):悪者になる勇気を持てない国    ┃
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「これからの近未来経済」の大きなピースのひとつが中国であることに異論のある方はいないと思います。
今の中国は、国家資本主義とでも呼ぶような“異質な”経済の国です。
できる限り自由な経済活動を尊重する西側の資本主義と違い、共産党の支配の中での資本主義です。
 
資産の個人保有を認めず、社会の共有資産(つまり政府の資産)とするのが共産主義です。
その共産主義を捨てずに資本主義を導入するのは、大いなる矛盾です。
この矛盾を解くため、中国は、個人や民間企業の資産は、個々の保有ではなく、あくまでも中央政府が貸しているだけという建前(ごまかし?)を通しています。
故に、いつでも、政府は貸してある資産を取り上げることが可能ということです。
上海などで行われている強制隔離のようなロックダウンはその典型で、「政府>個人」の共産主義の強権発動なのです。
 
しかし、人間と違い、コロナウィルスは政治に忖度などしません。
経済への影響は、当局も隠しようがなくなっています。
上海手形交換所のデータでは、1カ月物手形利回りは3月下旬以降0.04%まで急降下しました。
この数字は、ほぼ経済活動が止まってしまったことを示しています。
しかし、それでも、銀行間金利は2%前後で推移しています。
誰もが「はてな?」と思いますよね。
これは「銀行の手形保有を短期融資とみなす」とした中国当局の方針転換の影響です。
銀行は、お互いが保有している引受手形を買い合い、それぞれの融資残高に上乗せすることで「融資目標は達成した」と報告し、当局も「計画どおりの達成です」と中央に報告するわけです。
これが計画経済の負の側面です。
こうした規制の抜け穴を作ることで手形の市場金利はゆがみ、経済の実態は見えにくくなります。
 
ゼロコロナ政策によるロックダウンによって人流が止まり、実態経済が悪化するのは当然なのですが、政策失敗を認めない習近平主席の鶴の一声は絶対です。
不動産バブルの崩壊が現実化してきて優良プロジェクトは激減し、不動産投資はストップ状態です。
それでも、各銀行は、融資目標を達成するために、こんな意味のない手形買い入れを行っているのです。
 
さすがに、融資目標達成のために手形を購入する動きについては、市場関係者から批判が出ています。
浙商銀行の幹部は、「流通市場で手形を購入しても実体経済に資金を供給したことにはならない。こうした取引の是正が必要だ」と指摘していますが、当局は「主席の鶴の一声」を無視できません。
当局は打撃を受けたセクターを支援し、融資奨励の補填策を講じていますが、ロックダウンで緩和の効果は効かず、資金を供給しても融資需要そのものが大幅に落ち込んでいるため焼け石に水です。
その結果、大量の資金が中国から米国に流出しています。
 
しかし、秋の共産党大会で3期目の続投を目指す習近平主席は、自らが出したゼロコロナ政策を止めることが出来ません。
秋までにコロナ禍が収まり、経済が回復することを祈るしかないのが現状です。
日本以上に、「悪者になる勇気は持てない国」なのですから。
 
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┃★急激な円安が示していること(その2)              ┃
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日銀の黒田総裁が「利上げもあり得る」と発言したとの報道がありました。
真偽のほどは分かりませんが、日銀が、円安をこれ以上放置できないと考えている可能性はあります。
その影響からか、一時130円台に乗ったドル円相場が127円台になっています。
 
最近の円安で、円の購買力は50年前の水準にまで落ちています。
つい10年ほど前は「1ドル=80円」台でしたから円の価値は40%ほど低下したことになります。
海外旅行の費用が1.6倍になったと考えると理解しやすいかもしれません。
「そろそろ海外旅行に行こう」と思っていた方は、びびってしまいますね。
ネット通販の世界では、私もアマゾンでの買い物は控えています。
アマゾンはドル建て決済ですから、明細データを見て「高っ!」と引いてしまいました。
 
安倍元首相や黒田日銀総裁は、いわゆる「リフレ派」と呼ばれる積極財政派です。
「リフレ派」は、日本経済の低迷要因は「デフレ」にあると考えました。
それで、円を大量に刷ってインフレに誘導すればデフレから脱却でき、日本経済は回復すると考えたのです。
しかし、円を大量に刷れば、円の価値が下がり、ドル円相場が「円安ドル高」になるのは当然です。
ゆえに、「アベノミクス」以降、日本円は大幅な円安となりました。
つまり、「アベノミクスは、単なる円安政策だった」といえるかもしれません。
 
現在、その思惑どおりに、企業は値上げラッシュに雪崩を打ちはじめ、物価上昇は2%の目標を達成し、さらなる上昇局面に入っています。
これは、安倍元首相や黒田日銀総裁などの「リフレ派」の勝利といえるのでしょうか。
それとも、冒頭に挙げた黒田日銀総裁の「利上げもあり得る」の発言は、迷いが出てきているのでしょうか。
今後、日銀が採る政策に注目していますが、大きく分けて、次の2つの選択肢があります。
1つ目は、今の政策の継続です。
つまり、「指値オペ」を継続的に行うことで10年国債の利回りを抑えて、このまま円安進行を容認するという政策です。
たしかに、この円安で大企業は大幅な利益向上ですから、「このまま行こう」と考えることもありかもしれません。
2つ目は、金利を上げ10年国債の利回りの上昇を容認し、この円安傾向を抑えるという政策です。
ただ、それによりゼロ状態だった国債の利払いが増え、予算を圧迫するという負の側面が大きくなります。
 
ポイントは、円安による輸入物価上昇により景気が後退する「スタグフレーション」となるリスクを、日銀がどのように考えるかにあります。
こうした中、10兆ドル(1300兆円)あまりのマネーを運用する米国の資産運用会社であるブラックロック のラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)が注目すべき発言を行いました。
ブラックロックは、西側諸国の中央銀行の裏にいる存在で、世界経済に大きな影響力を持っています。
その話は次号で。
 
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┃◇論理思考は大切だが、もっと大切なことがある(2)        ┃
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「ならぬことはならぬものです」の言葉から、ベストセラーとなった「国家の品格」の著者である藤原正彦氏の言葉を思い出しました。
こうした問答無用の言葉は古い価値観の押しつけではないかという反発に対し、藤原氏は以下のように説いています。
「本当に重要なことは、親や先生が幼いうちから押しつけないといけません。たいていの場合、説明など不要です。頭ごなしに押しつけてよい。もちろん子供は、反発したり、後になって別の新しい価値観を見出すかもしれません。それはそれでよい。初めに何かの基準を与えないと、子供としては動きがとれないのです。 野に咲くスミレが美しいということは論理で説明できない。モーツァルトが美しいということも論理では説明できない。しかし、それは現実に美しい。卑怯がいけない、ということすら論理では説明できない。要するに、重要なことの多くが、論理では説明できません。
戦後の我が国の学校では、論理的に説明できることだけを教えるようになりました。戦前、『天皇は現人神(あらひとがみ)』とか『鬼畜米英』とか、非論理的なことを教えすぎた反省からです。しかし反省しすぎた結果、もっとも大切なことがすっぽり欠落してしまったのです」
藤原氏は、決して「論理を軽視せよ」と言っているのではなく、論理に囚われることからくる硬直性がもたらす危うさを指摘しているのです。
 
細田衆院議長は、「100万円しか・・」の発言以上に、週刊誌に書かれた女性記者に対するセクハラ発言のほうが、今では注目の的になっています。
ご本人は真っ向から否定し、法的処置に訴えるとしていますが、先の発言の影響もあって旗色は悪そうです。
政界のこうした話は、昔から数多く語られてきました。
最近、映画界で次々と明るみに出ている性犯罪と同根で、権力を持つ人間と弱い立場の人間という構図は連綿と続く難題です。
こうした問題が浮上すると、権力を持つ側からは「事実無根」とか「でっち上げ」という声が必ず起きます。
報道番組などでは、法的には「推定無罪」なので加害者の罪は問えないとする“論理的”擁護論も見受けられます。
たしかに、論理的にはそのとおりなのですが、「ならぬことはならぬ」という気持ちからすると納得はできないでしょう。
 
ロシアによるウクライナ侵攻を論理的に論じると、「ウクライナだけでなく、ロシアにも正義がある」という意見も出てくるのが当然です。
現にそうした意見を述べる評論家やコメンテータもいます。
こうした論理思考で今回の戦争を論じていくと、「侵略されるほうも悪いところがある」とか「安全確保なのだから市民の強制連行は悪いとはいえない」、はては「破壊にも意味はある」など、いくらでも歪んだリクツをひねり出すことが出来てしまいます。
現に、ロシア側の発言は、押し並べて、このような理屈です。
 
しかし、私は、映画「ひまわり」で見た、あの「美しい世界」が破壊されている現状に思いが馳せると、深い悲しみが生じるのです。
この感情は論理では説明できません。
もっと深い意識の底にある非論理的な感情です。
 
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<編集後記>
元赤軍派リーダーの重信房子が、5月27日、刑期満了で釈放されました。
本メルマガで何度か言及しましたが、彼女とは幼馴染で、すぐ近所に住んでいました。
私には、小さい子の面倒をみる優しい子のイメージしかありません。
いじめられていた私を迎えにきて小学校に連れていってくれた思い出は今も強く残っています。
 
借金のカタに住んでいた家を取られた彼女の一家は、やがて引っ越していきました。
それ以来でしたが、ニュースで指名手配された彼女を見たとき、「あの優しさが反転すると、こうなってしまうのか」との思いでした。
赤軍派により命を奪われた人々の無念さを思えば、彼女の罪は永遠に残りますが、子供時代の記憶しかない私にとっては、あの優しさのままなのです。
でも、今の彼女にあの時代の記憶は無いかもしれません。
時代は、常に残酷です。
 
 
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