ギリシャ、ついにデフォルト

2015.07.04

7月1日、国際通貨基金(IMF)は、6月30日を期限としていたギリシャからの返済がなかったことを発表し、ギリシャは事実上のデフォルトに陥りました。
 
ギリシャのチプラス政権は、ドイツに対し戦時中の賠償だとして22兆円もの要求を出したり、ロシアへ接近する姿勢を見せたりと、欧州連合(EU)へ様々な揺さぶりをかけてきましたが、このような姑息な手段が通用するはずはありません。
ドイツは相手にもしないし、自らの経済が火の車のロシアが支援出来るとは思われません。
ギリシャ国民は、このような首相を選んだことが、さらなる苦境を招いたことを知るべきです。
 
ギリシャは、5月、IMFへ約7.5億ユーロの融資返済を行った際、IMFの特別引き出し権(SDR)を取り崩しました。
SDRはタンスの奥にしまっている最後のおカネのようなもので、ここに手を付けた以上、デフォルトは時間の問題となっていたわけです。

しかし、デフォルトにはなりましたが、7月5日の国民投票の結果によっては、EUの支援が得られる可能性もゼロではありません。
ところが、7月2日、ギリシャのチプラス首相は、国民に対し、改革案へ反対票を投ずるよう演説しました。
国民の反対を理由に債権者への言い訳を作り、政権の延命を図るつもりと見られていますが、この首相には呆れてものが言えません。
さすがに、アテネのカムニス市長などが、「EU案に反対すれば、ギリシャはさらなる危機に追い込まれる。国民投票では賛成票を投じてほしい」との呼びかけを行うなど、まともな意見も出てきています。
さらに、弁護士や医師、大学教授のグループ、産業界の団体など、インテリ層からは次々と「賛成」の表明がなされてきています。

国民投票の結果、賛成派が勝てばチプラス首相は退陣に追い込まれ、ギリシャは厳しい道だが、EUの支援をバックに再建への一歩を踏み出すことになります。
逆に反対派が勝てば、ギリシャはユーロ圏離脱の迷路に入り、その先は闇としか言いようがなくなります。

銀行休業などの現実が国民の目を覚まさせたのか、当初、反対派が有利と言われていた世論も、最近の調査では、賛成が反対を上回りだしました。
なにより、「投票に行く」と答えた有権者が86%超と、急上昇していることから、最後は賛成派が勝つと予想されています。

ギリシャ危機がここまで深刻化したのは、ギリシャ政府と国民の意識の甘さの「相乗効果」ならぬ「相乗悪化」であり、いわば、自業自得なのです。
選挙目当ての減税や公共サービスの拡大、公共投資を繰り返したあげく、公務員の数は就業者数の25%に達し、しかも、その公務員は「皇帝福祉」と呼ばれるほどの高福祉を享受していたのです。
例えば、あまりにも遅刻が多いため減給するのかと思えば、逆に、定刻に出勤すれば「定時出勤手当」がもらえるというデタラメぶりです。
100万人に達した公務員に出す月給がGDPの50%を超え、財政破綻の危機が迫っても、58歳になれば退職して在職時の月給の98%ほどの年金を一生涯受けとる制度はそのまま、といったような有り様だったのです。
さすがに、2010年のユーロ危機の時には、その年金の一部を削りましたが、公務員たちが猛反発。
削減額は、債権団の要求には遠く及ばない「雀の涙」に終わりました。
当然、そんな経済が続くはずもなく、そのつけは若者に跳ね返ってきました。
青年失業率は50%にまで跳ね上がったままなのです。

しかし、外国からの借金が、国内総生産(GDP)の1.8倍にあたる3100億ユーロに達しても、国民は軽微な改革案すら受け入れず、政府には国民の反対を押し切ってでも改革を断行する気概もありませんでした。
こうして、ついにデフォルトの日を迎えてしまったのです。

ギリシャ危機は、借金で福祉を支える国家運営がどれほど危険なものかを我々に克明に見せてくれています。
今のギリシャの姿が、未来の日本に重なって見えるのは私だけではないはずです。
しかし、日本の国民も甘い言葉を求め、政党は相矛盾するウソを平気で垂れ流しています。
高福祉国家を目指すのであれば、高い税金負担は当然です。
逆に、税金を低く抑えるのであれば、福祉を抑制するしかないのです。
野党は、とかく、「高福祉を低率の税金で実現する」などというウソを言いますが、それは「ギリシャのようになれ」と言っていることと同じなのです。

5日の国民投票の後、臨時号を発行して、ギリシャの今後を解説したいと思います。

( 7月5日に行われたギリシャの国民投票は、61.32%の反対という結果でした。
「賛成派が勝つのでは」とした私の予想は外れました。
ギリシャ国民の間では、それほど緊縮策への抵抗が強かったということです。
臨時号で、ギリシャ情勢について解説します。)