民主主義に軍事力は不要?(3)

2020.01.06

ロシアのプーチン大統領は独特の政治観を持っているようである。
彼は、かつて「ドイツは主権国家ではない」と発言したことがある。
この発言は、ドイツというよりNATO加盟国に対して向けられたものである。
米国の軍事力に依存しているNATO加盟国は、独自で自国を守る力を持たない国なので「主権国家」とは呼べないという意味である。
だが、同じNATO加盟国でも、英仏は、独自の核戦力を有しているので「主権国家」だという認識のようである。
 
そうなると、プーチン氏が認める「主権国家」は、まず、米、露、中、英、仏、印、パキスタンの核兵器保有国となる。
さらに、スエーデン、スイスなどのように、一切他国に依存しない独自の軍事力を有する国家も認めているようである。
 
「プーチンの勝手な見方」と無視するのは簡単だが、かつて何度もロシアと戦火を交えた日本としては、無視できない要素を含んでいる。
それは北方領土交渉における最大の要素である。
ロシアは、米国の軍事力に頼っている日本を「主権国家」として認めない、ゆえに同格の交渉相手とは認めないと言っているのである。
つまり、現状で北方領土が戻る可能性はほとんど無いということである。
 
では日本はどうすれば良いのか。
日米安保条約を破棄し、プーチンが認めるほどの軍事力を装備する・・では、あまりにも単純発想である。
プーチン理論に振り回されることも、楽観的な平和を願うことも害となる。
あらゆる幻想的な認識を消し去り、厳しい現状認識に立つことである。
当面、北方領土は返ってこない。
当然、ロシアとの間の平和条約締結もない。
国際的には、平和条約がない国家どうしは「準戦争状態」と定義されている。
安倍政権は、そのことをよく認識してロシアとの交渉に臨んで欲しい。