純粋な軍事の話(2)

2018.12.29

中国の習近平主席は、今年10月、台湾や南シナ海を管轄する人民解放軍南部戦区に対して「戦争への備えに専念する」よう指示を出した。
これは、人民解放軍の公式サイトに載っているので確かである。
台湾国防部(国防省に相当)も、中国人民解放軍の偵察機の飛来の頻度が増えていると報告している。
 
台湾は中国の一部という中国の主張は日米を含む多くの国が認めている。
だが、台湾の自治権も尊重すべしという「ただし書き」付きであり、事実上、中国の主権は及んでいない。
習近平主席はこうした状況を自分の代で終わらせたいと考え、台湾に対する表と裏の攻勢を強めてきている。
 
台湾は、中国が太平洋に出るルート(第一列島線)の真ん中に位置しており、その獲得は中国の軍事戦略にとっては欠かせないピース(断片)である。
ゆえに、中国にとっては、台湾の武力制圧は正当性を持っているのである。
実際、軍関係の内部文書の一部が外部に漏れたが、そこには人民解放軍が2020年までに台湾に侵攻する極秘計画を練っていることが書かれていた。
 
人民解放軍の公式サイトでも、地上軍と航空戦力を統合し、先制攻撃で敵側の動きを抑える必要性を強調している。
この方針は、習近平主席が「人民解放軍はハードウエアと戦略構造の見直しを図れ」と指示した中に示されている。
中国は着々と台湾侵攻の準備を進めていることは確実といえる。
 
もちろん、台湾のうしろには米国がいて、中国に対してにらみを利かせている。
近年の中国軍の海空戦力の増強が急ピッチであることから、米軍との差は急速に縮まっているとする報道が増えているが、その差は依然として大きい。
特に空母打撃群の戦力差は、量・質とも天と地ほどの差がある。
この差を容易には埋められない中国は、米軍の空母打撃群を第一列島線の内側に入れないよう、対艦ミサイル網を中国沿岸部に大量に配備している。
 
これは確かに米空母群にとってはやっかいな存在で、米軍は緒戦で沿岸ミサイル網を叩く戦略を描いている。
その中で沖縄を初めとする西日本の米軍基地は不沈空母の役割を為す貴重な存在なのである。
こうした理由から、中国が台湾や尖閣諸島への武力攻撃を断念しない限り、沖縄の基地問題が解決する道は無いといえる。
日本は、平和と戦争の二つの戦略を並行して進め、難しいことだが、中国に武力行使を思いとどまらせることが肝要である。
平和だけを唱えても平和は来ない。