2024年4月30日号(経済、経営)

2024.05.01


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2024年4月30日号
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発行日:2024年4月30日(火)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2024年4月30日号の目次
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◇円安or円高のどちらが良いの?
◇2024年への展望(5):日本経済が上りきれない理由
◇これからの中小企業の経営(5)
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
日銀がマイナス金利を解除しても円安が止まりません。
日米の景気動向が変わらない限り、この傾向は変わらないと思います。
今回は、この話題から入ります。
 
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┃◇円安or円高のどちらが良いの?              ┃
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ネットで著名な経済評論家がこんなことを言っていました。
「1ドル110円時代に『この先1ドル150円になる』と言ったら誰が信じたでしょうか?」
このような「たら・れば」の話は世の常ですが、日本が貧しかった時代を知らない方々は160円を超えてきた現在の状況に不安を感じるでしょう。
ですが、私が初めて米国へ派遣された時は、1ドル360円の固定相場でした。
しかも、持てる限度額は2000ドル(72万円)。
短期出張ならともかく、長い滞在となると苦しい生活を強いられました。
 
その後、円ドルは変動制となり、250円、200円と米国に行くたびに円高となり、滞在も楽になっていきました。
この時代、海外から原材料や商品を仕入れている企業も仕入れ値が下がり、利益が増えました。
他方、輸出企業は海外での販売価格が上がり、ダンピングで利益を減らした上、ダンピング課税を掛けられ、大変な苦境となりました。
しかし、トヨタを筆頭に輸出関連の企業たちは、品質を上げながらのコストダウンという困難な生産革命を成し遂げ、日本経済の基盤強化に貢献してきました。
その結果、日本は世界有数の金持ち国となり、円高は進み、1ドル80円という超円高となりました。
こうなると、マスコミは「円高をなんとかしろ」と騒ぎたてます。
かつては「円安からの脱却を」と言っていた同じ口で反対のことを騒ぐのです。
つまり、円安も円高も、その時々の自分の立場で「良い・悪い」となるわけです。
当たり前の話ですが、大事なポイントです。
 
では、「これからどうなるのか」を考えてみましょう。
経済評論家は、日米の金利差が大きい現在のままでは、円安傾向が続くとみています。
たしかに、それも大きな要素ですが、私は消費者心理が一番大きな要素ではないかと考えます。
日本は、33年前のバブル崩壊とその後の長いデフレを経たことで、消費者の心理はまだ冷え込んだままです。
つまり、一種のトラウマ状態が続いています。
たしかに「賃金アップ」の報道が増えていますが、「このアップがいつまで続くか」には疑問を抱いています。
その心理がある限り、購買意欲が上がってくるとは思えません。
 
その昔、バブルへ向かっている時代の給料は年10%以上の上昇が続き、バブル崩壊前は30%も上がりました。
私事ですが、あの時代、2年置きぐらいに車を買い替えていましたが、すべて即金払いでした。
お金を使うことに対する不安は、はっきり言ってありませんでした。
そんな思い出を持つ年配者の方も多いのではないでしょうか。
 
そうした時代からみたら、5%程度の賃上げで、しかも社会保険料等の天引き額も増える中で、「収入が増えた」の実感は乏しく、財布の紐は緩みません。
なので、今の状態がずるずると続いていくだけという公算が高いのです。
 
このような状態で、日銀が利上げ(0.5~1.0%)に踏み切り、しかも「3.0%まで段階的に上げる」ような雰囲気を醸し出せば、一気に円高に振れる可能性が高くなります。
しかし、その結果、借入金利の上昇で中小企業の倒産や住宅ローンの破綻が起き、輸出は減速し、日本は一気に不況に落ちる可能性があります。
ならば「このまま円安のほうが良いのか」というと、原材料や輸入品の値上げで、小売業、飲食業、建設会社などは苦しくなる一方です。
 
つまり「円安が良いか円高が良いか」の議論は無意味なのです。
日本は、もはや貿易で食べている国ではありません。
GDPに占める輸出依存度は14.6%、輸入を足しても28.6%と、ほぼ米国なみに低いのです。
しかも、「輸出-輸入」の差は0.6%と極小なので、マクロでいえば、円安でも円高でも経済への影響は変わらないということになります。
日銀の植田総裁は、この状況下での利上げは、為替相場に影響を与えることができても、経済への悪影響が強く、早急には「できない」と考えているでしょう。
日銀に期待するのは無理ということです。
 
ならば、どうしたら良いかですが、答えは単純です。
公共事業を増やし消費税率を下げ、投資と消費増を喚起することです。
その理由は、次項の「◇2024年への展望(5):日本経済が上りきれない理由」で述べます。
 
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┃◇2024年への展望(5):日本経済が上りきれない理由    ┃
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前項で、日本は「公共事業を増やし消費税率を下げれば、消費が喚起され経済が上向く」と述べました。
これは小学生レベルの算数の問題で、私ごときが大上段で言うべきことではありません。
では、どうして政府は小学生レベルの政策を実行しないのでしょうか。
 
答えは、現在の岸田政権が財務省にコントロールされているからです。
財務省は、能登復興の補正予算さえ渋って小出しの実行しか行いません。
財務省は、歳出が増える防衛費の増額や子育て支援に対しては、苦虫をかみ潰す思いでいます。
しかし、こうした大きな政治判断を変えることは財務省といえども不可能です。
それゆえ、とにかく潰せるものは潰そうと“やっき”になっているのです。
公共事業費の増加に対しては、自然災害の増加やインフラの劣化が目立つ現状を考えれば、しぶしぶ認めるでしょう。
しかし、どう減額するかの知恵(悪知恵?)を絞っています。
 
一方、歳入のほうですが、赤字企業が7割に及ぶ中小企業からは法人税が思うように取れません。
それで、大企業の利益を増やす方法で法人税収を上げようとしています。
それには消費税増税による還付金の増額が、即効性があり、経団連の狙いとも一致します。
もちろん、消費税の納付額も増えるので、財務省にとっては一石二鳥の策ということです。
「税率20%」が財務省の目標のようですが、国民はこの是非をよく考えて欲しいと思います。
 
財務省は、円安が160円を超えたことで、さすがに「まずい」と考えたのか、為替介入に踏み切ったようです。
もちろん公式には介入を認めませんが、タイミングとしてはベストに近いといえます。
実際、円はドル160.245円から154.4円に急騰したのですから「効果はあった」とみるべきです。
 
この介入とは財務省(または日銀)が保有している外貨や債券を売ることを指しますが、160.245円で売り抜けたわけなので、財務省には大きな差益が入りました(つまり、大儲け!)。
この利益は外為特会と言われる特別口座に入るわけですが、おそらく3兆円規模の臨時収入となったはずです。
ならば、この収入を使えば、一回限りの定額減税や子育て支援金の支給などは、一括の「現金支給」でできるはずです。
しかも、円安が加速したことで、この特別口座には現在40兆円もの資金が溜まっています。
これが、よく言われる「埋蔵金」の正体です。
そもそも外為特会のプラスがここまで膨らんだのは円安の影響です。
ならば、円安で打撃を受けている国民や中小企業に還元するのが筋ではないでしょうか。
 
岸田首相に本物の胆力があれば、こうした政策実行をぶち上げるでしょう。
当然、財務省に取り込まれている勢力が多い自民党内の反対を受けるでしょう。
ならば、この現状を国民に開示し、改革実行案を示したうえで、解散総選挙に打って出ればよいのです。
そして、「これが新しい資本主義だ」と叫べばよいのです。
 
しかし、岸田首相に、そこまでの胆力を期待するのは無理そうで、可能性は限りなくゼロです。
中小企業は政治に頼らず、生き抜くための“したたかな”経営戦略を考え直そうということで、本シリーズを締めます。
 
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┃◇これからの中小企業の経営(5)             ┃
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前号で「創業企業が10年生き延びられる確率は10%も無い」と書きましたが、5~6%との声も聞きます。
いずれにしても、生き延びる確率が相当に低いことは確かです。
そんな創業者の一人であるダイソーの故矢野博丈社長から聞いた話は衝撃的でした。
 
矢野社長は、ダイソーに至るまで30の商売に失敗し、3回の夜逃げをしたと語っていました。
3回目の夜逃げで、逃げるところもなくなり、最後に始めたのが100円ショップということです。
「なぜ100円なのか?」の質問には、
「買ったものが不良品だった場合でも、お客は100円なら『しょうがない』と諦めてくれる。これが1000円だったら絶対に諦めてくれない」と、拍子抜けするが納得の答え。
しかし、100円だから売れたというわけではないと言われました。
どういうことか?
さらに話を聞きました。
ここからは、ご本人の言われたことをできるだけ、そのまま掲載します。
 
当初、60円で仕入れた商品を100円で売ったが、まったく売れない。
それで90円で仕入れた商品を100円で売ったら売れた。
しかし、それでは経費を引くと赤字になってしまう。
でも、「これで売るしかない」と覚悟して売り続けた。
とうぜん、赤字は増え続け、借金はさらに膨らみ、どこからも貸してもらえなくなり、「もうアウトや」と思うしかなかった。
 
ところが、その時、仕入先から「あんた、よう売ってくれるから、これから80円でええよ」と言われた。
それで、なんとか商売が続けられ、頑張って売っていったら、次は「70円でええよ」となり、やがて60円で卸してくれることになった。
品質的には90円の商品を60円で仕入れて売るのだから、当然、売れた。
 
「なるほど」と思ったが、話はそれだけではなかった。
矢野社長の話を続けます。
 
100円ショップに来るお客は、何か目当てがあって来るのではありません。
店に来て「なにか面白いものはないか、新しいものはないか」と探すことを楽しんでおるのです。
だから、1週間も同じものを同じように並べておくと、来てくれなくなります。
だから、品物を変え、並べ方や見せ方を変え、店内をぐるぐる回ってもらうようにするんです。
お客は、店内を何回も回ったあげく、いくつもの商品を手にして買うていかれるのです。
100円の商品1個だけレジに持ってこられるというお客さんはおられませんね。
 
「なるほど」です。そこには、商品販売のエキスが詰まっています。
まず、「安さ」ではなく「リーズナブル」ということが大事です。
本来、販売とは、商品(サービス)とお金との「等価交換」なのです。
まず、お客にとって「欲しい」ものでなければ、そもそも入り口でアウトです。
そのうえで、「どうしても欲しい」か「この価格なら良いか」ということで購買が決まります。
それが「リーズナブル」という意味です。
 
次は、お客を「回遊させる」ということです。
この回数が多ければ多いほど、売り上げは増えるはずです。
ですから、ライバル店の出現はチャンスと言えるのです。
(もちろん、ライバル店に行ったきり戻って来ないは、アウトですが)
物販業でなくとも、製造業、建設業、サービス業でも同じです。
互いに切磋琢磨して、産業そのものを盛り立てていくことが本当の努力といえます。
 
もっとも、私には「100円ビジネス」はとても無理ですが・・
 
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<編集後記>
4月は新入社員の季節ですが、今年は退職代行業が話題になっています。
つまり、「辞めます」を本人に代わって代行する商売ということです。
「世も末だ」と嘆く声がありますが、昔も本人ではなく親が退職願いを出しに来たとの話はありました。
私が在籍していた会社でも実際にありました。
それが商売になる世の中になったのかという思いと、自社で起きたら「どうする」ということを考えてしまいました。
 
 
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