2025年10月31日号(経済、経営)
2025.11.17
HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2025年10月31日号
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発行日:2025年10月31日(金)
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2025年10月31日号の目次
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◇高市政権へ期待すること
◇企業の投資(5):企業収益が生み出す差額と内部留保
◇新車陸送の世界(7)
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
トランプ大統領の6年ぶりの訪日が政権発足と重なったことは高市首相にとってラッキーでしたが、この機会を捉えて外交で大きな成果を上げたことは確かです。
次は、経済活性化へのインパクトを期待しますが、さて・・
今号は、経済問題に対する新政権への期待を論じます。
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┃◇高市政権へ期待すること ┃
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トランプ大統領の過剰とも思える誉め言葉は、単なるリップサービスを超えていました。
大統領と一緒に乗り込んだ米空母での高市首相のパフォーマンスに対し、一部から批判のコメントが出ていますが、大統領のまなざしは自分の娘を見るような穏やかさでした。
それだけでも、この初顔合わせは成功だったといえるでしょう。
批判者は、空母内でこぶしを突き上げ米兵の喝さいを浴びる姿を「はしゃぎすぎ」と批判しますが、私は単純に「かっこいいな」と思いました。
あれが前首相だったら絵にならないでしょうが、今までにない新鮮さを覚えました。
と、新首相を持ち上げるのは“これくらい”にして、本題に入ります。
首相としての真価が問われるのはこれからです。
首相は、国会の所信表明で「物価高対策が1番」と明言しましたが、現下の経済情勢を考えれば、それは当然です。
まずは臨時国会開催中の「ガソリンの暫定税率の廃止」ですが、これには野党も反対できないので、年内の廃止でほぼ決まりです。
廃止の財源には1兆円が必要ですが、税収の上振れだけで簡単に吸収できるので、財務省も騒がないでしょう。
でも、1リットル当たり25円ガソリンの価格が下がるインパクトは大きいです。
給油するたびに「おっ、下がった」と実感し、「今まで、こんなに上乗せ税金を取られていたんだな」の感情が湧くでしょう。
当然、輸送や物流への大きな支援になるので、物価高騰へのブレーキ効果も期待されるところです。
ここまではすんなり行くでしょうが、次の関門は補正予算です。
新政権は、おそらく、この補正予算単独で考えるのではなく、来年度予算の増額への呼び水になる策を盛り込むものと推測します。
それ以上に切望するのは、社会保険料の引き下げです。
個人も企業も、この負担には相当に苦しめられています。
弊社もそうですが、多くの企業は頑張って賃上げし、ボーナスの支給額も増やしています。
しかし、支給額上昇のかなりの部分が税金と社会保険料に吸い上げられてしまいます。
受取る従業員も“がっかり”ですが、支給する企業側の“むなしさ”は、それ以上です。
高市首相には、こうした国民と企業のマインドをなんとかリセットすることを切望します。
ただ、自民と維新の二党では過半数に届かないので、無所属や参政党、日本保守党などの勢力の賛成を得る必要があります。
また、予算内容によっては国民民主党も賛成に回る公算が大きいと思われます。
ここまで長く続いた日本経済の低迷を招いた主犯は、財務省および、その主導を許してきた国会です。
その点で、高市首相が財務省への抑え役として片山さつき氏を財務大臣に任命したのは理にかなっているといえます。
片山氏は、財務官僚として主計官まで務めるなど、在職期間は23年に及ぶ財務通です。
しかし、政治家になってからは、2009年の総選挙で小選挙区3位と惨敗するなどの辛酸をなめています。
その後、安倍元首相に見出され頭角を現したことが高市首相につながり、今回の抜擢に繋がりました。
官僚出身者らしい冷徹な発言と独特のヘアスタイルでアンチも多い人ですが、能力自体は非常に高い人であることは確かです。
今回、財務大臣だけでなく内閣府特命担当大臣(金融担当)も兼務することで、高市首相の期待度が相当に高いことがうかがえます。
今後、困惑しているであろう財務官僚および彼らと組んできた政治家たちが反撃に出るのか、それともおとなしく政権に従うかがカギとなります。
その最初の帰趨は、来年度予算の内容で判明します。
一番分かりやすいのは国債発行額でしょう。
高市首相は、防衛費のGDP比2%達成を明言していますが、「財源は?」と問われたとき、「財源は経済成長です」と言い切りました。
ということは、GDP比2%を堅持しながらの経済成長で、防衛費の絶対額を増やしていく算段ということです。
ただ、現在の経済情勢において、どのような政策で成長を牽引するかの具体策はまだです。
首相は積極財政派と言われていますので、成長の呼び水としての国債発行も辞さない覚悟と受け止めました。
今後の具体的な政策発表を期待します。
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┃◇企業の投資(5):企業収益が生み出す差額と内部留保 ┃
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企業とは、価値の低い原材料を仕入れ、その仕入れ価格の上に製品に仕上げる製造コスト、労働対価、企業を維持・発展させるために必要な管理経費、さらに欲しい利益額を乗せた売価で販売し、それらの差額を蓄積していく「装置」です。
企業の投資原資として最も好ましいのは、こうした差額の蓄積です。
もちろん、差額が溜まるのを待っていられないケースが多いので、「投資は借入で」が普通に行われています。
でも、その借入の返済原資も、この「装置」から生み出される“差額”です。
このように「企業は装置」と言い切ると、非常に無機質な存在のように見えてしまいます。
また、正当な方法で高い収益を上げる経済モデルは“美しい”と評されることがありますが、その裏には精緻な数式が高度な整合性を持って“冷たく”存在しています。
こうした「美しさと冷たさの両面を高度に保つ」企業が“優れた企業”と言われます。
ただし、こうした整合性が常に保たれる保証はありません。
大きな景気変動、今回のトランプ関税のような外圧、法改正、事故など、整合性を狂わせる要素には事欠きません。
こうした中で企業が生き延びていくため、生身の人間である従業員の尊厳や暮らし、あるいは社会の安定がある程度犠牲にされていくのは、資本主義の、いや大きな意味での経済活動の必然といえます。
このような資本主義の非人間性を批判して計画重視の社会主義、その発展形の共産主義が生まれたわけです。
しかし人間性を重視したはずの計画経済は、結果として歯止めの効かない独裁体制になり、破綻するか破滅の道へ向かったことは近代の歴史が証明しています。
誰もが名前を聞いたことがあるピーター・ドラッカーは近代経済学の父ともいえる存在です。
彼が、自分のことを「社会生態学者」と呼んでいたのは有名な話ですが、こうした不安定さを抱えている経済はあくまでも人間社会という“生態系”の一部であり、社会全体の健全性に貢献して初めて意味を持つと考えたのです。
彼は、人間や社会をその生きるための土台から切り離し、経済自体が自己目的化してしまうシステムの危うさに警鐘を鳴らしていました。
AIシステムに無自覚に傾こうとしている近年の企業経営に対する警告とも言えます。
彼は2005年11月にこの世を去っていますので、現代のAIブームは知らなかったわけです。
それでも、その危険性を見据えていた慧眼には感嘆するばかりです。
さて、ここで企業収益というものを考えてみたいと思います。
「何を今さら・・」と思わずに聞いてください。
昨今のマスコミは企業が内部留保を貯め込むことに批判的で、経済評論家の中にも同じ論調で企業を批判する方が結構います。
そうした意見に同調する人々に言いたいことがあります。
企業収益を100%労働者に還元したのでは、企業の新しい明日が創れないし、不況になればあっさり倒産となってしまいます。
そうしたことに備えるため、企業収益の一部分を「内部留保」として貯めているのであり、外野がとやかく批判することではありません。
「いや、過剰に内部留保を貯め込んでいることが“けしからん”」と言われる方に言いたいです。
内部留保の多さは企業の株価に反映します。
その分け前が欲しければ、その企業の株式を保有すれば良いのです。
当然、配当は銀行預金よりは良いはずです。
批判するのではなく、考え、そして行動することです。
企業経営は、個人とは比べものにならない“果てしない”思考と行動の連続です。
内部留保は、貯め込むことが目的ではなく、次の投資原資として使うことで、その何倍もの収益を上げることが目的です。
次回に続けます。
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┃◇新車陸送の世界(7) ┃
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この十数名からなる新車陸送チームが所属していたのは、最末端の零細企業です。
頂点に君臨する自動車メーカーと直系の輸送会社は有名企業なので、もちろん知っていましたが、そこから、この零細企業に至るまで、いったい何社が絡んでいるかは、全く不明でした。
たぶん、建設産業以上の多重下請け構造だったと想像しています。
先輩は、以下のように話していました。
「メーカーから輸送会社への支払いが1台2000円とすると、俺たちが受け取るのは500円だな」
実際は、運ぶ車の種類や出発する工場によって単価はいろいろでしたが、いずれにしても、実に75%が途中でピンハネされるというわけです。
私は「へ~」と思うだけでした。
我々が所属する会社にいるのは、社長と事務員2~3名だけです。
輸送ドライバーの中で、学生バイトは私ともう一人の2名だけでした。
あとは正規雇用の社員と非正規雇用の人たちでしたが、その割合は不明でした。
チームリーダーは正社員のようでしたが、確かめたことはありません。
それでも、チームには、まるで家族のような奇妙な連帯感がありました。
私が続けられたのは、その“おかげ”かもしれません。
夕方から明け方まで夜通し車を運び続けるわけですが、夜中の1時頃、ラーメン屋で夜食を食べるのがチームの日課でした。
一晩で何台運べるかの台数が稼ぎなので、チームの面々は黙々とラーメンをすすり、リーダーが「お-行くぞ」と声を掛けると、一斉に立ち上がり、自分が運ぶ車に戻り、再び爆走を始めるのです。
食べるのが遅い私は、最後のラーメンのつゆをすすりながら、慌てて代金を払うと、自分の車に駆けていく毎日(毎夜?)でした。
そんな日がしばらく続いた後、いつものラーメン屋に入ると、先客の女性が数人カウンターで食事をしていました。
そのうちの一人が、最初に店に入った先輩に声を掛けました。
「きょうは、いっぱい稼げたの?」
私は、その野太い声に驚き、彼女をしげしげと眺めてしまいました。
私の視線を感じた彼女は、私のほうを向き「あ~ら、新人さん? 若い方っていいわね。どう、お安くしとくわよ」と声を掛けてきました。
先輩は大声で笑い出し、「こいつには“かわいい”彼女がいるんだよ。おめえのような化け物が出る幕はねえんだよ」と言いました。
言われた彼女は、「もう、いけ好かない人」と言いながら先輩の肩を叩いて笑いました。
そこで、私はようやく気がつきました。
彼女(?)たちは、当時は“おかま“、現代だったら「ニューハーフ」とでも呼ぶ女装の男性だったのです。
そのような人を見たことはあっても、間近で、しかも直接話した経験のなかった私は、ただただびっくりして硬直していました。
先輩たちは面白がって、私に「“ねえさん”の料金はオレが払ってやるから、オマエ、1回休んで遊んでもいいぞ」と囃し立てます。
その“ねえさん”が流し目で私のほうに近づいてきたので、私はあわてて「ごめんなさい、遊べないんです」と後ずさり。
その様子に、“ねえさん”たちと先輩たちは大爆笑。
みんなに笑われながら、私はそれまで感じたことがなかった奇妙な感覚の中にいました。
狂ったような走りで長い間、車を運び続けている先輩たち、そして「化け物」なんて言われながら、水商売の底辺で懸命に働いている“ねえさん”たち。
私は、水商売の仕事と新車陸送で稼ぎながら大学に通っている身の辛さに気持ちが折れそうになっていましたが、この時の先輩たちと“おねえさん”たちとのやり取りの光景に、気持ちが救われる思いがしました。
『こんな底辺で頑張っているのは自分だけじゃないんだ』との思いです。
それ以来、ときどきラーメン屋で出会う“おねえさん”たちとの交流を、楽しいと思うようになってきました。自分の知らない世界は、どんな世界であっても興味深く、かつ学ぶことが多いものです。
“おねえさん”や先輩たちとの語らいの中に、共感を覚える、また“きらり”と光るものを感じていました。
今になって思い返すと、それが人間としての成長の一つだったのです。
もう会うこともない“おねえさん”や先輩たちには感謝でいっぱいです。
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<編集後記>
高市・トランプ一色の数日でしたが、お祭りが終わっての日常が大切です。
企業としては、批判ではなく期待だけです。
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