今後の建設需要(16)まちづくり

2021.05.17


SDGsについて、前号では説明不足でした。
読者の皆様には「釈迦に説法」ですが、簡単に説明します。
2015年に国連サミットで採択された2016年からの30年間で達成すべき「持続可能な開発目標」ということで、17の目標と169のターゲットで構成されています。
国連好きの日本がこの言葉に飛びつき、政府、マスコミ、企業が連呼する状況になっています。
しかし、肝心の国民の多くは「なんのこっちゃ?」という状態だと思います。
 
実は、SDGsの17の目標の中に「住み続けられるまちづくり」があります。
だから、自分にも関係する言葉なのですが、なんでもかんでも横文字をありがたがる風潮に、嫌味のひとつも言いたくなったわけです。
前号で述べた「もっと人間味ある言葉が欲しい」は、生活感のある日本語が欲しいなということで申し上げました。
 
本題に戻ります。
まちづくりのプロジェクトを進める過程で、多くの専門家や大学の先生方と知り合い、様々な討議を行い、現在も続いています。
その中で感じたことです。
 
原野の中に新しい街を作るのでなければ、「まちづくり=街のリノベーション」となります。
ということは、その街には既に人が住んでおり、そこに新たな人も入ってくるという“波乱”が起きるわけです。
最近のはやり言葉の「多様性の受容」が必要となるわけですが、「多様性の受容」とは「わがままを許す」ことにつながり、我欲のぶつかり合いを招きます。
その中で、全員の合意を得る難しさはひとしおです。
多くの人の参加を促し、長い時間を掛けた対話を続け、少しずつ合意を形成するというプロセスが必要となります。
そこには、不動産権利の複雑さが立ちはだかり、私権の調整という難問が口を開けています。
 
かつ、最大の問題はファイナンスです。
「まちづくり」には巨額な費用がかかります。
参加者の自前の資金がぜいたくにある場合や気前の良いスポンサーが現れるなどという「おとぎ話」は、まずなく、金融機関やファンドからの資金調達が必要となります。
しかし、金融機関などと協議すると、必ず聞かれる言葉があります。
「出口戦略をお聞かせください」
ようするに、「いつ、お金を返していただけますか?」という、金融機関としては当然の質問です。
「いやあ、そう言われても、いつかは出来ますから・・」では、どこも門前払いです。
 
それゆえ、デベロッパーによる開発は、排除、選別の誘惑に勝てないのです。
結局、言葉で顧客を幻惑するしかなく、空虚な言葉が氾濫することになるのです。
しかし、これも一企業としてはやむを得ない制約ですね。
 
では、この制約をどう乗り越えるかの難問を、次回論じてみたいと思います。