価格競争に勝てる『建設生産システム』(8)顧客に向き合おうとしない建設産業

2013.08.29

この「価格競争に勝てる・・」の連載も長くなりました。
そろそろ締めに入るとします。

ここで、あえて言います。
市場ニーズに鈍感な産業の代表は、なんといっても農業と建設業でしょう。
共通項は、政治に保護された「護送船団」産業です。
いまだに・・なのです。

発注者であるお上(国交省)から、「適正価格で受注せよ」なんて言ってもらっているのです。
奇妙な話です。
本来、発注者は、品質を確保させた上で最も安い価格を志向するものです。
真の発注者である国民にしたら、税金の支出は少ないほうが良いに決まっています。
世の中、買うほうが、売るほうに「適正価格で売りなさい」なんて言いますか。
発注者も業界も、真の顧客(国民)に向き合おうという姿勢は、乏しいと言わざるを得ません。

この姿勢を正そうというのが「三方良しの改革」だと思うのですが、
さて、実態は・・。

百歩譲って、公共工事における「適正価格」とは「設計価格」のはずです。
お上には、「設計価格」を非公開にし、設計価格に一番近い業者が落札する制度にせよと訴えるほうが筋が通っていると思うのです。
いや、いっそこと、「公開談合」で受注者を決めるほうが現状よりよほどマシと思うのですが。

公共工事の価格は、あまりにも恣意的で不透明なので、これ以上の言及は止めます。

民間工事の場合、施主(企業および個人)の多くは、借金を背負って建設工事を発注します。
だから、公共発注者とは真剣度が違います。
ただ、大半の施主は技術力に乏しく、経験も少ないのです。
業者側の言うがままか、逆に業者に根拠のない理不尽な価格を押し付けるか・・になり勝ちです。

さあ、ここで、前回までのキーワードを思い浮かべて欲しいのです。
(1)社会情勢の変化
(2)劇的な技術革新
(3)豊富な実績
(4)イン・アン・エリア・ロープライス(地域で一番低価格)
(5)コンビニエンス(利便性)=地域密着
今回は、(4)「イン・アン・エリア・ロープライス(地域で一番低価格)」を考えてみましょう。

何だかんだと言っても、お客は安さを好みます。
読者のみなさんだって、「お値打ち価格」には関心が動くでしょう。
楽天などのNet通販をご覧になっている方は分かるでしょう。
一番に価格に目が行くと思います。
さらに、「今月限り」なんて書いてあると、「買おうか・・」と瞬間的に思ってしまうはずです。
低価格は、やはり魔力があるのです。
「適正価格」なんて書いてあったら、どうですか?
鼻もひっかけないのではないでしょうか。

ただし、「地域で一番・・」を誤解してはなりません。
「日本で一番」ではありません。
例えば、「Net通販+今月限り」も「地域」の一つなのです。
Net販売の世界では、アクセスするユーザー毎に紹介する商品のラインアップを違えています。
その中で一番低価格であれば良いのですから、「地域」の範囲もグッと狭まります。

長くなったので、この続きは次号で。