中小企業の借金(3)銀行の論理と倫理

2013.10.31

暴力団関係企業への融資で揺れるみずほ銀行の佐藤康博頭取は、10月28日に記者会見を開き、自らの進退について、こう述べました。
「辞任することを考えたことはない」
そして、自らに課された半年間無報酬の処分には「私自身は十分妥当な水準だと思う」と発言しました。
さらに、今回の「暴力団融資問題」の経営への影響については、こんな言い方をしました。
「影響はなかったとは言えないが、経営の根幹を揺るがすレベルではない」

この記者会見を聞いた(あるいは記事を読んだ)一般国民は、呆れ、怒ったことと思います。
およそ市民感情とはかけ離れた発言の数々ですが、銀行の論理と倫理を知るよい教材です。
経営者あるいは経営に関心がある者ならば、怒りではなく冷静な分析が必要です。
私は、身内の銀行員から聞いた話や自分の体験から以下のように分析してみました。

まず、佐藤頭取の論理から言えば、「この程度のことで辞任していたら、誰も頭取なんか務まらんだろ」ということでしょう。
それはそうですな。銀行なら、どこでも、いつでも、あり得る「小さな話」なんですから。
当然、これに対する倫理感など毛ほども感じないでしょう。
これはこれで一理あります。「針小棒大」ということですな。

次の「半年間無報酬」ですが、「給与額がゼロになる」というわけではありません。
これでも、頭取の年収は7,500万円ぐらいになると試算されています。
これを「妥当」とのたまう感覚には脱帽するしかありません。

最後の「暴力団融資問題」ですが、これは根が深い銀行の体質そのものに原因があります。
身内の銀行員が言っておりました。
このような「問題案件」は、無理に処理せず、塩漬けにして順送りとしているそうです。
銀行員はだいたい2~3年で移動しますから、それまで塩漬け係として誰かが温めておき、移動の時に「これ、お願いね!」と別の誰かに順送りされることが慣習なのです。
この程度の不良債権で銀行が潰れることはないのですから、「順送り処理」は妥当な方法なのです。
だから、頭取の「経営の根幹を揺るがすレベルではない」は、その通りなんです。

これが銀行の論理であり、その中で庶民感覚の倫理観など消えてしまうのです。
良いも悪いもなく、これが銀行というより大企業に共通する論理と倫理観なのです。
中小企業には中小企業の論理と倫理観がありますが、残念ながら、それを尊重する銀行は皆無と考えたほうが良いでしょう。
銀行と付き合うには、銀行の論理と倫理で対策を練るしかないのです。
何度でも言います。「半沢直樹は、いないのです」