小さな会社の大きな手(7):投資

2015.09.30

ここまで、イノベーションの話題を続けてきました。
現代のように、経営環境がめまぐるしく変化する時代に、経営者が常に念頭に置いておかなければならないこと、そして、後継者が真っ先に実践すべきこととして、イノベーションを解説してきました。
それと深い関係のある経営課題の一つが、今回のテーマ、「投資」です。
 
投資には、金融投資と戦略投資があります。
少々乱暴な識別ですが、「カネにカネを生ませる」のが「金融投資」、「モノやヒトにカネを生ませる」のが「戦略投資」と、私は区別しています。
 
金融投資は、わかりやすいですね。
株や債券を買ったり、他社の事業にカネを投資する・・などが金融投資です。
投資先や投資金額など、判断すべき項目は多いですが、基本的に、「自分は努力せず」、「他人の努力に期待する」のが、金融投資です。
まあ、単純な世界です。
 
私は大学2年から株式投資をやっていました。
最初は、株をやっていた父から指示され、30ぐらいの銘柄の株価をグラフに付けていました。
その頃、実家は水商売をしていましたが、父は、本業を私と母に任せ、株と競馬に夢中になっていました。
私はじぶんの付けている株価の動きを見ているうちに、興味が出てきて、アルバイト代を貯めたカネで自分で株を買い始めました。
つまり、それが私の「金融投資」の始めだったわけです。
 
父の血を受け継いだわけではないと思いますが、賭け事には興味を持ち、麻雀やビリヤード、競馬もやりました。
もっとも、ギャンブル性の強い麻雀やビリヤードなどは、大学卒業と同時に全て止めました。
社会人になってからは、競馬と株だけをやっていましたが、結婚を機に競馬も止めました。
「では、株は?」となりますが、会社を設立するまで続けていました。
設立資金の半分は株で稼いだカネでしたので、実利はあったと言っておきます。
 
カネ以上に、株をやっていたおかげで、経済の動向にとても敏感になり、経済を勉強する大きな動機になっていました。
経営者になってからは、このことが大きな助けになったと思っています。
 
不道徳と言われそうですが、将来、経営を志す若者は、「ギャンブルをやるべし」とすら思っています。
もっとも、借金地獄に陥るほどののめり込みは厳禁です。
この当たりの節度を自分で設けることが苦手な方は、手を染めないほうが良いですが・・
 
話が逸れてしまいましたので、金融投資に話を戻します。
そんな私ですが、経営者になってからは、株を止めました。
企業経営そのものが“博打”だからです。
他人には、「株投資で“運”を使い果たしたくないから」と、今でも言っています。
でも、本音を言えば、株や債券、FXなどで利益を出せるという自信はあります。
それは、金融投資は“博打”ではなく、科学の世界だからです。
 
もちろん、博打的要素はありますが、それは企業経営も同じです。
「博打」という言葉が悪いので、「benefit&riskマネジメント」と言えば、現代風にカッコ良くなるでしょう。
この博打的要素を一切排除した「堅実経営」を標榜され、実践されている経営者の方も多いと思いますが、未来は常に未確定で不安定です。
リスクの完全排除はそもそも不可能です。
原発を「100%安全でなければならない」とする意見と同じです。
原発の100%安全を達成するには、原発全廃しかありません。
同様に、企業も閉鎖すべきとなります。
 
しかし、企業経営を続けていく限り、リスクは常に存在しますし、時には金融投資の必要も出てきます。
やる・やらないは別にして、経営者たるもの、経営の一要素として、金融投資への関心は持ち続けるべきだと思うのです。
 
私自身は、今は事業資金をリスクにさらすわけにはいきませんので、自粛していますが、金融投資を再開する機会が来ることを楽しみに待っています。
いえ、その機会を作っていこうと思っています。
 
次回は、もっと大事な「戦略投資」の話をしたいと思います。