中小企業は儲かっていない(1)
2023.01.16
中小企業の6~7割は赤字で、一番の要因は、中小企業の生産性の低さにあると言われています。
たしかに、製造業の労働生産性を「従業員1人当たりの付加価値」で表している中小企業白書の2022年度版を読むと、大企業は1180万円、中小企業は520万円となっていて、半分以下の数字です。
ただし、こうした統計データを鵜呑みにはできません。
経営者や財務関係者の方なら、ご存知でしょうが、繰越欠損金による税制上のメリットを享受するため、会計上赤字にしている企業が相当数あります。
赤字にすることで、法人税負担が減り、場合によっては還付金を受け取れますが、法的に認められていることなので、違法な経営というわけではありません。
また、弊社もそうですが、商品・商材を自力開発している企業は、開発の投資額が大きくなります。
(弊社の場合、毎年の投資額は売上の2~3割に及びます)
当然、新商品の販売初期は償却額が大きくなり赤字となります。
ただ、弊社のような企業は少数派であり、多くの中小企業は、大企業の下請けや仲介的な仕事が稼ぎの中心になっています。
(公共工事がかなりの比率を占める建設業界は、その点では恵まれていて、元請け比率が高いです)
ゆえに、こうした構図の中にある中小企業の労働生産性が大企業の半分という現実は当たり前といえます。
つまり、労働生産性の低さの一因は、元下関係での中小企業の立場の弱さにあるといえるのです。
これを“しかたない”と諦めずに、なんとか克服する経営を目指すべきではないでしょうか。
新年から、数回に分けてこの問題を掘り下げてみたいと考えています。
以下に、そのプロローグとして、私のサラリーマン時代を思い起こしてみました。
<プロローグ>
日本では、親も学校も、大企業に就職することを「勝ち組」のように自慢します。
この価値観は、昔も今も変わっていないと思います。
私が大学を卒業して勤めた会社は、大手コンピュータメーカーでした。
当然、親戚や近所の人からは「勝ち組」の一人として扱われました。
ところが、米国で研修を受けた時期に、大きなショックに見舞われました。
米国で最優秀な若者は、在学中に会社を起こしてしまうのです。
ハーバードを中退してマイクロソフトを起業したビル・ゲイツなどが、その典型的な例です。
次に優秀な者は、創業間もないベンチャー企業を選びます。
大学院に進む者も、日本に比べれば桁違いに多く、一般企業に入る者も、夜学で別の大学や大学院で学ぶことが普通です。
一緒に研修を受けた米国人の若者の中にはIBMなどの大企業の社員もいましたが、ほぼ全員が「いずれ起業する」あるいは、ベンチャー企業へ転職して、そこの幹部を目指すというのです。
そして「君はいつ起業するつもりか」と真顔で聞くのです。
私は激しいカルチャーショックを受け、「大企業に就職した」という小さなプライドなどは粉々に壊れてしまいました。
しかし、その後、帰国した日本は、米国から見ると化石時代のようでした。
残念なことですが、日本人の価値観は、この時代からほとんど進歩していないように感じます。
若者には「ケチな価値観に囚われず、自分の未来を磨き抜け」と言いたいです。