世界経済はどうなるの?(3)

2016.06.16

前号で、中国経済の崩壊を回避する最後の一手を今号で解説すると予告しました。
それを含めて解説します。
 
2008年のリーマン・ショックの時、中国は、いち早く景気を回復させた。
その源は、約4兆元(当時の相場で約57兆円)規模の超大型の景気刺激策である。
その大部分は公共投資であり、同時に行った空前絶後の金融緩和策である。
これらの政策は、生産設備、不動産などへの爆発的な投資ブームを起こし、欧米や日本の低迷をよそに、中国は9~10%の経済成長を維持してきた。
一党独裁の政治体制だからこそ出来た強引な政策が功を奏したのである。
 
この経験から自信を付けた中国は、共産党一党独裁の政治体制のほうが民主主義より優れていると内外に宣伝してきた。
だが、中国の共産党政権は、やはり「経済音痴」である。
リーマン・ショック時の強引な経済政策は、中国がまだ「開発途上国」だから成功したのであり、そのツケがいま来ているのである。
 
公共投資といえども「投資」には変わりない。
投資はリターンがあってこそ成功といえる。
投資した金額は負債であるから、最終的には返済しなければならない。
しかし、リターンがなければ返済はできない。
開発途上国の多くは、先進国からの援助や借款で投資を行っている。
当然、援助する側からの干渉や成約を受け、窮屈である。
しかし、だからこそ、リターンなき無謀な投資は行われにくいといえる。
 
それに対して、中国は自前のカネ(実際は対外債務もかなりある)で投資を行ってきた。
支援国からの干渉が無い代わりに、甘い投資計画が簡単に通ってしまう。
特に、共産党幹部が関わる案件には利権による過大投資が行われてきた。
まさに、一党独裁の弊害である。
その結果、中国が行ってきた投資は、リターンが見込めない「名ばかり資産」ばかりになってしまったのである。
そんな中国に、世界は過大な幻想を抱いてきた。
このツケは、中国のみならず、全世界が被ることになる。
 
このような中で中国が打てる「最後の一手」とは、国際通貨基金(IMF)から一応のお墨付きを得た人民元資金の活用である。
しかし、この最後の一手は、人民元の金融市場が中国政府によってがんじがらめに規制されているため、使い勝手がすこぶる悪い。
金融・資本の自由化が成されず、情報の自由もない市場は、北京の意志次第でどうにでも動く。
結局、だれも投資したくない市場となっているのである。
 
日米の資金が欲しい中国は、AIIBを設立し、「今からでも遅くない」と秋波を送り続けてくるが、
やはり、北京の意志が強く働くAIIBには日本はとても乗れない。
朝日新聞や日経などは「乗るべき」との記事を掲げるが、考えが浅すぎる。
 
経済も政治も自由が基本である。
8000万人ともいわれる共産党員の既得権益をそのままにしての自由経済はあり得ない。
パナマ文書で暴露された共産党の最高幹部たちの腹黒さをみれば分かる。
彼らが率先して人民元を売り払い、資本逃避を拡大させているのである。
日本や欧米が中国を救うことはできない。
全ては、中国自身が解決すべき問題なのである。