今後の建設需要(24):最近の話題

2022.02.17

最近の業界紙で目に止まった記事を挙げてみました。
働き方改革やDXは数が多い割には中身が浅く、かえって進捗の遅さが浮き彫りになっています。
それ以外に注目したのは、以下の記事でした。
・賃上げ企業は、総合評価で5点の加点
・CCUS(建設キャリアアップシステム)を23年度から民間を含むすべての工事で原則活用
・経済成長は建設投資がカギ
・受注時採算の低下が課題
・受発注関係の基盤を固めるには
・省エネ住宅の推進を
・個人の成長支える制度を
 
どれも大事な問題ですが、内容の浅さが気になりました。
(紙面の都合があるのは理解できますが・・)
例えば「賃上げ企業は5点の加点」の記事です。
民間工事にはまったく無縁の話ですし、公共工事においても「賃上げしたが受注できない」企業は経営が苦しくなるだけです。
言い方は悪いですが「官僚の浅知恵」というしかありません。
もう少し辛辣な解説があっても良いのではと感じました。
 
また、CCUSは「システム運営を23年度から黒字化する」といった運営側の事情が優先して、対象となる技能労働者の目線での内容は乏しいです。
「技能に応じた賃金体系を」とありますが、これを国が強制するのでしょうか。
 
2024年度から始まる時間外労働の罰則付き上限規制についても解説が不足しています。
つい先日も、弊社が顧客の代行を行っている工事の工程表を受け取りましたが、土曜は施工日となっていました。
施主にしてみたら短い工期は歓迎です。
それに逆行する形の週休2日を、受注側が吸収するのは難しい現状があります。
記事では「受注規律」という言葉が出てきますが、「受注規律ってなんぞや?」という疑問が湧きます。
大手デベロッパーの知人は、「業者は、やりたくなきゃ、受けなければいいんだ」と言い放ちます。
たしかに、それも道理です。
日本は、基本が自由主義の国ですから。
 
欧州に引きずり回されている感のあるCO2削減は、間違いなく建設コストのアップに繋がります。
これに強制的な「働き方改革」が加わったら、建設市場は崩壊しないまでも、縮小することは確実です。
「だからICTなんだよ」と言われても、実質的なコスト削減につながる道はさっぱり見えません。
一部企業の成功例にしても、内容が誇張されているでしょうし、記事からは経営成績への影響は見えません。
 
誤解して欲しくないのは、私は業界紙の批判がしたいわけでも、様々な取り組み自体を否定しているわけでもありません。
企業人、特に経営者や幹部は、目を引く派手な話題や記事に惑わされず、自社の現状を踏まえた地道な道を歩むべきだと、自戒を込めて言いたいのです。
もちろん、先進的取組みに邁進している企業は、そのまま進めば良いと思いますが。