中国経済は「末期状態」と判断すべきか?(その2)

2022.09.20

「中国が2030年までに台湾侵攻か?」の報道がネットを中心に飛び交っていますが、習近平主席の本音は「戦争はしたくない」でしょう。
戦争を煽っているかのようなマスコミの姿勢に疑問が湧きます。
 
経済に黄色信号が灯っている中国には、戦争する余裕はありません。
派手に騒いだ割には中身が薄かった台湾を巡る軍事演習の様子からも、それは推測できます。
中国経済は危険な縁に立っていると考えてよいでしょう。
 
前号で述べた不動産市況の悪化が、その要因のひとつです。
過剰な負債を抱える開発業者が急増し、資金繰りに窮した末に建設工事を中断するケースが相次いでいるのです。
その引き金となったのは、2021年1月に、加熱する不動産バブルを警戒して、中国人民銀行が市況引き締めのために導入した「総量規制」です。
その影響で、同年9月、不動産大手の『恒大集団』が経営危機に陥り、不動産市場全体が一気に冷え込んできました。
かつての日本のバブル崩壊と似たような事態が進行していますが、中国独特の商慣習のため、事態はより深刻になっています。
 
日本では住宅ローンの返済は物件の引き渡し後に始まるのが一般的ですが、中国では物件の購入契約をした時からローンの支払いが始まります。
賃貸住宅に住んでいる人は、当然、家賃を払いながらローンの返済を行うことになります。
 
しかも、中国では早く契約するほど安く買える仕組みなので、住宅バブルの過熱により更地の状態からの募集に買いが集中し、早期にローン支払いが始まります。
こうした中、当局の「総量規制」が始まり、銀行は不動産業者にカネを貸さなくなりました。
資金繰りが悪化した不動産業者は、建築業者への支払いができなくなり、建築業者は工事を中断するという負の連鎖が起こっているわけです。
 
住宅の購入者は、完成する目処の立たない物件のローン返済と従来の家賃払いの二重負担が延々と続く事態に陥ったわけです。
そうした苦境に立たされた購買者の中から、ついに、住宅ローンの支払拒否を行う者が出てきました。
この「住宅ローンの返済拒否」は、またたくまに中国全土に広がり、収束の気配が見えない状態になっています。
 
中国では、個人情報はすべて政府に把握されています。
この中でのローン返済拒否は、国家のブラックリストに載るという“とんでもない”リスクです。
それが分かっていても、こうした行動に出るしかないほど、購買者は追い詰められているのです。
 
中国の不動産調査会社が「ローン返済拒否」に陥っている金額を公表しましたが、約4000億元(およそ8兆円)です。
中国の住宅ローンの総額は20兆元(400兆円)といわれているので、まだ大した金額とはいえません。
しかし、完成せず、引き渡しが遅れている物件のローン総額は、2~3兆元(40~60兆円)と言われていますから、爆弾を抱えているようなものです。
これが、ゼロコロナ政策で落ち込んだ中国経済に、さらなる追い打ちとなり、経済全体が一気に奈落の底に落ちるかもしれない危機になっています。
 
このところ、中国は、急に日本に微風を送り始めていますが、その魂胆は見え見えです。
「親中」といわれる岸田・林ラインが政権にいる間に・・というわけです。
こうした中国の下心を逆手に取れるか、岸田政権の姿勢を注意深く見ていく必要があります。