抑止力という名の軍事力(1)

2020.06.01

コロナウィルス騒ぎの影で、中国海警船による尖閣諸島への領海侵犯が常態化しています。
中国は、日本の抗議など意に介さず、「侵犯しているのは日本だ」と居直っています。
毎度のことですが、今回は様子が違ってきています。
海警船は領海外周の接続水域に常駐しているのです。
しかも、機関砲まで搭載している5000トンから8000トンという大型の海警船を投入してきています。
かつ、指揮を取っているのは、海軍の現役将校だといいます。
こうなると、明確な軍事力の行使といえます。
 
中国の言い分は、南シナ海と同様に尖閣周辺にも設定した休漁期間中の違法漁の取り締まりというものです。
さらに、日本による実効支配を打破するための正当な行為だと強弁しています。
しかし、どんな言い分があろうと、他国が施政権を有している領域に実力で挑むことは国連憲章や国際法に対する明確な違反行為です。
日本が竹島や北方領土に対し、実力行使に出ないことも同様です。
もとより、自分勝手に休漁期間を設定することなど出来ないのです。
 
しかし、この事態を放置すれば、やがて日本漁船への強行臨検、そして尖閣上陸という最悪の展開へとエスカレートする恐れが出てきています。
果たして、海上保安庁だけで、こうした事態を阻止できるのでしょうか。
今、日本が直面しているのは、「憲法九条は抑止力足りうるのか」という国家存続の問題です。
国会で一番に議論すべきテーマなのですが、与野党とも素通りの有様です。
 
戦後70年以上、世界大戦の発生を防いできたのは、平和への意思や国連の存在ではありません。
突出した米国の軍事力です。
こうした意見を言うと「親米派」とか「軍国主義者」と言われるでしょうが、冷徹な現実論です。
 
1945年の日独の敗戦で世界が平和になったわけではありません。
すぐに、中国での国共内戦が起こり、朝鮮戦争が起こり、ソ連によるハンガリー侵攻と続き、ケネディ米国大統領時代の「キューバ危機」と、世界大戦寸前の事態が続いてきました。
しかし、そうならなかったのは、米国の軍事力の前に共産主義国が折れたからです。
 
「キューバ危機」は1962年でしたから、もう58年も昔の話になりました。
若い方は当然、中高年の方でも記憶は無いか乏しいに等しいでしょう。
私は中学生でしたが、連日、ラジオに飛びついてニュースを聞いていました。
無線ハムに熱中していた友人の部屋で、米国のラジオや無線を傍受したりもしていました。
核戦争になるという不安に神経が飛びそうだった13日間でした。
結局、ソ連が艦隊を引き上げたのは、米軍の軍事力が遥かに上回っていたからでした。
 
これから数回に分けて、「抑止力としての軍事力」を論じていこうと思います。