トランプ大統領をどう判断すれば良いのか(2)

2016.12.15

 
前号を読まれた読者の皆様の中には、私がトランプ氏を評価したと誤解されたかもしれませんが、そうではありません。
やや脱線気味に、ひとつの見方を示したまでです。
もっと言えば、「この結果も面白いかもしれない」と思ったのです。
先が読めるクリントン氏ではなく、読めないトランプ氏が勝ったことで、世界が動くことが確信できたからです。
 
暴言とも言えるトランプ氏の過激発言は「卓越した選挙戦術であった」と書きましたが、暴言のかなりの部分に氏の本音が入っていることも事実です。
しかし、三権分立が厳格に確立している米国では、大統領が独断で実行できることは少ないです。
議会が賛成しない限り、暴言の多くは実行できないのです。
しかし、戦争は大統領の独断で始めることができます。
その意味では、米中が軍事的にぶつかる危険レベルが一段階上がったと考えたほうが良いでしょう。
しかもトランプ氏の行動原理は米国の国益のみです。
日本が危機に陥ることなど考えの外です。
そうなると、日本は、日米安保に頼った防衛体制を見直し、独自の戦略による防衛力整備を急ぐ必要があります。
 
ただし、トランプ政権は1期で終わる可能性もあります。
一番の懸念材料は、政権移行チームのメンバーにトランプ氏の家族たちが入っていることです。
しかも、トランプ氏は、その家族たちに、国家機密にアクセスできるセキュリティ・クリアランスを求めたと言われています。
まるで、韓国の朴槿恵大統領みたいです。
政治の私物化ほど危険なことはありませんが、トランプ氏は、そのようなことには関心を払わないのかもしれません。
前号で、私が「政治とはこういうものだと、トランプ氏から教えられた思い」と書いたのは、賛辞ではなく、警告です。
 
「政治家はウソをつくもの」ですが、そのウソを見抜ける国民の意識の高さが民主主義のレベルの高さを現します。
優れた政治家は、“現れる”のではなく、そうした民意の高さが“生み出す”ものです。
今回の大統領選の結果は、米国の民主主義のレベルが低くなっていることを証明したようなものです。
しかし4年後の選挙では、米国民は正反対の結果を出すような気がします。