抑止力という名の軍事力(2)

2020.07.01


日本の防衛は、大きな曲がり角に来ています。
野党や平和団体は「憲法9条を守れ」と声高に叫んでいますが、憲法9条をうまく利用してきたのは歴代の自民党政権でした。
つまり、憲法9条の制約から専守防衛に特化してきた日本は、高価な攻撃用兵器に予算を配分せずにすみ、非常に効率の良い防衛軍隊(自衛隊)を整備することが出来たのです。
 
こと通常兵器に限定すれば、日本の実力は大国並みといっても良いでしょう。
たしかに総力戦となれば、中国にはかなわないでしょう。
しかし、中国といえども、軍事同盟を結んでいる米国が後ろに控える日本に核攻撃は勿論、通常兵器による全面攻撃も仕掛けられません。
たとえ戦闘になっても限定的な局地戦となります。
しかも、四方を海に囲まれた日本の海軍(海上自衛隊)は、世界でもトップクラスの実力です。
特に潜水艦隊の実力は、原潜を保有する中国を上回っていると推定されます。
中国海軍は、日本の防衛線を突破できないでしょう。
 
空においても、数の上では中国が優勢ですが、日本を攻撃するには長距離の飛行を強いられます。
戦闘機の性能においても、日本のF15やF35のほうが上でしょうし、パイロットの技量においても差があります。
こうした海空の優位性の保持こそが、日本にとっての「抑止力としての軍事力」です。
 
中国の2隻の空母は、政治的なデモンストレーション以上のものではありません。
とても実戦に投入できるレベルの艦とはいえませんし、横須賀を母校とする米海軍の空母艦隊の敵とはいえない艦隊です。
 
しかし、少々問題になるのは、最近の防衛装備が政治的な思惑で“ちぐはぐ”になってきていることです。
例えば、イージス・アシュアです。
1基3000億円の基地を2基作る計画ですが、最終的な費用は1兆円を超えると言われています。
北朝鮮の核ミサイルの迎撃用と言われていますが、軍事的効果ははなはだ疑問です。
それより、イージス艦を3隻作るほうがはるかに理にかなっています。
 
また、F-2に代わる次期支援戦闘機を国産で作る案も疑問です。
日本には、十分な性能を持つ戦闘機を作る技術は、潜在的にはありますが、短期には無理です。
ここは、米国と秘密技術の移転を含めた共同開発の交渉に入ることがベストでしょう。
また、軍用機といえども、採算の問題は無視できません。
現行のF-2戦闘機より高価となる上に、150から200機程度は生産したいところです。
そうなると、日本だけではなく米国はもちろん、海外に売れる機体であることが必要となります。
日本単独開発となると、武器輸出三原則から輸出は難しくなりますから、ここでも壁にぶち当たってしまいます。
 
軍事力整備は、ファンタジーではありません。
冷徹な現実を土台に置き、さらに近未来をも見据えるという難題への挑戦です。
日本においては、賛成派も反対派もファンタジーになってしまっています。
現実問題として「抑止力としての軍事力」を改めて考えることが必要ではないでしょうか。