税金を考える(2)

2023.11.17

前回、「消費税は受け取った段階では『預かり税』である」と書いたことに関して、「預かり税ではない」とのご意見を頂戴しました。
もちろん、財務的には「仮受消費税」という科目で処理すべきですが、意味は同じだと思います。
あえて「預かり」という言葉を使ったのは、財務に詳しくない人には分かりやすいと思ったからです。
ということでご理解いただきたいと思います。
 
ところで、経団連会長が消費税を19%に引上げるよう発言し、世間の批判を浴びたことは覚えておられると思います。
会長の発言は、消費税が上がれば「輸出大企業に対する還付金が増える」という思惑だとして批判を浴びたわけですが、同時に、社会保険料の引上げを阻止したいという思惑もあったはずです。
 
消費税率を8%に引き上げたとき、政府は批判をかわすため「消費税を社会保障財源にする」という税制改定を行いました。
その結果、「消費税法第1条第2項」にこう明記されました。
「消費税の収入については、地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会補償給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。」
 
国民の大半は、税の中身に関して関心が薄く、こうした条文にはまったく興味を示しません。
ですが、この改定議論は、そもそも経団連が火付け役でした。
そして現在でも、財界は社会保険料の増額を阻止しようと、「少子化対策するなら、消費税を上げろ」と主張しているのです。
もちろん国民は「消費税上げろ」には大反対ですが、「社会保険料の増額阻止」は、財界と意見は一致するでしょう。
 
この問題、一般の人にはピンと来ないでしょうが、企業経営側の人間にはピンと来る話です。
現在、国民は給料の「約30%」を社会保険料として支払っています。
ですが、これは給与所得者(社員)と雇用者(企業)が折半で負担しています。
つまり15%が「社員の支払い」、15%が「雇用者(企業)の支払い」となっています。
しかし、社員は、自分の給料から天引きされている「15%の負担」は意識していても、企業が負担している「15%」には意識が及んでいません。
この金額、給与明細書には記載されませんから当然といえますが、企業としては重い負担です。
企業の財務諸表で「法定福利費」という科目になっていますが、見る機会があったら、かなりの金額になっていることが分かるでしょう。
 
つまり、社会保険料が引き上げられれば、社員の手取りの給料が減るだけでなく、企業利益も同じだけ減るのです。
経団連がこれを避けたいのは当然で、それはほぼ全ての企業に共通の思いです。
 
国民は、「輸出大企業が潤う消費税増税」には反対だが、「社会保険料の増額を防ぐための消費税増税」には賛成という矛盾する気持ちに追い込まれるわけです。
 
現在、国民の関心は消費税に向いていますが、岸田政権は社会保険料の引上げを画策しています。
岸田政権が社会保険料の引上げを画策するのは、次のストーリーを描いているからです。
まず「膨れ上がる社会保障費を賄うために社会保険を引き上げます」と主張する。
すると、当然、反対の声が湧き上がる。
その声が大きくなるのを見計らって、「では、消費税法に明記されている、『社会保障財源』を賄うため、消費税を上げます。どっちにしますか」と問うわけです。
当然、財界は賛成ですが、国民は股裂き状態となります。
11年前の「消費税法第1条第2項」の改定には、このような思惑が秘められていました。
「さすが、財務官僚の考えていることは“奥が深い”と言うべきか、“小ざかしい”と言うべきか。
それは読者のみなさまにお任せします。