税金を考える(1)

2023.10.16

消費税は「消費者が負担する税金」であることに間違いはありませんが、消費者が税務署に直接納めるわけではありません。
消費者から消費税を受け取るのは店舗や企業などですから、この段階では「預かり税」です。
ですが、この預かった税金をそのまま税務署に納めるわけではありません。
(読者のみなさまには、釈迦に説法の話ですが)
 
お店や企業は、仕入先や外注先、あるいは様々な相手に経費や交通費を支払っていますが、その際に消費税を一緒に払っています。
これは「預け税」ということです。
つまり、企業等が税務署に納めているのは「預かり税-預け税」の差額ということです。
 
お店や企業が税務署に納付するのは、このように「預かり税の余り」なので、納付するのが当たり前です。
しかし、消費税の導入には大変な反対が起き、時の竹下政権はびびっていました。
なにしろ、この税の導入を掲げたことで、大平内閣、中曽根内閣と2つの内閣が倒れ、大平首相は間接的ですが、心労から命まで落としたのです。
竹下内閣がビビったのも無理はありません。
その結果、「零細業者は、納付せずに懐にいれて良いですよ。つまり、消費税を導入するとあなた方は儲かるのですよ」と甘い言葉で丸め込んだわけです。
導入された平成元年(1989年)の4月1日から34年が経ち、財務省の官僚も代替わりしています。
導入時には在籍していなかった(いても責任のなかった)現在の財務省幹部は、「もういだろう」と考え、いよいよ、この特権を取り上げることにしたわけです。
 
消費者から預かった税金である以上、これを納めるのは当然のことです。
しかし、今や特権というより“当然”になっている「懐に入れて良い消費税」を「納めろ」と言うのですから抵抗は大きいわけです。
 
もう一つ、消費税が抱える根本の問題があります。
消費税は、法人税や所得税と違い、累進性のない税です。
つまり、零細な個人事業者であろうと1兆円を超える巨大企業であろうと、税率は同じということです。
もちろん、簡易課税制度や少額特例などの零細業者や小企業に対する救済処置を設けましたが、企業規模による累進性が無いという根本は変わりません。
消費税は、収益に対する税金ではなく、あくまでも「預かり税」なので、企業規模には無関係であり、原則としては公平な課税なのです。
 
しかし、日本のように「元請け優位の商慣習」がある国では、下位にいくほど「値下げしろ」とか「消費税を負担しろ」というような圧迫を受けます。
こうした悪質性はなくても、元請けとしては「インボイスを取らなければ、消費税を自分が立替えすることになる」というジレンマを負います。
 
つまり、誰もが満足する解決策はないのです。
ゆえに、デフレ脱却がまだ中途半端な状態の今の日本で実施するには無理があります。
好景気になるまで延期するか、消費税を下げてから実施すべきだといえます。
しかし、上記のどの策も時間切れの現在、経過を見ていくしかないということです。