日本の世界における役割とは?(6)
2024.07.17
前号で、剣法の奥義といわれる必殺剣の多くが「相手が攻撃してこなければ使えない」という究極の「専守防衛」の技だと書きました。
そこから「日本の憲法9条をこのような奥義に進化させることは可能なのか」との問いを続けました。
最後に、そうした戦略が出来たとしても、その戦略が日本を敵視している隣国に効くのかという大きな問題があります。
柳生新陰流の「真剣白刃取り」も一刀流の「隅落とし」も、受ける側の剣技の実力が攻撃側の実力を上回っていることが絶対的な条件なのです。
逆であれば、防御側は攻撃を受けた時点で負けが決まります。
「専守防衛」が日本防衛の方針だと主張する方の意見には、この大事な点が抜けているように思われます。
では、問題を単純化して、戦争に使う武器に限定して考えてみましょう。
現代の日本に軍事攻撃を掛ける可能性がある国は、中国、北朝鮮、ロシアの3カ国であることに異論は無いと思います。
「で、その攻撃する武器は?」と問うと、最初は、いま中国がフィリピンに対して行っている海警局の艦艇からの水鉄砲ならぬ放水や体当たりでしょう。
こんな程度の攻撃でもフィリピン側には負傷者が出ていますが、中国は陳謝もしません。
フィリピンが引かなければ、攻撃がエスカレートして銃撃にまで発展する危険性が生まれています。
日本は、こうした状況を座視できないとして、フィリピンと共同軍事演習の実施を含む「円滑化協定」を結びました。
日本では、この協定が「中国が日本を攻撃する口実」になりかねないとして心配する向きがあります。
確かにその危惧はありますが、この協定とは関係なく、中国による日本領海や領空侵犯は増える一方です。
尖閣諸島では、海警局の艦艇が日本の漁船を追いかけ回すという蛮行も常態化しています。
フィリピンとの協定が無くとも、日本は覚悟を決める必要があるのです。
最大の脅威は、日本を敵視する三か国がみな核兵器保有国であるという点です。
つまり、核攻撃があると考える必要があるということです。
それで冒頭の話に戻ります。
つまり、相手の核攻撃を「真剣白刃取り」や「隅落とし」のように返す必殺技があるかということです。
それは、相手の核ミサイルの方向を180度変えて、相手に打ち返すような技術ということになります。
原理的には「ある」ですが、現実的には「今は不可能」です。
でも、電子戦能力が発達した現代、相手のシステムを乗っ取り、核ミサイルの方向を変える技術は、すでにあると考えても不思議ではありません。
米国などは、そうした必殺の返し技をすでに保有している可能性があります。
ロシアが、ウクライナ侵略戦争において、なんども「使うぞ」と欧米を脅している戦術核兵器ですが、
「もしかしたら、返される?」と考えているとしたら、こうした疑念を持たせることが「専守防衛」といえるかもしれません。
日本は、こうした防衛兵器を開発し、中ロ北に「攻撃したら“やばい”」と思わせることが、憲法9条より効果があると思うのですが、「夏の夜の寝言」でしょうか。