これからの近未来経済(21):新しい資本主義を知ろう(1)

2022.09.20

今回から4回で、岸田首相の唱える「新しい資本主義」の4分野について、私なりの“無責任な”解説を行っていきます。
興味のない方は、読み飛ばしてください。
 
最初に、「新しい資本主義」が掲げる4分野を復習します。
(1)人への投資と分配
(2)科学技術・イノベーションへの重点的投資
(3)スタートアップの起業加速及びオープンイノベーションの推進
(4)GX(グリーン・トランスフォーメーション)及びDX(デジタル・トランス フォーメーション)への投資
 
今回は、「人への投資と分配」を取り上げますが、正直言って、岸田首相の真意が不明です。
分配が「企業に賃金を上げさせる」という要請(あるいは強制)であることは明白です。
雇用されている社員の立場から言えば「良いこと」ですが、経営者にとっては「慎重にならざるを得ない」課題です。
首相は、それで「人への投資」をくっつけたのだと思いますが、これが意味不明です。
「教育で社員の質を上げよう」なのか、「福利厚生を手厚くせよ」なのか、具体策がないのです。
そんなことを考えているうち、「投資と分配の中身は『給料を上げさせよう』しか無いのでは・・」と思うようになりました。
 
そう考えるようになったのは、首相が「最低賃金」を1000円台に乗せることを目玉政策と考えている節が見えてきたからです。
最低賃金を上げれば、それに連動して正社員の給料も上がるだろうという目論見です。
これって、隣の国の前大統領が行った政策と同じで、アルバイトやパートが主な戦力の飲食業や小売業、介護施設などの経営を圧迫する要素となります。
こうした雇用環境の悪化を防ぐ政策とのセットが求められますが、その具体策は見えません。
 
「人への投資」の根幹は、小学校からの教育制度の改革が大前提だと考えます。
大学への進学率が50~60%になったことで、小学校から高校までの教育が「進学塾」になってしまっています。
その中で、落ちこぼれていく子どもたちは、初等教育さえ満足に習得できていない状態で社会に放り出されます。
いえ、首尾よく有名大学に進学できた子も、合格がゴールになり、その後の成長が止まる子が大半です。
社会に出て、そのことに気づいた人たちは、「これじゃ、アカン」と自ら研鑽を重ねていきますが、残念ながら、それは少数です。
 
管理職時代、多くの部下を指導してきましたが、真に成長したと思える人は5%ぐらいかと思います。
勿論、指導する立場の私の力不足が第一の要因ですが、彼らが受けてきた学校教育の弊害が大きかったことも事実です。
 
私が最初に就職した会社は、コンピュータメーカーでした。
そこの新入社員教育で教官から言われた言葉が、ずっと耳に残っています。
「我々は、君らが受けてきた教育を一切信用していない」
続けて「今、この瞬間から、学校で教育された内容をすべて頭から消せ」と畳み掛けられました。
当時の私は、自分が受けてきた教育を密かに誇りに思っていました。
しかし、教官の厳しい言葉に、その気持はぺしゃんこになりました。
あの時の衝撃は、今でも鮮明に覚えています。
でも、あの言葉がなかったら、慢心した“しょうもない”社会人になったと思います。
 
学習塾と化した学校教育が続けば、日本の未来は暗くなります。
受験名門校出身ながら東大受験に失敗した岸田首相のご意見を伺いたいものです。
 
次回は「科学技術・イノベーションへの重点的投資」を解説します。