中国の思考法を学び、対処する(1)

2020.08.03


香港に対する「国家安全維持法」の強引な導入や南シナ海や尖閣海域での横暴な振る舞いなど、中国の攻撃的姿勢が一段と鮮明になっています。
中国は、世界から批判されることが分かっていながら、なぜ、こんな強引な手法を取るのでしょうか。
それを理解するには、中国の古代思想を学ぶことが有効です。
まずは、2つの思想を考察してみます。
 
その1:中華思想による上下関係で国や人を見る
中華思想とは、今では広く知れ渡っていますが、中国が世界の中心に位置する「主人」で、周辺国はすべて「家来」とする思想です。
この思想で、外の世界もすべて「国内の序列の延長」とみなしているのです。
今回の「国家安全維持法」38条には、海外に住む外国人でも、中国を批判する者は処罰の対象になるという、驚くべきことが書かれています。
つまり、日本人である私が“日本で”中国を批判する言動を行えば、中国が処罰できるということです。
さすがに日本にいる私を拉致し中国で処罰することはできないでしょうが、私が中国や香港に入国したならば、直ちに逮捕・監禁される恐れがあるということです。
諸外国からしたら「ふざけんなよ」ということですが、中華思想から言えば当然のことなのです。
今後、中国と「犯罪人引渡し条約」を結んでいる国は、破棄が増えるものと思われます。
 
その2:孫子の兵法が戦略・戦術の基本
古代中国の兵法書「孫子の兵法」は、私も学び、経営の指南書としていますが、生みの親である中国には脈々と受け継がれています。
自分が弱い立場の時には、徹底した臥薪嘗胆(我慢に我慢を重ねる)で歯を食いしばって耐える。
そのためにはあらゆるモノを利用する。
だから、民族主義だの共産主義だのというイデオロギーも、本気で信奉するのではなく、すべて利用するものであり便法なのです。
かつての日中国交回復もその文脈でなされ、中国は、日本から多額のODAを引き出すことに成功しました。
 
そして、ひとたび他を圧倒する力を得れば、今度は徹底した力の行使に転ずるのです。
孫子が説くところの「積水を千仞(せんじん)の谷に決するが如き・・」です。
つまり、ダムに貯めた水を一気に下流に流すように、全力で攻めよという意味です。
その場合、自分が弱い時の取り決めや条約などは考慮しません。
英国と50年は守ると約束した「一国二制度」など、紙くずになるのが当然です。
 
それは、日本の考えでは「ご都合主義」となりますが、中国の考えでは「現実主義」で正当化されるのです。
ゆえに、「ダブルスタンダードだ」との非難などは、どこ吹く風なのです。
なにしろ、「社会主義市場経済」などという矛盾する概念を平気で吹聴する国ですから、香港問題などは、中国の論理から言えば、当然の帰結に過ぎません。
「一国二制度」なんて、中国の力が弱かった時代の便法であり、最初から守る意思など無かったのです。
 
上記2点は、中国に古来伝わる思想であり、良い悪いで論じても意味はありません。
中国古典を学べば、そのことがよく分かります。
人としての道徳を説く論語と、人を欺く法を教える韓非子を読み比べてみれば分かります。
両者に共通項なんて微塵もありません。
しかし、その両者とも現代まで生き残っている中国の思想体系です。
それが中国なのです。
 
私は中国の悪口を言うつもりはありません。
中国の根底に流れている思想体系を知るべきと言っているのです。
では、どう対処すべきか。
それは次号で解説します。