トランプ vs DEI(その4)

2025.09.17


DEIという言葉が、Diversity(多様性), Equity(公平性), Inclusion(包括性)の頭文字をとった言葉だということを、各回の冒頭で“しつこく”説明してきました。
日本では「当然だろう」と軽く扱われるような言葉ですが、米国では国論を二分する面倒な言葉になっています。
トランプ大統領はその反対派の急先鋒ですが、メインの攻撃対象はDiversity(多様性)です。
つまり移民排撃です。
DEI廃止に対する米国の世論調査では、回答者の過半数が廃止に反対していますが、共和党支持者に限ると反対は30%まで減ります。
だが、政党支持に関係なく企業の60%は「DEIは必要である」と回答しています。
 
世論調査における賛否は回答の責任を問われる恐れがないため、個人個人の心理の奥底を発露した結果になり勝ちです。
しかし、企業はそうはいきません。
対応を誤ると、業績や企業の存続に関わる問題に発展しかねない危険があります。
それゆえ、このような回答にならざるを得ません。
さらに、企業にしてみれば、合法であろうがなかろうが、移民に頼らざるを得ない雇用事情があります。
同様に、女性やマイノリティを差別することも自社の首を絞めることになり兼ねません。
こうした点からも、多くの企業にとりDEIプログラムは必要となっているのです。
 
トランプ支持者の中核である保守白人が反対しても、トランプ政権が不法移民を強制送還しても、またトランプ氏が強硬にDEIを否定しても、アメリカにおける多様性がなくなることはないでしょう。
トランプ政権は、このような事実が自分たちにとって不都合な未来につながると感じ、「保守白人が中心であった、かつての“美しい米国”を取り戻そう」としている人たちが動かしています。
これがMAGAの本質です。
 
こうしたMAGA派の動きに煽られる形でトランプ政権の運営方法がどんどん過激になっています。
大統領令を乱発して州兵まで動かすことは、とても民主国家とは言えない所業です。
当然、無理やり鎮圧される側の反発も暴動化してきます。
先日、保守派の活動家でトランプ氏の熱烈な支持者であるチャーリー・カーク氏が銃撃されて亡くなりました。
左右に関係なく結局は暴力で決着を付けるという米国社会の暗部が色濃くなってきています。
 
好むと好まざるに関係なく、米国は、高度に多様性に富む社会になっています。
指導者である大統領は、そのようなモザイク国家であることを自覚し、一方に偏るのではなく、それぞれが、どう協力して社会を安定的に発展させていくかに注力すべきなのです。
トランプ政権のMAGAが単純な保守白人の揺り戻しや少数白人による支配のためであるならば、米国の未来は絶望的に暗いでしょう。
 
だが、79歳のトランプ大統領は、いまさら自分の意見を変えることはないでしょう(変えられたらスゴイですが)。
ということは、米国の未来は2028年の次の大統領選にかかっていることになります。
「あと3年と3か月」ですが、その前の2026年秋の中間選挙がその前哨戦です。
見守っていきたいと思います。