抑止力という名の軍事力(21)

2022.02.01


日本国民は「外交とは実弾の飛ばない戦争だ」と認識する必要があります。
かつての尖閣諸島の国有化の際、中国では日本製品の不買運動のみならず、日本資本の商業施設が市民に襲撃されたり、中国在駐の企業社員が逮捕されるという事態まで起きました。
こうした挑発は、戦争一歩手前といえる事態ですが、これが中国という国のやり方です。
ですが、私は単純に「中国は悪い」と言うつもりはありません。
こうした行為を政府自らが行ったらマズイですが、官制マスコミに煽られた国民による“自主的”な攻撃は「愛国心」として、政府は黙認可能だからです。
もちろん、中国マスコミは中国共産党の尖兵です。
かつ、こうした仕掛けは共産党のお家芸ともいえる行為です。
そして、これも外交戦術のひとつと考えるのが中国です。
 
さて、欧米各国が中国の人権問題を激しく非難していますが、日本は同調せず静観の姿勢です。
こうした“弱腰”と見える姿勢は、与党自民党の中からも批判が出ています。
しかし、日本政府は、上記のような中国の狡猾な報復を警戒して、国会で中国のウイグル弾圧や香港弾圧を「ジェノサイド」や「人道に対する罪」と欧米のように軽々しく決議できないのです。
米国やEU各国と違い、中国に対する日本の立ち位置は非常に微妙だからです。
 
この問題は複雑なので、まずは純粋な防衛面から考えていきましょう。
尖閣諸島への侵入を常態化させている中国ですが、中国の真の狙いは尖閣諸島の領有ではないと思われます。
(もちろん、可能性はゼロではありませんが・・)
中国は、日本列島を含む第一列島線まで自らの海洋覇権を及ぼそうとしています。
さらに、第一列島線を突破して第二列島線まで海洋覇権を広げることを目論んでいます。
この狙いを露骨に表したのが、昨年のロシアと組んでの日本周回軍事訓練です。
将来的には、ハワイ諸島を線引きとする第三列島線までの覇権を狙っています。
 
しかし、第一列島線に属する日本としては、領海はもちろん、EEZ(排他的経済水域)に防衛ラインを引きたいのです。
つまり、日本と中国の軍事衝突は回避不可能であることを認識する必要があるのです。
このことは、日本国民として理解しなければならない現実の第一歩なのです。
 
中国は、尖閣の領海侵犯を常態化するだけでなく、さらなる軍事挑発を実施してくるでしょう。
それでも、中国が明らかな軍事侵略をためらう理由は3つあります。
その第一は、当然、米国との軍事衝突に勝てる見込みがないことです。
第二は、国際社会からの非難や経済制裁です。
そして第三は、日本の自衛隊に勝てる見込みが立たないことです。
もちろん、全面戦争となれば日本に分はありませんが、米国の介入は必至です。
ゆえに、軍事挑発をするとしても米軍が介入しない“だろう”と見込まれる範囲となります。
しかし、こうした局地戦での中国海空軍の力量は自衛隊に劣ると推定されます。
量ではなく質において、その差が顕著だからです。
 
それでも中国の軍事増強を考えると、油断はできません。
さらにロシアと組むとなると、質における日本の優位は覆ります。
そのことは次号で。