5%賃上げに妥当性はあるか?

2024.04.15


岸田首相は、やっきになって「5%賃上げ」を煽っていますが、その先の「経済の好循環」の青写真はボケたままで、よく見えません
(そもそも、あるのかな?)。
社員が賃上げを喜ぶのは当然ですが、企業側、特に中小企業の経営者の顔色は複雑です。
各種調査によれば、ある程度の価格転嫁ができている企業は4割程度にとどまり、さらに賃上げ率を上回る転嫁ができている企業となると、割合はかなり下がります。
まして、この先も5%賃上げを約束できる企業となると、ゼロに近いのではないかと思われます。
 
物価の値上りが従業員の「給料上がった」という意識を帳消しにしていますが、その従業員を雇っている企業はもっと苦しい状態にあります。
円安が収まらず、原材料費、エネルギー費が想定以上に高騰しています。
大企業など輸出比率の高い企業にとっては円安が追い風になり利益が増え、消費税の還付もあって、賃上げ原資は十分にあります。
しかし、輸出恩恵のない多くの中小企業にとっては大きな負担となっており、その上に人件費の増加がのしかかってきているわけです。
もちろん、生産性の向上や新製品の開発などで、こうした原価・経費の増加を吸収する努力が企業経営に求められますが、そうした投資が必ずしも成功するとは限らず、失敗すればさらに経営を圧迫します。
 
政府は、中小企業向けに「事業再構築」なる補助金や助成金を設けていますが、発表されている内容を読んでも、どうにも意欲が湧きません。
コロナ禍の補助金で大判振る舞いしたつけが回ってきている政府の本音は、「もうカネを出したくない」のです。
もともと増税派である首相は、民間企業に「5%賃上げ」をさせれば、所得税や社会保険料の自然増収が見込めると目論んでいます。
結局、賃上げしても、かなりの部分は、消費税を含めた税収増で吸い上げられる構図となっています。
 
野党やマスコミの追求が自民党のキックバック問題に矮小化されている現在、賃上げに便乗する増税に対する議論がまったく聞こえてきません。
「なぜ5%?」という数字の根拠への追求もありません。
ただ単に「切りが良い数字」で、このくらいなら経済界も納得するだろうという程度の“いいかげんさ”で決めたのだと思います。
つまり、妥当性なんかまるで無いのです。
どうして、野党は、こうした点を突いてこないのでしょうか。
立憲民主党の後ろにいる連合という大手労働組合は、政界における自民党と同じで、自分たちのことしか考えていないのでしょう。
 
一方、人手不足が深刻ですが、「使えない、すぐ辞める・・」社員を雇うことのマイナスのほうが企業にとってはダメージです。
企業規模に関係なく「人手に頼らない経営」を目指していくしかありません
それには、今いる従業員の能力向上と重武装化(この中身が重要ですが・・)に投資を行うことです。
そして「誰でもいいから、とにかく新入社員が欲しい」という気持ちを封印し、
「使えないやつはいらん」のドライな人事戦略に切り替えるべきです。
そうした経営姿勢を貫かないと「5%賃上げの継続」で会社は潰れます。