2つの経済理論の激突(前半)

2023.02.28

【経済・経営】2023

日本経済をどう導くかに対し、両極端の2つの経済理論がぶつかり合い、議論が激化しています。
 
その一方は、「1000兆円以上に膨れ上がった国債でハイパーインフレが起きるのは時間の問題だ。政府歳出を抑え、増税を行い、国債発行を抑えるべきだ」という、緊縮財政理論です。
もう一方は、「国債の大半は円建てで、外国に対する借金ではない。日本は、まだまだ国債を発行できる余力がある。財政出動と減税で消費を喚起すべきだ」という、積極財政理論です。
 
TVやNetで露出の多い経済評論家も、この二派に分かれて、議論が沸騰しています。
財務省は、もちろん緊縮財政派の旗頭です。
一方の積極財政派はリフレ派と呼ばれ、日銀の黒田総裁や故安倍元首相が牽引役でした。
 
理論的にどちらが正しいのかという判定には、実は、何の意味もありません。
なぜなら、どちらの理論も間違いではないからです。
判断すべきは、現在の経済状態を好転させるには、どちら寄りの政策を採るべきかの一点です。
 
その時によく聞くのは、国家経済を家計や企業経営に例えることです。
例えば、「膨れ上がった今の国債は、国民一人当たり1000万円の借金だ」みたいな言い方です。
つまり「国債=借金」という単純化で、財務省の決まり文句です。
家計で、収入を超える支出を続ければ、当然赤字になり、やがて破産の憂き目を見るでしょう。
収入を増やすのは簡単ではないので、支出を抑えるのは当然です。
 
では、企業の場合はどうでしょうか。
赤字が続き、借入も社債発行も無理になれば、当然、倒産です。
そうならないように無駄な支出は抑えるべきですが、第一に考えるべきは、収入(売上)を増やす算段です。
それ以外は、企業の業態によって対策は異なります。
他社から商品やサービスを仕入れて販売する業態であれば、仕入価格の低減に取り組むべきですが、それは時間稼ぎにすぎません。
新たな商品の発掘や売上増進のため、投資を行うことが第一です。
そのための借金なら積極的に行うべきです。
 
開発型の業態であれば、選択集中理論に基づいた投資がカギです。
目が出ない開発は諦め、高い利益率が見込まれる開発に集中すべきです。
そのための手元資金が不足であれば、借入や債権発行による調達を考えるのは当然です。
そこが家計とは大きく違うことです。
 
では、国の場合はどうでしょうか。
無駄な歳出削減は必要ですが、これは家計や企業と同じです。
収入を増やす算段は企業経営に似ていますが、決定的に違うことがあります。
それは、通貨発行権を持ち、無尽蔵に近い債権(国債)の発行が可能なことです。
ただし、それが可能な国は限られます。
国債の大半が国内消化できる国だけです。
 
日本は、そうした国債発行で投資ができるのですから、このような国の経済運営は楽なものです。
ただし、やはり条件はあります。
投資対効果が10~20年内に2倍以上になることが期待される分野への投資を主とすることです。
つまり、社会の購買力が増すことへの投資であることが必要です。
 
もうひとつ大事なことがあります。
国民の購買力喚起には減税が必要で、増税は逆効果となり投資効果を打ち消してしまいます。
 
ここまで書くと、私は積極財政派と受け取られるでしょうが、そう単純ではありません。
それは、後半で。