中東に平和は来るのか?

2025.10.16


2023年10月に起きたハマスによるイスラエルの音楽フェスへの襲撃テロから始まったイスラエルの怒涛の攻撃とハマスの反撃の応酬が約2年も続き、ガザ地方は6万人以上の死者を出し、住居の大半は“がれき”の山と化しています。
 
この状況の中で、イスラエルの猛攻を受けたハマスの主要軍事力はほぼ壊滅状態になっています。
こうした事態を見計らった米国トランプ大統領がイスラエルを促す格好でハマスとの停戦合意が成立しました。
このあたりのトランプ大統領の判断は的確といえます。
この合意でイスラエルの攻撃は止まり、ハマスによる人質20名が13日に解放されました。
しかし「第二陣で残る28名の人質の解放」と言われていましたが、すでに28名全員が死亡していることが判明しました。
その遺体を返還するとのことですが、遺体の状況は判明せず「全部は無理」との報道があります。
2年前の襲撃で拉致された人質は100名以上と言われています。
この先、イスラエル側で新たな怒りが起こることが懸念されます。
そうなると、逆にイスラエルに拘束されているパレスチナ人の囚人の解放がスムースに進むかが懸念されます。
 
仲介者のようになったトランプ大統領は鼻高々に「ガザでの戦争は終わった」と述べました。
しかし、これで本当にガザが平和になるかというと、そうはいかないでしょう。
双方の恨みは深い怨念となって残り、火種はくすぶり続けます。
すでにハマスはイスラエル軍が駐留していない地域に戻りつつあり、再び統制を取り戻しつつあると報道されています。
また、南部地域では「人民軍」と呼ばれているハマスに対抗する組織があると言われています。
イスラエル軍がこの「人民軍」を支援しているとの報道もあり、事態は複雑化の様相を強めています。
 
停戦の継続を監視するための国連軍の派遣が望まれますが、常任理事国が1国でも反対すれば組織することが出来ません。
ロシア、中国がトランプに歩調を合わせるはずもなく、それは夢物語に過ぎません。
米国が単独、あるいは欧州を引き入れて停戦監視軍を組織するとの報道が出ましたが、米国政府は否定しています。
 
昨年の春の停戦も、すぐに崩れてしまいました。
ゆえに今回も、このまま平和になると思っている人は少ないのでは・・。
イスラエルには自制を続けて欲しいものですが、そもそもの事を起こしたのはハマス側であり、ネタヤ二フ政権にとっては「ハマスの殲滅しか道はない」という意識に変わりはないと思われます。
 
少し前に、トランプ大統領が猪突に「パレスチナ人150万人をエジプトなどに移住させる」という案を出しましたが、賛同する国はありません。
移住先として名指しされたエジプトなどは即座に「No」を表明しました。
この案は、トランプ大統領の娘婿のクシュナー氏がイスラエルのネタヤニフ首相との会談で提案したと言われていますが、中東問題を自分の商売に利用する気持ちが露骨過ぎて、反発を生んでいます。
しかも、住民を移住させた後のガザ地区を「高級リゾート地」に造り変え、大統領引退後の大儲けを企んでいるとまで言われています。
トランプ大統領本人が、そこまでは言っていませんから、フェイクニュースの範疇を出ませんが、「あり得るかも」と思わせてしまう危うさを感じさせてしまっています。
 
あまり品がよくありませんが、こんな言葉があります。
「肥溜めの蓋をどんなに綺麗に磨いても、中身は“くさいもの”が詰まっている」
どんなに蓋を磨いて綺麗にしても(要するに、国家が法律や規則を整えても)、中身は糞尿という“くさいもの”が詰まったままであるという意味です。
つまり、「糞尿を浄化しない限り(国民の意識を変えない限り)、中身(国家)は綺麗にはならない」ということです。
 
中東は、2000年以上に及ぶ人々の怨念が詰まったままの状態です。
世界中の国が一致協力して、この糞尿自体を浄化しない限り、平和が来ることは無いのです。
こんな言い方をしてはいけないのでしょうが、簡単には打開策が思い浮かびません。
その意味では、荒唐無稽なトランプ案も一考の余地があるのかもしれませんが、とても賛同を得ることは無理ですね。
さらに2000年の時が流れ、世界が統一される日まで、この地に平和は来ないかと考えると、思考が停止してしまいそうです。