日本のトランプ対策は大丈夫か?
2025.02.17
「石破首相はトランプとの会談で厳しい要求を突き付けられる」という事前報道が多かったことへの反動のような好意的な事後報道が続いています。
国民民主党の玉木氏などは「80点」と持ち上げましたが、「軽いな~」としか言いようがありません。
これは、石破首相にではなく玉木氏に対してです。
本題に戻ります。
この会談後すぐに、トランプ大統領は「相互関税25%」を打ち出しました。
日本政府は慌てて「日本は例外にして」と泣き付いた格好ですが、トランプ大統領の真意をまったく理解していない外交音痴ぶりに、この先が心配になりました。
トランプ大統領は、関税が最大の武器と固く信じています。
4月2日から輸入車に対する関税を課すと発表したように、その考えはまったく揺らいでいません。
この関税の税率や対象国を明らかにしていないので、日本政府は除外に向けて米国に働きかけるとしていますが、どうでしょうか。
メキシコを経由する数量を含めれば日本車の輸入量が圧倒的に多いという現実から、望みは乏しいのではないかと思います。
そもそも、輸入車に関税を課せば米国の消費者が米国車を買うとは思えず、結局、関税の負担は米国民が負うことになります。
日本は静観していれば良いのです。
石破首相の訪米成果が幻に過ぎないか否かが分かる事例ですので、これからの経緯を追っていきます。
もう一つの課題が、日本製鉄によるUSスチールの買収問題です。
両社はこの買収に合意していますし、従業員の過半も賛成しているようです。
反対しているのは、全米自動車労連と保守系の議員ですが、アメリカ・ファーストを掲げるトランプ大統領としては買収に賛成するわけにはいきません。
石破・トランプ会談では「買収ではなく投資だ」という意味不明な合意(?)になりましたが、石破首相は、果たして「その後の戦略」を持っているのでしょうか。
たぶん、考える力も無いのだと思います。
その後、トランプ大統領は「誰も過半数の株は持たない」と、第三者(たぶん、米国の会社)の株取得を促すような発言を行っています。
さらに、以下のような意味不明な発言も行っています。
「USスチールは今かなりいい感じだ。だからUSスチールが日本や他の誰かと取引するのを望まなかったんだ」
そして、来月発動予定の鉄鋼とアルミニウムへの25%の関税について「これでUSスチールは新たな活路を得た」と妙な自画自賛を行いました。
要するに、米国企業なので関税がかからないUSスチールの製品の価格競争力が上がり、同社は自力再建できるという認識のようです。
その上で「だから、USスチールは日本と取引するのを望まなかったんだ」という明確なウソまで言っています。
しかし、トランプ大統領がなんと言おうと、同社の苦境は価格面だけでなく技術力の劣化が招いたことであり、それは関税では埋められません。
トランプ大統領も、そこは分かっていて「買収ではなく投資だ」と得意のディール(取引)で、日本からカネと技術の両方を取ろうと目論んでいるのです。
石破首相が卓越した戦略眼の持ち主ならば、さらに逆手を取ることが期待できるのですが、どうでしょうか。
これからの政策を見て判断することにします。
それより問題は、安全保障問題です。
「米軍駐留費の負担を増やせ、米国製の武器を買え」の要求が次から次へと出てくることが予想されます。
そこを、どう上手に切り抜けていくのか、首相の真価が問われます。
ヒントは「トランプ大統領は商売人であって、軍事に関しては素人」という点です。
ゆえに、軍事面には足を踏み込みたくない意思がはっきりと見てとれます。
その意味では、たしかに「平和的な」指導者といえます。
以上を俯瞰すると、案外組みしやすい相手だなと思います。
だから、石破首相、びくつかないで、頑張ってください・・