高市政権へ期待すること

2025.11.04


トランプ大統領の過剰とも思える誉め言葉は、単なるリップサービスを超えていました。
大統領と一緒に乗り込んだ米空母での高市首相のパフォーマンスに対し、一部から批判のコメントが出ていますが、大統領のまなざしは自分の娘を見るような穏やかさでした。
それだけでも、この初顔合わせは成功だったといえるでしょう。
批判者は、空母内でこぶしを突き上げ米兵の喝さいを浴びる姿を「はしゃぎすぎ」と批判しますが、私は単純に「かっこいいな」と思いました。
あれが前首相だったら絵にならないでしょうが、今までにない新鮮さを覚えました。
 
と、新首相を持ち上げるのは“これくらい”にして、本題に入ります。
首相としての真価が問われるのはこれからです。
首相は、国会の所信表明で「物価高対策が1番」と明言しましたが、現下の経済情勢を考えれば、それは当然です。
まずは臨時国会開催中の「ガソリンの暫定税率の廃止」ですが、これには野党も反対できないので、年内の廃止でほぼ決まりです。
廃止の財源には1兆円が必要ですが、税収の上振れだけで簡単に吸収できるので、財務省も騒がないでしょう。
でも、1リットル当たり25円ガソリンの価格が下がるインパクトは大きいです。
給油するたびに「おっ、下がった」と実感し、「今まで、こんなに上乗せ税金を取られていたんだな」の感情が湧くでしょう。
当然、輸送や物流への大きな支援になるので、物価高騰へのブレーキ効果も期待されるところです。
 
ここまではすんなり行くでしょうが、次の関門は補正予算です。
新政権は、おそらく、この補正予算単独で考えるのではなく、来年度予算の増額への呼び水になる策を盛り込むものと推測します。
それ以上に切望するのは、社会保険料の引き下げです。
個人も企業も、この負担には相当に苦しめられています。
弊社もそうですが、多くの企業は頑張って賃上げし、ボーナスの支給額も増やしています。
しかし、支給額上昇のかなりの部分が税金と社会保険料に吸い上げられてしまいます。
受取る従業員も“がっかり”ですが、支給する企業側の“むなしさ”は、それ以上です。
高市首相には、こうした国民と企業のマインドをなんとかリセットすることを切望します。
 
ただ、自民と維新の二党では過半数に届かないので、無所属や参政党、日本保守党などの勢力の賛成を得る必要があります。
また、予算内容によっては国民民主党も賛成に回る公算が大きいと思われます。
 
ここまで長く続いた日本経済の低迷を招いた主犯は、財務省および、その主導を許してきた国会です。
その点で、高市首相が財務省への抑え役として片山さつき氏を財務大臣に任命したのは理にかなっているといえます。
片山氏は、財務官僚として主計官まで務めるなど、在職期間は23年に及ぶ財務通です。
しかし、政治家になってからは、2009年の総選挙で小選挙区3位と惨敗するなどの辛酸をなめています。
その後、安倍元首相に見出され頭角を現したことが高市首相につながり、今回の抜擢に繋がりました。
官僚出身者らしい冷徹な発言と独特のヘアスタイルでアンチも多い人ですが、能力自体は非常に高い人であることは確かです。
 
今回、財務大臣だけでなく内閣府特命担当大臣(金融担当)も兼務することで、高市首相の期待度が相当に高いことがうかがえます。
今後、困惑しているであろう財務官僚および彼らと組んできた政治家たちが反撃に出るのか、それともおとなしく政権に従うかがカギとなります。
その最初の帰趨は、来年度予算の内容で判明します。
 
一番分かりやすいのは国債発行額でしょう。
高市首相は、防衛費のGDP比2%達成を明言していますが、「財源は?」と問われたとき、「財源は経済成長です」と言い切りました。
ということは、GDP比2%を堅持しながらの経済成長で、防衛費の絶対額を増やしていく算段ということです。
ただ、現在の経済情勢において、どのような政策で成長を牽引するかの具体策はまだです。
首相は積極財政派と言われていますので、成長の呼び水としての国債発行も辞さない覚悟と受け止めました。
今後の具体的な政策発表を期待します。