抗日戦争勝利80年
2025.09.17
9月2日、中国は「抗日戦争勝利80年」と題して、親中の国々を招いて軍事パレードを実行しました。
ひな壇に習近平、プーチン、金正恩の3人が並んだ構図は、戦前の三国同盟(日独伊)を彷彿させる光景でした。
しかし、そこには中露が切望したインドのモディ首相の姿はありませんでした。
インドは、ウクライナ戦争で疲弊しているロシアから原油を安く買い、第三国に転売して巨額な利ザヤを得ています。
また、上海協力機構を通じて中国とも一定の距離を保つという多極主義に徹しています。
一方、貿易摩擦が激化している対米関係はインドにとって頭の痛い問題で、日本との関係強化で乗り切る策を模索しています。
インドの政府関係者は、中国の軍事パレードを「中国が対日戦勝を祝う行事」と認識していると発言し、「抗日」の言葉を避けました。
さらに「インドには日本を傷つける意図はない」とした補足説明をわざわざ付け加えました。
その言葉どおり、モディ首相は、訪中前に日本を訪れ、半導体、重要鉱物、医薬、AIなどで日本との新しい枠組み作りを協議し、新幹線にも試乗しました。
その直後の訪中で、SCO(Shanghai Cooperation Organization=上海協力機構)の首脳会議には出席しましたが、軍事パレードには参列しませんでした。
間違いなく日本への配慮を行動で示した形であり、中国の狙いは崩れたと言ってよいでしょう。
戦後80年が過ぎた現代でも、ロシアは対独戦勝利を、中国は対日戦勝利を声高に叫んでいますが、
100年後も200年後も続けるつもりでしょうか。
そもそも、大陸の戦場で日本と戦ったのは中国共産党ではなく、今は台湾に逃れた国民党です。
しかも、当時の戦況は日本軍が圧倒していました。
終戦の年でも、中国軍は重慶まで追い詰められていました。
兵法研究の武岡先生は、当時は若手将校として、大陸の最前線で中国と戦っていました。
そこに、日本の降伏という青天の霹靂のような事態が生じたわけです。
部隊内では「勝っているのに、なんで降伏なんだ」の空気だったそうです。
中国戦線は、太平洋戦線で米軍と戦っていた私の父たちとは真逆の状況だったということです。
つまり、日本は米国に負けたのであり、中国に負けたわけではなかったのです。
現代でも、「中国に負けた」と思っている日本人は皆無に近いのではないでしょうか。
だから、習近平政権は、ことさら派手に「抗日戦勝利」と叫ぶわけです。
それだけではありません。
「抗日」という中国のプロパガンダである歴史の正統性を利用して、現代では「アメリカの同盟国」たる日本を攻撃し、間接的にアメリカを攻撃している「気分に浸っている」わけです。
大掛かりな軍事パレードの実施も、国民に対し「中国はアメリカと対峙する能力を持っているぞ」というメッセージを発信しているわけなのです。
もちろん、次の戦争のターゲットは台湾であり、台湾併合は諦めていないという姿勢のアピールです。
実際、軍事パレードに登場した極超音速ミサイルや新型の長射程弾道ミサイルなどは、台湾有事の際に台湾周辺への展開が予想される米空母打撃群や日本の基地に対し迅速に打撃を与えられるという宣伝に他なりません。
日本は、このような宣伝戦は無視しつつ、淡々と防衛力の強化を進めることが一番です。
中国にとっては、そうした姿勢が一番いやなはずですから。