アラブ諸国の本音

2023.12.15

【国際・政治】2023

中東ガザでの犠牲が増え続ける中、攻撃を続けるイスラエルへの非難が高まっています。
たしかに、TVやネットでの悲惨な映像を見れば、それも頷けます。
しかし、表面的な情報及び人道的な基準だけで判断すると、ことの本質を見誤る恐れがあり、紛争の解決からは遠のくばかりです。
 
そうは言っても、的確な情報はそう簡単に入手できるものではなく、また、その情報の真偽を見極める難しさがあります。
ならば、どうする・・
正しいと思われる情報も、その内容をよく調べていくと「?」と思うことが浮かび上がってきます。
今回のガザ侵攻の情報でも、そうした「?」が浮かび上がってきます。
その一番の「?」は、アラブ諸国の動向です。
 
既にイスラエルを承認しているエジプトや承認しようとしていたサウジアラビアは、公式にはイスラエルを非難していますが、非難だけです。
また、トルコ、UAE、ヨルダンなどの中立的な国も、イスラエル非難だけで具体的な行動を取る姿勢は見せていません。
つまり、イスラエルの報復攻撃は行き過ぎとしつつも、「ハマスにも困ったもんだ」が本音なのです。
こうした本音の背景にあるのは、自国政治への跳ね返りの恐れと、先行きの経済に対する不安です。
 
湾岸諸国の経済を潤してきたオイルマネーの未来は、温暖化阻止という国際的な流れだけでなく、資源枯渇の恐れや代替エネルギー手段の進歩により先細りが確実です。
将来的には、日本などが石油を含めた海底資源の採掘に成功する可能性もあり、湾岸諸国の先行き不安は増大する一方です。
こうした未来を考えると、アラブ諸国は欧米側と事を構えたくはないのです。
イスラエルは中東に位置していますが、外交的には欧米に属していますから、アラブ諸国の多くはイランやシリアなどのような明確な反欧米国家と同じ道は歩めないのです。
 
もう一つ、日本を含めた先進諸国とアラブ世界とで価値観が大きく異なるのは、人の命の重さです。
先進国では死刑囚の人権すら尊重されますが、アラブ諸国は「すぐに処刑」が当たり前です。
しかし、それを「野蛮だ」とか「人権無視」と非難しても意味はありません。
先進国の国民も、実は知っています。
人権や命が普遍的な価値とはいえず、人の命にも等級があることを。
 
辛いことですが、紛争や戦争を止めるのは、人権や命の重さではなく「利害の損得だけ」と認識して行動するしかないのです。
「アラブにはアラブの信義や利害」があるのです。