台湾有事の現実性
2025.08.18
7月に、陸上自衛隊が北海道で地対艦ミサイルの発射訓練を行いました。
国内での実射訓練は初めてということで、明らかに台湾有事を想定した訓練です。
防衛省は、日本周辺の情勢を「波高し」と言うべき状態にあると分析しています。
様々な識者がSNSなどで台湾有事のシナリオを解説しています。
共通しているのは、習近平国家主席の3期目の任期最終年となる2027年に侵攻を行うのではという見方です。
たしかに習近平主席は、憲法で「2期10年」となっていた主席の任期を、憲法改正して3期目に入っていますが、その改正理由を「台湾開放」と明言しています。
その期限が2027年なので、2年後が危ないと言われているわけです。
問題は、中国が2年後までに台湾進攻を行うだけの軍事力を整備できるかという点にあります。
現段階でも、台湾軍には単独で中国軍の侵攻を阻止できる力はありません。
しかし、中国が読み切れないのは、日本および米国の介入です。
もちろん、日米両軍が全力で台湾を軍事支援した場合、中国軍の敗北に終わる可能性が大です。
米国単独はもちろん、日本が単独で支援する場合でも中国軍の侵攻は難しくなるでしょう。
日本の石破政権は親中政権ですから、中国としては、この政権が長く続いて欲しいと思っているのは確実です。
おそらく一番の親中派と言われている岩屋外相を通じて、日本は介入しないようにと働き掛けをしているはずです。
ゆえに、自民党で一番強硬意見と言われる高市氏の登場は何としても阻止したいということです。
大事なことは、親中派であろうがなかろうが、「日本は武力による台湾進攻を許容しない」という明確な意志を内外に示すことです。
中国に対してそうした姿勢を強く打ち出せるのであれば、むしろ親中派政権のほうが有効といえるかもしれません。
そして、読みにくいのが、米国トランプ大統領の考えです。
中国は、大きなディールを持ち掛ければトランプ大統領が乗ってくるのかが全く読めていません。
最近、台湾の賴清徳総統の米国立ち寄りを拒否したように、トランプ大統領は台湾寄りとは言えないようですが、半導体王国の台湾を中国が手中に収めることを容認するとは到底思えません。
つまり、「軍事介入をしたくないが、中国が台湾を手中に収めることは容認しない」という考えだと思います。
さらに、トランプ大統領は「中国を世界経済の枠組みから排除しないと世界は壊れる」と思っている節があります。
こうした姿勢は中国側に伝わっていて、人民解放軍の弱腰に繋がっていると言われています。
近代の軍隊は、戦争を継続するための経済面を前面装備の充実以上に重視しています。
近代戦は完全な消耗戦になっていて、それを支える経済が崩壊しては戦闘の継続ができなくなっているのです。
こうした諸情報を重ね合わせて考えると、台湾有事の可能性は相当に低いと思われます。
ただし、戦争は偶発的な衝突から一気に拡大するという側面を持っています。
つまり、「引くに引けない」という事態です。
80年前の日本が、まさにそうした状態で「一か八か」の戦争に踏み切ったわけです。
陸軍将校だった父は、真珠湾攻撃の報に、同僚の将校たちと「なんてバカな」と言い合ったと語っていました。
日本は、中国の不安な思惑の目を丹念につぶしていく努力を続けていく必要があります。