幼児化する中国

2023.05.15

【国際・政治】2023

3月に日本に着任した中国の呉江浩大使ですが、4月28日の会見で、台湾情勢を巡り「中国の純内政問題を日本の安全保障と結び付けることは極めて有害だ。日本の民衆が火中に連れ込まれることになる」と、脅迫ともいえる発言を行いました。
「台湾有事は日本有事」との報道に対する反発ですが、あまりにも過激で幼稚な発言に呆れるばかりです。
それに対し、林芳正外相は5月10日の衆院外務委員会で、外交ルートを通じて「極めて不適切だ」と抗議したことを明らかにしましたが、あまりに遅い抗議に、逆の意味で、こちらも呆れるばかりです。
林外相が親中派と揶揄されるのも、こうした態度が原因のひとつなのでしょう。
 
呉駐日大使の発言の少し前の4月21日には、中国の秦剛外相が「台湾問題で火遊びをする者は必ず火で焼け焦げて死ぬだろう」と発言しました。
こちらは、韓国の尹錫悦大統領が「国際社会と共に力による台湾の現状変更に反対する」と発言したことに反発した脅迫発言です。
(どうも中国は火遊びが好きなようで、昔からこうした火を使った脅迫発言が多いように感じます)
 
その前日の4月20日には、中国外交部の“いつもの”報道官が韓国に対し、「他人からの口出しは容認しない」との脅迫発言をしましたが、すかさず、韓国外交部は「中国の品格を疑わせる事態だ」と反発しました。
この言葉どおり、こうした“子供の喧嘩”レベルの発言を繰り返す最近の中国の幼児化が心配です。
子供の喧嘩も口汚い罵りから、激昂して殴り合いになることがあります。
さすがに国家間で「それはないだろう」と思っていましたが、ロシアのウクライナ侵攻により「あるかも・・」という意識にさせられた方も多いと思います。
台湾侵攻も尖閣侵攻も「ロシアの二の舞いになるぞ」と中国に自制を促す意味から、南西諸島の防衛強化が欠かせなくなってきました。
 
また、中国による偵察気球による米国の領空侵犯と撃墜が話題となりましたが、その後、日本を含む世界40カ国以上の領空を侵犯していたことが明らかになっています。
さらに、全世界50以上の国で100カ所以上の秘密警察署を極秘に運営していることまで明らかになっています。
 
こうした行為を中国政府が続けてきたことで、一般の中国人の意識も高慢になり、世界のあちこちで、傍若無人な振る舞いが目立つようになってきています。
その一つに、パキスタンで起きた騒動があります。
パキスタン北部の水力発電所建設に携わる中国人技術者の男性が、イスラム教を冒涜したとして告発された事件です。
この中国人男性は、イスラム教のラマダン(断食月)期間に工事の進行が滞ったことに腹を立て、「遅い!」と言って作業員たちと口論になったということです。
その口論の中で、彼はアラーの神や預言者ムハンマドを侮辱するような発言を行ったのです。
これに怒った地元住民ら数百人が抗議に集まり、武装警察が出動する騒ぎにまで発展しました。
抗議参加者らは中パ国境につながる道路を一時封鎖したといいます。
暴動拡大を懸念した地元当局は、中国人男性を拘束し、告発に基づく捜査を進めるとしています。
 
私もパキスタンの現場を担当したことがありますが、国民の信仰心は絶対で、最大限に尊重すべきと肝に命じていました。
共産主義は「宗教アヘン論」を唱えているので、中国国民は、宗教を信じる人を下賤扱いする傾向が強いようです。
共産主義がひとつの宗教といえますので、他宗教を認めない心境が生じるのでしょうね。
 
また近年、パキスタンでは拡大する中国権益に対する国民の反発が強まっており、こうした住民感情の刺激が両国の不協和音に発展し出しています。
慌てた中国は、外務省報道官を通じて、「中国政府は在外中国人に対し、現地の法律、規制、慣習を尊重するよう求めている」と強調しました。
しかし、これも対外的なポーズに過ぎず、こうした不都合な事件が中国で報じられることはほとんどありません。
習近平政権が続く限り、政府のみならず、中国国民の幼児化も止まらないものと思われます。
日本は安全保障だけでなく、経済でも距離を取るべきと考えます。