ウクライナ戦争は、時代を逆行させた戦いとなっている
2024.03.04
ウクライナが、総司令官をザルジニーからシルスキーに変えました。
シルスキーは、バフムトでの撤退が遅れたことで、ウクライナの損害を増やしたと言われていますが、今度はどのような戦術を採るのでしょうか。
この戦争は、想定された近代戦とはほど遠い、第1次世界大戦というか明治の日露戦争の時代に戻ったような戦いになっています。
双方の陣地に縦横に掘られた塹壕の映像、歩兵の突撃などは、昔の映画を見ているような錯覚に陥ります。
もちろん、映画と違い実際に多くの人命が失われているので、軽々しいことは言えませんが・・
そして、何よりも重要になっているのが両国の兵站(補給)能力です。
昨年末、米国の下院がウクライナへの追加支援を否決したことで、ウクライナは明らかに砲弾不足に陥っています。
ドローン攻撃でこの不足を補っていますが、それにも限度があります。
秋の大統領選を睨んだ共和党の妨害工作といえますが、民主主義国家の弱点が露呈したものと考えることができます。
一方のロシアは、西側の経済制裁を喰らいながらも、「うまく対処」して、弾薬の生産量はむしろ増えています。
もちろん、中国、北朝鮮、イラン、ベラルーシなどから相当な軍事支援を受けてのことですが、この点でも、西側の支援は不足しています。
EU各国の足並みは揃わず、米国は党派対立で支援に陰りが出ています。
日本は憲法の縛りで武器援助は出来ず、民生援助が精一杯です。
もどかしいですが、法治国家である以上、法律を変えることが先決となります。
西側の誤算は、ロシアという国がここまで「人命を粗末にする国」との認識の欠如です。
ウクライナ陣地に最初に突撃するロシア兵は、ほぼ全滅します。
それでも、後から後から同じような波状攻撃を掛けてきます。
100人が突撃し90人が死んで、10人が次の塹壕なり掩蔽物に取り付きます。
同様の攻撃を10回繰り返すと、次の塹壕などに100人が溜まります。
そして、次の前進攻撃が始まります。
また90人が死んで、10人は少し前進したところに取り付きます。
こんな攻撃を繰り返し、少しずつ前進していくのです。
ウクライナ軍は、こうした兵士の命をまったく顧みない狂気の人海戦術への対抗が出来ず、膠着状態から押され気味となり、現在の最激戦地アウディーイウカも危うい状況となっています。
この事態は、米国バイデン政権の失態といえます。
ウクライナは昨年の反攻作戦時、必須となるF16戦闘機の供与を強く求めましたが、米国は渋りました。
反攻開始直前にようやくOKを出しましたが、パイロットの訓練に長期間を有する戦闘機の投入が間に合うはずはありません。
制空権のないままの反攻作戦の成功が難しいことは分かっていたはずなのに・・ですが、明らかにロシア軍の狂気じみた地上戦能力を軽視した米国の戦略ミスです。
1939年、日本と当時のソ連は満州のノモンハンで軍事衝突しました。
この時撃破したソ連軍の戦車は、外からカギが掛けられ中からは開けられないようになっていたと言われています。
これが、ロシアの人命に対する考えであり、甘く見ることは危険なのです。
戦局の劇的な転換は、もはやF16による制空権の確立とその支援を受けての反撃以外には無いと思われますが、米国の腰の引け具合が問題です。