GDPの順位の逆転
2023.11.30
【経済・経営】2023
長らく世界第3位を保ってきた日本の名目GDPが、ドイツに抜かれて4位に転落すると予想されています。
国民の多くは「えっ」となり、次に「本当?」と思い、「どうして?」となっているでしょう。
たしかに、私もその思いは同じですが、「どうして?」の答えは単純です。
名目GDPとは、実際に市場で取引されている価格に基づいて算出される経済指数です。
つまり、為替動向や物価変動に左右される指標であり、円安・ドル高基調が続いていることで日本のドル換算のGDPはかなり目減りしています。
これが第一の要因です。
さらに、ドイツは物価上昇率が高いことで名目GDPを押し上げています。
今後も日本の物価上昇率が3~4%前後で推移するという見込みに対し、ドイツは昨年後半で10%超であり、今年8月までは6%以上で推移していて、物価高が続いています。
日独のこうした物価上昇の違いが第二の要因です。
2005~2021年まで続いたメルケル政権時代、失業率は11.3%から5.2%へと向上し、成長率も安定的に推移して好調な経済状況が続きました。
それを支えたのは、中国という巨大市場を得たことと、ロシアからの天然ガスの大量購入という安価なエネルギー源の確保にあります。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻は、その基調をすっかり変えてしまいました。
海外企業がドイツに対する直接投資を大幅に減少させているだけでなく、ドイツ内の支店や工場の閉鎖を激増させています。
当然ですが、ドイツ企業の国内投資も大幅に減少し、その結果、投資の純流出はGDP比で-4%に迫っています。
この数字、「たいした減少ではない」と思われるかもしれませんが、この減少が今後10年は続くと考えてみてください。
34.5%減となる計算です。
-4%が、とんでもない数字だということが分かるでしょう。
実際、バブル崩壊から近年に至るまでの日本は30年のデフレ不況を味わいました。
この間、日本経済は実質半分以下に落ち込みました。
もし、この30年間、逆に2%成長が続いたならば1.8倍となっていて、ドイツに抜かれることはなく、第2位の中国の経済崩壊が本格化すれば、逆転することが可能だったはずです。
こうした「仮定の話」はこれくらいにして、これからどうなるか、そして「どうするか」が大事です。
ドイツは、日本が経験したような産業の空洞化が進み、失業が増え、経済がさらに落ち込むでしょう。
それを防ぐには、まず「再生エネルギーを主にする」というエネルギー政策を転換し、原子力発電に回帰することです。
当然、連立を組んでいる「緑の党」の強硬な反対に合い、政権運営が行き詰まるかもしれません。
ならば、選挙に訴えて、国民に実情を開陳し、審判を仰ぐことが民主主義の王道です。
日本にとっても「対岸の火事」ではなく、エネルギー問題は最大の課題です。
折しも、COP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)がドバイで開催中ですが、科学的根拠に乏しく、各国の政治的思惑に翻弄される取り決めに単純に従わないことが正解です。
「CO2を削減すれば温暖化を防げる」という短絡的な発想は、かえって危険です。
様々なエネルギー源を組み合わせ、かつ二次汚染に繋がらない技術の確立が“まず必要“なのです。
幸い、日本には、石炭火力発電所から出るCO2の固定化技術や自動車のハイブリット技術など、卓越した技術があります。
こうした技術に磨きをかけ、世界に供給することが日本の役割と認識すべきです。