2019年5月31日号(経済、経営)

2019.06.03

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2019年5月31日号
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発行日:2019年5月31日(金)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2019年5月31日号の目次
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★政府が旗振る「働き方改革」、ここが変だよ
◇高齢者と自動車運転
◇温暖化のもうひとつの側面
◇現代貨幣理論
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
嵐が通り過ぎたようなトランプ米大統領の3泊4日。
良い悪いは抜きに、強烈な印象を日本国民に与えた4日間でした。
同時に、大統領夫妻と通訳なしで話される天皇・皇后の姿から、皇室が外交の武器になることを国民にまざまざと認識させた効果もありました。
「大成功」と上機嫌の安倍首相に対し、「借りを作ったことで今後の貿易交渉が不利になる」といった野党やコメンテータの非難が散見されますが、どうでしょうか。
「貸しだの借りだのと、セコいことを・・」とだけ、コメントしておきます。
 
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┃★政府が旗振る「働き方改革」、ここが変だよ            ┃
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政府が旗を降る働き方改革、「何か変?」と思うのは私だけでしょうか。
いま進められている改革は、「時間外労働の上限規制」「有給取得の義務化」「同一労働同一賃金」
といった、働き方を画一化するメニューばかりです。
「全国民は一律の働き方で働くべき」ということが政府の方針なのでしょうか。
これでは、ほとんど共産主義国家ではないかと言いたいです。
 
そもそも「正社員」という存在は、「いずれ経営幹部になる社員」という意味付けだったようです。
だから、正社員は勤務時間で給料をもらうのではなく、経営に寄与する成果で給料を得るという仕組みだったのです。
その代わり、病気で休んでも給料はもらえるという安心感が付いていたのです。
こうした正社員の働き方が働く本質だと思うのですが、ものごと全てに「光と影」があるように、影も見なくてはなりません。
 
勤務時間にとらわれずに働く正社員の存在は、人件費が一定で安定し、企業にとって都合が良いとして、経営幹部候補でない従業員にも広げる動きが加速し、いつしか現在の雇用形態になっていったのです。
そして、それが「サービス残業」や「過労死」の温床になっています。
 
経営幹部を目指す社員にとっては、働くことは自分の意志ですが、そうでない社員にとっては「働かされている」という意識が強くなります。
つまり、そうした社員は、本来の「正社員」ではなく「時間労働者」なのです。
それなのに、長時間労働を強いられれば、心身ともに疲弊していきます。
やがて弱い社員から脱落し、心身の障害を起こし・・という悲劇的な結末を引き起こしていくわけです。
 
以前のメルマガにも書きましたが、私は新入社員の時にタイムカードを押さないという問題社員でした。
勤務規定違反であることは承知していましたが、「時間労働者」になることを拒否する意思表示だったのです。
会社は困ったようですが、クビにはせず、私の働き方を暗黙で認めました。
以来、自分の立場が変わっても、「会社と自分は同格」との意志で働いてきました。
 
しかし、マスコミやコメンテータたちの多くは「良いか悪いか」の二元論で批判を展開します。
そして、常に「企業は悪で、労働者を搾取する存在」という図式を一般大衆に押し付けてきます。
そうしたマスコミを「悪い」と言うつもりはありません。
数が多い一般大衆の味方を装い、少数派の企業経営者を悪人に仕立て上げることが商売繁盛につながるのは確かであり、マスコミのそうした姿勢は当然といえます。
「社会的弱者vs悪代官」という水戸黄門ドラマが受けるのと同じ構図です。
ただし、ドラマはそれで良いでしょうが、現実問題はそれで良いのでしょうか。
 
誤解のないように言っておきますが、私は自分の働き方を推奨しているわけではありません。
働き方は、個人の自由意志に基づき企業と取り決めるのが本筋と思っているのです。
もちろん、相対的に立場の弱い個人を守るため、法律で一定のラインを制定することも必要だと思っています。
ですが、すべての人にそのラインを強制する今の働き方改革に違和感を覚えているのです。
 
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┃◇高齢者と自動車運転                       ┃
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痛ましい自動車事故が続いています。
巷では「高齢者とプリウスの組み合わせが危ない」というような意味のない流言まで出ています。
高齢者が増え、プリウスが売れているから事故車も増えるのであり、両者に因果関係はありません。
ですが、TVのニュースで流れる「事故を起こしたプリウス」の映像を見ると、そう言いたくなるのでしょうね。
 
また、高齢者から強制的に運転免許を取り上げようという過激な発言も、あちこちで見かけます。
団塊の世代の私も、高齢者の仲間入りをしていますから、こうした意見には正直言って不快になります。
若いうちは、自分がいつかは高齢者になるという意識が希薄ですから、こうしたことを言えるでしょうが、その年代になったら、果たして自らすすんで返納できるでしょうか。
 
高齢者には自動ブレーキ装備車を義務付けようというような意見もあります。
私の乗っている車には、幾つかの安全装置が付いていて、たしかに運転の負担は軽減されます。
事故を起こす確率が減ることも実感できます。
ですから、高齢者は出来る限り、そうした車に乗る努力はすべきとは思います。
しかし、費用負担のことを考えると強制は難しいと思います。
 
運転中、ヒヤッとすることもありますが、自動ブレーキが効く前に反射的にブレーキを踏んでいます。
だから、CMの宣伝映像のようなことは一度も経験していません。
私は、もし自分の反応が自動ブレーキより遅れるようなことが起きた時は運転を止めようと心に決めています。
つまり、私にとっての自動ブレーキは、運転を止めるサインなのです。
 
車の運転もスポーツの一種と考えています。
ピークは20代で、あとは能力が落ちる一方になります。
大学時代の私は、新車を単独で運ぶ陸送のバイトで腕を磨き、少しですがレース経験もあります。
かつて、レース場を300km/h近い速度で走った私ですが、今では200km/hも無理でしょう。
「1cm単位で車をコントロール出来る」と豪語もしていましたが、今では「10cmも無理」と思い、狭いところでは車を降りて確認するほど自信を喪失しています。
ニュース記事では、「高齢者ほど自分の運転に自信を持っている」という調査結果が目に付きますが、「本当?」としか思えません。
 
50年以上、病気や怪我の時を除き、車の運転から離れない人生を送ってきました。
だから、やがてハンドルを置く日を想像すると、とても寂しくなります。
その日に勇気を持ってハンドルを置けるようになるため、自動ブレーキをはじめとした自分のサインをいつも確認しています。
 
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┃◇温暖化のもうひとつの側面                    ┃
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先月号で、スウェーデンのグレタという女の子の温暖化阻止の運動を取り上げました。
私の論評が、こうした過激な運動を良しとしていないことを感じられた方は多いと思います。
最後に「欧州は病んでいる」と書きましたが、そのことを少々補足します。
明治以降の日本は、欧州を手本として絶対視する傾向がありました。
その意識が今でも強く、欧州から始まった啓蒙運動などを無条件に称える傾向があります。
温暖化阻止などの運動にもその意識を感じ、疑問を呈したのです。
 
そもそも自然には人格などありません。
それなのに環境派の人々は、人格があるかのごとく「自然にやさしく」と言い、「人が地球を両手で抱く」イラストをシンボルマークにしています。
これは、人間の奢り(おごり)だと思うのです。
「自然、そして地球は“か弱い”ので、われわれ人間が守ってやらねばならない」という奢りです。
自然は、そんな人間の感傷など全く及ばない存在であり、人間がどうこう出来るものでもありません。
幼い子どもが「ぼく、お母さんを守ってやるよ」と言ったりしますが、そんな時、母親は何と言うでしょうか。
「はいはい、ありがとう」と、笑って言うでしょう。
同様に、地球は、そんな人間を笑っていると思うのです。
 
いえ、人類など、そのような幼子より遥かに弱い存在です。
昔、アポロ宇宙飛行士の講演を聞いたことがあります。
その時、印象深かった言葉があります。
彼はこう言いました。
「人類は、まだ生まれる前の胎児です。このまま母なる地球の胎内に居続けると、母は病になり、そして胎児のまま人類は死んでしまいます。母の胎内から離れ、地球の外へ出ることが、真の誕生なのです。そして、宇宙空間を自力で行きていくことこそ、これからの人類の未来なのです」
私は、その言葉に深い感銘を受け、今日に至っています。
 
もちろん、温室効果ガスを減らしていくことは必要であり、トランプ米大統領のように「でっち上げだ」と言うつもりはありません。
しかし、自然を“か弱い”存在と決めつけている環境派の過剰な言動に疑問を感じるのです。
自分の主張を絶対視する強硬な運動は、結局、グレタが始めた温暖化阻止の運動が「学校をさぼる大義名分」となっていったように、ネジ曲がっていくのです。
 
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┃◇現代貨幣理論                          ┃
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最近にわかに、一般ニュースにも登場するようになったMMT理論。
理解されている方には釈迦に説法ですが、「よくわからない」という方に、超簡単な解説から始めたいと思います。
 
この理論の正式な名称は“Modern Monetary Theory”、直訳すると「現代貨幣理論」となりますが、
頭文字をとって「MMT」と呼ばれています。
一言で言うと、「政府が膨大な借金を抱えても何の問題もない」とする、かなり極端な経済理論です。
「ならば、日本の財政は心配する必要ないじゃない」となりますが、本当でしょうか。
実際、MMTを支持する経済学者たちは「日本がその実証モデルだよ」と言います。
ただし、当の日本の財務省や日銀は、真っ向からMMTを批判しています
それはそうです。
この理論が正しければ消費税増税は愚の骨頂となるからです。
本当のところは、どうなのでしょうか。
 
もちろん、提唱者の学者や賛同する学者も「無条件に国の借金を増やしても良い」と言っているわけではなく、以下のような制約が付いています。
1.国際的に通用する自国通貨を発行できる国であること
2.変動相場制の国であること
3.財源のあてがある国であること
米国や日本は、この条件にすべて当てはまります。
 
日本の国・地方の長期債務残高は、2018年度末で1107兆円とGDPの200%を超えています。
しかし、国債の金利は上がらず、世界最低水準で推移しています。
1990年当時の長期残高は200兆円程度でしたから、28年で5倍以上に膨れ上がったわけです。
それでも日本国は安定しています。
「MMT理論は正しい」とする考えに与(くみ)したくなる現象であることは確かです。
しかし、盲目的にこうした理論を信じるわけにはいきませんから、その背景を少し考察してみることにします。
 
1990年当時の長期国債金利は約6%でした。
それに対して、今はマイナス金利ですから、実質金利は0%ということになります。
国債発行額がいくら増えようが利息は生じないという、“美味しい”状況なわけです。
 
しかも、円建ての日本国債の4割以上を日銀が買い上げ、さらに、だぶつく民間貯蓄に困っている国内の金融機関等が買い入れ続けていることで長期金利はマイナスになっています。
そして、低インフレが続くことで物価の上昇も抑えられています。
これが、MMTが成り立つ根拠になっているということです。
 
米国の政府債務残高もGDP比で100%を超えていますが、やはり、インフレが急上昇する兆しすらありません。
いったい、GDP比がどのくらいになったら急激なインフレになるのかは、分からないということです。
 
ただし、MMTが成り立つのは通貨発行権がある国という条件があります。
ゆえに、EU共通通貨のユーロを採用しているギリシャや、自国通貨ではない米ドル建てで国債を発行しているアルゼンチンなどは、デフォルトの危機に陥ったわけです。
 
私は、以前から「国内で大半の国債を処理できている日本では、国債発行残高の増加をそれほど恐れる必要はない」と言ってきましたが、それをMMTが理論付けしてくれた格好です。
かねてから、増税派は「財政赤字が拡大すると、需要過剰でインフレになる」と言ってきました。
しかし、そうであるならば、「財政赤字を縮小するとデフレになる」となってしまいます。
それもおかしな話です。
この20年、日本は財政出動を増やし続けましたが、一向にインフレにはなりません。
MMTを無条件に信奉はしませんが、これまでの経済理論もおかしいと思ったほうが良いようです。
 
最後にちょっと。財務省の動画を見て笑ってしまいました。
その中でこう言っています。
「個人向け国債は、そんな可能性あふれる、全ての未来に向けた贈り物です」
あれっ??
別の動画では「国債は、将来世代へのツケ」と言っていますから、思わず「どっちが本音?」と言いたくなってしまいました。
 
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<編集後記>
最近、会社周辺の地価を調べる必要があり、路線価格だけでなく実際の売買価格も調べました。
その結果、実売買単価は、坪当たりで300~500万円でした。
この価格だと、分譲やワンルームマンションは、家賃相場からいって厳しい採算となってしまいます。
結果として、浅草の目と鼻の先という立地から、新築はホテルばかりとなっています。
わずか10坪程度の土地にもプチホテルが建ち、街の景観がどんどん変わっていきます。
昔ながらの定食屋が小洒落たプチホテルとなり、地元の商店街からは脱落していきます。
10年もしたら、どんな光景になるのか、想像も難しい日常です。
 
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