2016年7月29日号

2016.08.18


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2016年7月29日
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発行日:2016年7月29日(金)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2016年7月29日の目次
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☆AIは果たして人間社会に益をもたらすのか (1)
★消費者から見た建設工事に対する見解
★原発をめぐる不毛な世界は続く
☆小さな会社の大きな手(16):企業買収という投資
 
 
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こんにちは、安中眞介です。
 
今号は経済、経営の話題をお送りします。
 
東京は都知事選挙を明後日(31日)に控えていますが、世論調査どおり小池候補の勝利となるでしょう。
それも圧勝の予感がします。
与党も野党も、責任感のかけらもない候補者選びで、都民は白けています。
まだ結果は出ていませんが、小池候補は自民党の支持が得られなかったことがかえって良かったと思います。
 
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┃☆AIは果たして人間社会に益をもたらすのか (1)                          ┃
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将棋や囲碁の世界でAI(人工知能)が人間の名人を相次いで破ったかと思えば、自動車の自動運転までが実用化寸前です。
一方で、仮想画面と実写画面を組み合わせた世界で遊ぶ「ポケモンGO」が社会現象を引き起こしています。
我々は、漫画家の手塚治虫氏が描いた未来社会の入り口に立っていると思って良いのでしょうか。
 
しかし、そうした未来への高揚感より不安のほうが大きく感じられるのはなぜでしょうか。
かつて、大ヒットしたSF映画の「ターミネータ」や「マトリックス」は、ともに絶望的なAI未来を描いていました。
そうした世界へのイヤな予感が我々を不安にさせているのでしょうか。
今号から数回に渡って、少し考えてみたいと思います。
 
AIと様々なロボット技術の飛躍的な進歩と普及は、これまでの不可能を可能にし、多くの労働から人間を開放するという夢を実現することは確かです。
内外のIT企業のトップはバラ色の未来を熱く語りますが、大衆は、スマホ漬けになりながらも、どこか同調し切れない気持ちを感じているようです。
それは当然です。
AIが日常生活の隅々にまで浸透していくことで、多くの職業が消え、大量の失業者を生むということが現実化するからです。
例えば、自動運転の実用化は、タクシーやトラックの運転手という職業を消し去ってしまうでしょう。
 
実際、1990年代のIT革命では、インターネットに接続されたパソコンと各種の事務系ソフトウェアが、それまでの事務労働の劇的な効率化や省力化を実現し、大量のホワイトカラーが失業しました。
同時期に出てきた外食産業やコンビニ等のサービス業が普及したことにより、多くの失業者は救われてきましたが、それらの職業の多くは正規雇用とはならずに、非正規雇用の増大を招いています。
 
しかも、これから起きるIoT(Internet of Things)と呼ばれるAI化は、従来の計算や記録の代行といった定型的な事務作業ではなく、高付加価値作業であった複雑な作業や分析系の作業までもが人間の手を必要としなくなるのです。
つまり、医療、法律判断、投資運用、金融審査などの知的作業の多くまでがロボット化されるのです。
劇的な生産性革命の実現と引き換えに職を失う人たちが急増するというわけです。
やがて建設工事の現場からも人が消えるでしょう。
 
こうした劇的に見えるシステムの進化は突然に起きたものではありません。
筆者は、40年以上昔、コンピュータ会社で防衛システムの開発に携わっていました。
ソフトの世界でいえば、その頃、すでにAI化は実現出来ていたのです。
人間に代わってプログラムが多種多様な情報をリアルタイムに分析し、最適な攻撃方法を考え、人間に指示するところまで出来ていたのです。
最後のボタンだけは人間が押していましたが、実戦演習に立ち会った時には自分の背筋が寒くなったことを今でも鮮明に覚えています。
 
ただ、そのシステムを民間に応用するにはコスト的にとても割が合いませんでした。
あの頃は、採算を度外視する軍事の世界だけで実用化できていたのです。
それが、40年経って民間でもコストが成り立つようになってきたのです。
一気に普及してきたのは当然といえます。
 
ソフトで行う機械学習の基礎は、確率・統計の理論です。
その意味から言えば、実は、基礎理論は40年前からたいして進化していません。
ただ、統計から確実性の高い推論を導くには、とにかく多くの、それも正確なデータが必要です。
それが、近年の情報化社会の劇的な広がりで、大量のデータを集めることは容易になりました。
あとは正確性をどう高めるかですが、いわゆる”ゴミ”データを取り除くアルゴリズム(プログラム技術)の発達で、実用化レベルになってきたのです。
(中国では、この”ゴミ”排除を大量の人力で行っているそうですが、それも驚きです)
これを最近の用語で言うと、「ビッグデータ解析」となるわけです。
 
さて、技術的な解説はここまでにして、こうしたAIが人間社会をどのように変えていくかを解説したいのですが、それは次号で。
 
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┃★消費者から見た建設工事に対する見解                  ┃
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前号では、施主代行から見た「ある建築工事の実態」を述べました。
私は、時々、建設関連のセミナーや講演を聞きに行き、また毎日、業界紙の記事や論説を読んでいます。
そこでは、建設業に対する様々な提言がなされていますが、私は、正直なところ違和感を禁じ得ません。
その違和感とは何か。
それは、最終消費者の視点が感じられないことです。
それで前号では、週休2日制について、施主側から見た実態を書かせてもらったわけです。
 
7月22日、日建連の中村会長は、近く出される予定の政府の経済対策に関し、「公共事業を増やしても人手不足で対応できない」とする報道に対し、データを示し、そうではないことを強調しました。
中村会長の指摘は正しいと思いますが、世の中はデータ通りに進行しているわけではありません。
受給バランスは、時により所により崩れます。
私は40年間、建設業界で働いてきました。
その間、何度もそのバランスの崩れを現場で体験してきました。
ここ数年は、施主の立場で、そのアンバランスをもろに味わいました。
「職人がいなくて仕事を受けられない」と、見積りすら断られました。
建設会社の事情は痛いほど分かりますが、門前払いに似た屈辱を感じたことも事実です。
 
政府の懸念の裏には、そうした過去の実態(トラウマ?)があるわけです。
それを無視して反発するだけでは発注側の理解は得られないと思います。
それでも、公共発注者は業界の事情が分かっているので、一定の理解を示してくれるでしょう。
しかし、民間顧客はどうでしょうか。
特定の建設会社と良い関係が築けている企業顧客の場合はそうでもないでしょうが、一般消費者の目から見た建設業界は、黒とは言いませんが、灰色にしか見えていません。
その不信感を信頼に変えていく努力は、まだまだ不足していると言わざるを得ません。
 
国交省は、基本問題小委員会に中間素案を提示して、建設生産システムの適正化を目指すとして、「民間工事における発注者・元請等の請負契約の適正化」という民間工事指針を出す予定です。
そこでは「事前協議の徹底を推奨する」としていますが、絵に書いた“もち”としか思えません。
 
多くの民間顧客は、やっとの思いで建設資金を調達しているのです。
建設会社側の言い分に正当性があっても、追加の工事費を支払う余裕など無いのが普通です。
まして、追加根拠の多くを握っているのは建設会社のほうです。
素人当然の施主から見たら「騙されている」と考えるのが道理と思わなくてはなりません。
国交省の指針一つで解決できる問題ではないのです。
 
批判ばかりしていてもアンフェアなので、次号では、我々の取り組みを紹介したいと思います。
もちろん、建設のような受注産業に一般解などありません。
あくまでも「参考」としてお受け取りください。
 
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┃★原発をめぐる不毛な世界は続く                       ┃
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新たに鹿児島県知事に就任した三反園訓(みたぞのさとし)氏が、唯一稼働している九州電力の川内原発の一時停止と再点検を九電に申し入れる考えを表明しました。
新知事は、選挙の公約にも原発停止を掲げてきましたので当然でしょうが、知事には原発を止める法的権限はありません。
ただ、政治的には九電に圧力をかけ続けることが出来るため、九電は対応に苦慮しています。
 
三反園知事は、「熊本地震があり、原発は本当に大丈夫なのかという不安が県民の間にある」と理由を述べていますが、川内原発が事故を起こす確率は限りなくゼロに近いです。
知事の本音は、原発停止表明によって自分の政治基盤を強化することにあります。
ゆえに、原発の安全性を確認する検証をいくら重ねても全く納得はされないでしょう。
これは、安全に名を借りた政治の問題なのです。
ですから、ムダな検証作業をせずに、政治的な決着を図る以外に道はありません。
 
東京電力福島第1原発の事故から5年以上が経過しました。
廃炉までの道のりがあまりにも長いためか、報道で取り上げられる回数はめっきり減りました。
凍土壁の失敗が久しぶりにニュースになりましたが、一般の関心は低く、すぐに報道から消えてしまいました。
 
一時期、漫画「美味しんぼ」の鼻血の話などが話題になりましたが、科学的根拠の乏しいこうした話や記事は続かず、ほとんど消えてしまいました。
今度の参院選でも、主要政党は、みな原発問題をスルーしていました。
それだけ国民の関心が低くなってしまったということです。
 
しかし、無残な姿となった福島第一原発は厳然として残骸を晒(さら)し続けています。
かつて、そこで働いていた私からすると複雑な心境になります。
まして、そこには、今でも廃炉に向けて懸命の作業を続けている人たちがいるのです。
 
以下は、最近、話題になった漫画「いちえふ 福島第一原子力発電所労働記」の著者である竜田一人氏の言葉です。
「問題は鼻血を出した、出さないじゃなくて、それが放射線の影響かどうかですよね。そこで『放射線なめるな』って話になるんですよ。現場で放射線の影響が症状として身体に出るようなことがあったら、それは即座に命の危険を意味します。そうすると私たちは1F(福島第一原発)で働くどころではなく、命の心配をしないといけない。それを防ぐためには、正しい知識を身につけ、適切な対処をするしかないんです。1Fとはそういう職場なんです」
本当にそうです。
そうした現場を、正しい知識も持たずに論評する人やマスコミが多すぎます。
 
事故を起こす前でしたが、放射線を浴びる現場で働いていた私も竜田氏と全く同じ思いでした。
竜田氏の漫画には、「美味しんぼ」のような無責任な漫画とは全く違う真実の姿を感じました。
私も、あの頃、本当に鼻血なんかが出たら死を覚悟したと思います。
毎日、被曝線量を確認しながら、不安の中にあったことも正直な感想です。
今も現地で働いている方々の心境を思うと、苦しくなります。
 
あの事故を起こした真の犯人の一方は、もちろん「原子力ムラの無責任な責任者たち」ですが、もう一方がいます。
それは、雑誌の「Wedge5月号」の記事の中で、
 
「目に見えない放射能やワクチンに対して不安を抱える人に、カギカッコ付きの「支援者」が群がり、「不安寄り添いムラ」を形成し、攻撃性まで帯びてしまう」
 
と書かれていた「プロ市民たち」なのです。
 
全く正反対の立場にいる双方ですが、共通しているのは、一度も厳しい放射線の中に身を置いた経験がないことです。
どちらも、経験がないのに「ウソばかり」言ってきたのです。
 
少し前になりますが、元原子力安全委員長の班目春樹氏の書いた漫画がネットに載りました。
そして、フジテレビで斑目氏へのインタビューが放映されましたが、あまりのひどさに呆れるだけでした。
一方の代表が「美味しんぼ」の作者だとしたら、もう一方の代表が斑目氏のような人なのです。
 
事故当時の首相であった菅直人氏は、当時、この班目氏を全面的に信頼していたようです。
そのことが海水注入の遅れを招き、水素爆発につながり、放射能被害を撒き散らしたのです。
それなのに、未だに菅直人氏や斑目氏は好き勝手な発言をしているのです。
原発をめぐる不毛な世界はいつまで続くのでしょうか。
 
 
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┃ ☆小さな会社の大きな手(16):企業買収という投資          ┃
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ソフトバンクの孫社長が3.3兆円という大型買収を発表しました。
考えた末の戦略投資かもしれませんが、外部からは投資ではなく“博打”にしか見えません。
3.3兆円という買収額は、買収するARM社の株価(7月19日のロンドン証券市場の同社株終値)に対し「43%のプレミアム付き」ということです。
英国のEU離脱でポンドが下落したとはいえ、時価総額に1兆円を足した金額になります。
 
それで、ソフトバンクのキャッシュフローを調べてみました。
2015年度は、営業キャッシュフローは9401億円で投資キャッシュフローは1兆6516億円でした。
つまり、総合ではマイナス7115億円という巨額な赤字です。
2011年度まではプラスでしたが、2012年度にマイナス611億円の赤字になり、2013年度には、マイナス1兆665億円と赤字が膨れ上がりました。
そうです。この年に米国の携帯電話事業者のスプリント社の買収に2兆円を投じたからです。
その後、買収したスプリント社はずっと赤字続きでソフトバンクの収益に全く貢献できていません。
この先の収益見通しも暗く、この買収は「失敗」と言わざるを得ないと思います。
この失敗の穴埋めを狙ってARM社を買収したのではないかとする声もあります。
となると、本当の“賭け”です。
 
規模が何桁も違って比較にもなりませんが、弊社も、これまで5~6回、他社の株を取得して傘下に置いたことがあります。
しかし、恥ずかしい話ですが、全部失敗しました。
失敗の理由は様々ですが、企業買収は自分には全く向かない投資分野だということは分かりました。
 
多くの経営者からの尊敬を集める、日本電産創業者の永守重信社長は、「これまで50社ぐらい買収したが1社も失敗していない」と豪語されています。
私などは、「すごいな!」というしかない経営能力です。
その永守社長は、ソフトバンクの社外取締役もされていますが、今回の3.3兆円の買収についての記者からの質問に対し、「自分だったら、3300億円でも買わないな」とケムに巻いておられました。
冗談半分なご発言だと思いますが、永守社長の買収哲学の一端を垣間見た思いです。
経営強化のための「投資買収」は積極的に行うが「博打投資」はしないということだと、私は受け止めました。
投資買収で1勝も出来なかった負け組経営者としては、妙に納得出来た言葉です。
 
でも、その半面、「どこかで1勝ぐらいはしたいな」という思いはあります。
今までの負けの借りを返すというのではなく、「成功する企業買収」というものがどのようなことなのかを経験したいのです。
 
弊社は「企業コンサル」を事業の一つとして行っていますが、「実践型コンサル」を売りにしているため、建設企業にしか行っていません。
つまり、「経験していないことはコンサルできない」としているのです。
ということは、コンサル先の企業から「企業買収したいのだが・・」と相談されても、応えることが出来ないということになります。
失敗を経験として「止めたら・・」とは言えますが、「こうすれば成功する」が言えないのです。
どこかで、再度挑戦して「今度は成功させるぞ」と密かに目論んでいます。
社内には秘密の話ですが・・
 
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<後記>
7月15日号の本欄で予告した「建設ビジネスサロン」の立上げに向けて戦略を練っています。
一番大事なことは、「どうすれば、参加される方々に利益をもたらすことが出来るか」にあります。
「利益」というと、すぐに金銭的利益を思い浮かべますが、それよりも大事なことは「市場からの支持を得ること」です。
それこそが、企業の最大の利益のはずです。
そして、このサロンから実践の仕組みを生み出し、実際の案件の中で成果をあげることが目的です。
 
ですから、実践のための議論は行いますが、抽象的な議論をするつもりはありません。
「日本の建設業のため・・」は他で議論してもらうこととして、「自社の生き残り、発展のため・・」で参加して欲しいのです。
勿論、施主や最終消費者の立場であっても同様です。
「自分のため」を思って参加して欲しいのです。
 
本メルマガの読者の方々には参加の呼びかけを行う予定ですので、ご興味がおありであれば、ぜひご参加ください。
 
「建設ビジネスサロン」については、いずれHPに専用サイトを開設しますので、こちらも併せてお読みください。