2015年10月31日号

2015.10.31

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2015年10月31日号
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                発行日:2015年10月31日(土)
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2015年10月31日号の目次
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★あまりにも鈍感な建設産業
★間の悪い陳情
☆メルケルとビル・ゲイツ
☆小さな会社の大きな手(8):戦略投資
(本シリーズ(5)は欠番です。)
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こんにちは、安中眞介です。

今号は、経済、経営の話題をお送りします。

今の建設業界の最大の話題は、旭化成建材が起こした杭工事の施工データの偽装問題であると誰もが認めるところです。
この問題は、事実確認の遅れ、発覚後の説明の不備、他での不正の発覚と、当事者の対応のまずさから、建設業界全体に対する不信へと広がりを見せています。
今号は、この問題から取り上げてみたいと思います。

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┃★あまりにも鈍感な建設産業                    ┃
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1ヶ月前の本メルマガで、私は「国民の不信感の強さに鈍感な建設産業」というタイトルで、国民の不信の目に対する業界の鈍感さを指摘しました。
その後すぐに、横浜のマンションでの杭工事の不正が発覚したわけです。
予言をしたわけではありません。
私は、40年間、様々な立場から建設の仕事をしてきました。
しかし、業界の内側しか見ていない建設産業の姿に強く危機感を抱いていたが故の警告でした。

今回の問題でも、パークシティLaLa横浜のマンションが傾いているという指摘が寄せられたのは、昨年の11月です。
それなのに、きちんとした調査もせずに苦情を無視し続けていたわけです。
1年近く経ってようやく問題の存在を認めましたが、記者会見で旭化成建材の副社長が「傾いたのはこの1件だけ」と発言するなど、当事者の危機意識の欠如には耳を疑いました。

その後の報道で、杭の偽装は他県にも及び、「私もやった」と発言する施工者が現れたりと、底なしの様相を見せ始めています。
10月29日現在で偽装が明らかになった物件は全部で4件になっています。
今後も偽装発覚が増えていくのかどうか。
どこかで調査完了(実際は、打ち切り?)となる気がしますが、分かりません。

設計や施工経験がお有りの方は、杭の不正がどれほど危険かはよく分かっていますが、同時に、そもそも、多くの建物は過剰気味に設計されているし、国の基準も必要以上に過大だと感じています。
この2つの感情の狭間が本当の危険だと思うのです。

私も工期や金額が非常に厳しい物件の施工を担当したことがありますが、大きな問題に突き当たった時は、やはり焦ります。
竣工に間に合わなくなる、工事が赤字に陥ってしまうというプレッシャーは相当なものです。
実際にそうなれば、謝ったぐらいではすみません。
工期の遅れは、お客様から損害賠償を請求されるかもしれませんし、赤字になれば、自分の評価は地に落ちます。
それでも平然としていられるような精神の持ち主など、ほぼ皆無でしょう。

技術の未熟さなど、現場監督自らが解決していかなければならない問題も多いですが、多くは施工会社の姿勢であり、リスク管理の問題なのです。
もっと言えば、施主を含めた建設産業が抱えている構造的問題なのです。
姉歯問題から10年、産業界の体質が少しも変わっていないことを露呈した今回の問題。
市場から突きつけられている不信の重さに対し、まだまだ建設産業界は鈍感だと思います。

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┃★間の悪い陳情                          ┃
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景気の足元が不安定さを増し、各種の市場調査では「発注の減少」を指摘する声が大きくなってきている。
その影響で、全建による国交省への大型補正予算の要望や、安倍首相の打ち出した「一億総活躍社会」に便乗する形で公共投資の増額をと言った声が建設業界に溢れている。
その矢先での、杭の不正発覚である。
間の悪い陳情だったと言えよう。

この問題の根が深いことは、業界関係者なら誰もがわかっているはずである。
しかし、是正への提言はおろか、反省意見一つ出てこない。
杭打ちの張本人である旭化成建材は、非難を一身に浴びて、会社の存続すら怪しくなると思うが、それは身から出た錆で、同情の余地もない。
だが、巷では「そもそも、元請けの責任はどうなっているんだ」という声が出始め、建設産業全体に対する不信感へと拡大の様相を見せている。
とても、陳情などやっていられる状況ではないのである。
陳情時が不正の発覚前だったということは言い訳にもならない。
少しでも受注量が落ちたら、すぐに「補正予算を」という自分勝手な要求をする。
建設産業はそんな産業なんだとのレッテルが貼られ、「だから、あんな問題を起こす・・」となるのである。
いいかげん、この種の陳情を止めなくてはならない曲がり角なのだと思う。

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┃☆メルケルとビル・ゲイツ                     ┃
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この2人をご存じない人はいないであろう。
かたやドイツ首相、かたやマイクロソフトの創業者にして大富豪。
だが、過去にも、また現在でも、このふたりに明確な接点はない。
超有名人な2人なので、どこかで会ってはいるかもしれないが、記事になるほどの接点はなかったと記憶している。

前置きはこのくらいにして、まず以下の記事に注目して欲しい。
今年7月、ビル・ゲイツは、「再生可能エネルギーに5年間で2,500億円の金額を投資する」と発表した。
「今ごろ、太陽光発電事業?」と思っていたら、ゲイツ氏のいう再生エネルギーとは、太陽光でも風力でもない。
なんと「原子力」なのである。

再生可能エネルギーのエースとして、ひところ大騒ぎした太陽光発電であるが、ほとんど役に立たない代物であることを世界はようやく理解してきたようである。
特に「産業用」の電力供給には全く不適であることが実証されてきた。

もともと、ゲイツ氏は、CO2を出さないエネルギーとして原子力を評価してきた。
しかし、今度は従来の原子力発電ではなく、核廃棄物(特に、劣化ウラン)を使って発電する技術を開発するということである。
しかも、この開発に中国が乗るかもしれないというから二度びっくりである。

先の大失敗に終わったと言われている習近平国家主席の米国訪問であるが、習近平主席は、ワシントンに入る前にシアトルに入り、IT関係の社長たちと商談をしている。
報道されてはいないが、この時、ゲイツ氏と会ってこの開発に乗る話をしたとの情報がある。

さて、ここでドイツである。
ドイツのメルケル首相は、脱原発を掲げ、太陽光発電を大幅に増やしたが、さっぱり役に立たず、結果として、当然のごとく石炭火力が増え、CO2が増えてしまっている。
この役に立たなかったドイツの太陽光ビジネスでは、格安ソーラーパネルを売りまくった中国がひとり大儲けをした。
その半面、増えすぎた太陽光発電は、大量の太陽光パネルの破棄問題など、ドイツに大きな負担となって跳ね返ってきている。
その中国が、今度は、ビル・ゲイツ氏に乗るというわけである。
メルケル首相が、執務室のゴミ入れを蹴っ飛ばしている姿が目に浮かぶようである。
(こんなことを書くと、ドイツから「首相の名誉毀損」として有罪判決を受けるかもしれませんが・・)

しかも、中国は明らかな景気減速に陥るであろうし、例のフォルクスワーゲンのディーゼル車を一番多く生産しているのは中国である。
ドイツ、中国双方にとって、これからはお互いに儲からない国になるのである。

でも、さすがにメルケル首相である。
10月5日、メルケル首相は、外務大臣など4人の閣僚と大勢の企業ボスを引き連れて、インドへ飛んでいた。
近い将来、人口で中国を越えるインドへ乗り換えようというわけである。

なにしろ、もともとは原子力技術者出身で原発推進派だったのに、脱原発へと180度の転換をしたメルケル首相である。
もはや「用無し」と中国に見切りをつけるのも早いのではないか。
ちなみに、ドイツは既存の原発を止めてはいない。
8基が運転中である。
2022年末で、すべてを廃止するとなっているが、これを撤回する可能性は大いにある。
なにしろ、メルケル首相なのだから。

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┃☆小さな会社の大きな手(8):戦略投資              ┃
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前回、投資には、金融投資と戦略投資があると解説しました。
さらに、「カネにカネを生ませる」のが「金融投資」で、「モノやヒトにカネを生ませる」のが「戦略投資」と、私の識別の話をしました。
もっと言えば、「自分は努力せず」、「他人の努力に期待する」のが金融投資だとも話しました。
では、「戦略投資」とは、「自分が努力し、他人の努力には期待しない」ということなのでしょうか。

突き詰めればそう言えますが、それほど単純な話ではありません。
だから、金融投資に乗る経営者は多いですが、戦略投資となると二の足を踏まれる経営者がほとんどなのです。
危険が伴うということもありますが、知識不足であり、コントロール能力不足なのです。
「金融投資」にもリスクがあり、知識も必要です。
しかし、稼ぐ努力は他人がすることなので、必要な知識も単純なのです。

それに対し、戦略投資は、多様で多重な知識が必要です。
まず、自社の経営資源、製品内容、陣容や人材、関係会社や取引先の経営内容、技術、人材など、知るべきことは山のようにあります。
大抵の経営者は、まず、この段階で白旗を上げてしまいます。
「わからん」というわけです。

さらに、新たな投資はリスクだらけです。
経営者が大きな投資を「やろう」と思っても、社内は反対の嵐になります。
まず、財務部長などのおカネの管理者が猛反対します。
「社長、何をバカなことを!!」と、青筋を立てて反対します。
無理もありません。
企業にとって「おカネ」は、存亡の要です。
そのおカネを危険にさらすことなど、財務の責任者が出来るはずはないのです。
さらに、営業にとっては、また新たな販売戦略が必要になります。
「そんなの売れるかよ!」と反対するのが当然です。
技術部門だって管理部門だって、事情は大なり小なり同じです。
社長とその戦略投資の実行部隊だけがやる気という孤立無援状態に置かれます。

この図式を突破できるとしたら社長しかいません。
池井戸潤が直木賞を受賞した「下町ロケット」は架空の会社の小説ですが、このあたりの描写をなかなかよく書いています。
もっとも、この会社の解決に至る道は、現実には、まったく参考になりません。
現実は、もっと地味で堅実な道を歩まなければなりません。

ここで大事なキーワードは、もちろん「戦略」です。
その投資が成功につながる道を描き、その道を着実に歩いていくストーリーを描き、その道で生じるであろう様々なリスクを描き、そして、その一つ一つをクリアする方法を描く。
それが「戦略」であり、戦略の実行方法が「戦術」です。
そうした戦略・戦術が細大漏らさず描かれている計画書を作成することが「戦略投資」の第一歩です。

どうですか、もう、ここで気持ちが萎(な)えてしまうでしょう。
萎えてしまったからと言って悪いわけではありません。
達成への戦略を描けもしない夢は、寝床の中か酒の席で見るだけにしておくべきです。

と、ここまでコケにされて「頭に来た!」経営者の方は、次回から数回に渡ってお送りする予定の「戦略投資」のお話にご期待ください。

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<後記>
中国が抗日戦70年の軍事パレードに要した費用は4500億円とも言われています。
実にバカげた投資です。
軍事訓練への投資ならば、一定の効果はあるでしょうし、また必要なことです。
また、この軍事パレードに怖れをなして、米国や日本など、中国が仮想敵国としている国々が
恭順の意を示したならば、「投資対効果はあった」と言えるかもしれません。
ですが、その効果はまったくありません。
国内向けの効果だけを狙ったのであれば、もったいない話ですね。
企業も、気を付けないと「創業○○年」などという大々的なイベントをやりそうになります。
「紅白のまんじゅう」だけにしろとは言いませんが、ほどほどに。

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