2016年8月31日号

2016.09.20

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2016年8月31日号
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発行日:2016年9月1日(木)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2016年8月31日号の目次
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☆建設市場の未来は明るい?
★日銀の敗北
☆AIは果たして人間社会に益をもたらすのか(2)
☆小さな会社の大きな手(17=最終回):中小企業の目指す経営とは
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
 
今号は経済、経営の話題をお送りします。
 
財政難で開催が危ぶまれていたリオ五輪ですが、ブラジルは立派にやり遂げました。
財政に苦労させられている中小企業の経営者としては、拍手とともに経営の参考にしたいと、結構真剣に考えました。
そこで思い至りました。
財政で苦労するほうが「良い運営が出来、良い経営が出来る」ということにです。
逆に、財政が豊かな時は経営感覚が鈍くなり、危機が忍び寄ってくるものです。
そのことは、26年の経営の中で何度も味わいました。
それでは今号は、いま好調と言われる建設市場の話題から始めます。
 
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┃☆建設市場の未来は明るい?                    ┃
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今年度の建設市場は、昨年度以上に好調に推移していると言えそうである。
業界紙を見ていると、連日、以下の様な見出しがおどっている。
「不動産業の設備投資借入額が急増」
「公共投資発注額、25道府県で2桁のプラス」
「中小建設業の景況感回復」
「大手の受注安定、着実に手持ち工事量を積み上げ」
「工事粗利、いずれも10%超え」
「建設業界の手持ち工事高、2012年以来、毎年2兆円ずつの増加」
 
また、この先の建設市場を予想する上で大きな要素を占める設計事務所の収入も増加が続いている。
円高による収益悪化が懸念される製造業や、激烈な販売競争が続く小売業界から見たら「建設産業は極楽か?」と言われそうである。
 
しかし、これほど好調な産業ならば、就職する若者たちから熱烈に支持されるはず・・が、そうはならない、もう一方の現実がある。
その結果、人材難にあえぐ姿は、不況の時となんら変わっていない。
国交省は、建設部会の「基本問題小委員会」に「建設生産システムの変革」、「建設生産を支える技術者や担い手の確保・育成」、「建設企業の持続的な活動が図られる環境整備」という3つの柱に沿った「中間とりまとめ(素案)」を提示した。
 
だが、厳しいことを言えば、目新しい提言はどこにも見当たらない。
私が建設産業に入った20代の頃から言われ続けてきたことばかりである。
つまり、40年以上、真の抜本的改革は見送られ続けてきたのである。
どうしてか。
その答えは、個人の能力・努力に依存する建設産業の構造的問題にある。
自分も、そうした風土を是正せず放置してきた一人なので、反省を込めて言うのである。
つまり、現場で、土日もなく夜遅くまで働いてきた若き日々を誇りに思い、そうした働き方を賛美してきた業界の構造的欠陥に思いを馳せることがなかった自分に対する反省である。
そして、後輩たちにも、自分たちの働き方を無意識に強いてきたのではないだろうか。
そうした無神経な産業に対して、現代の若者は冷たい目を向けているのだと思う。
 
でも、建設会社の経営者も若返ってきて、大手でも私の後輩の年齢の方が経営トップに就任している。
そうした経営者の方々に申し上げたい。
 
私たち団塊の世代の考え方は間違えていた。
自分たちが良いと思ってきたことは後輩たちにも良いことだと考えてしまった。
しかし、それは間違いなのだ。
常に、新しい時代は新しい年代の人間が創っていくものであり、「老兵は消え去るのみ」で良い。
先輩たちのたわごとは全て捨て去る勇気を持って、自社の経営を考えて欲しい。
 
国交省の唱える小手先の手段では建設産業は魅力ある産業にはならない。
建設会社の経営者が、現実と未来を見据えて180度変える勇気を持って自社の改革を断行していくしかない。
さらに、どの産業にも言えることだが、もうひとつ必要なことがある。
それは、全く新しい形態の建設会社がたくさん生まれてくることである。
老兵の身であるが、私もそうした建設会社のひとつを創ろうと決意し、その途上にある。
やはり、この産業が好きだから・・である。
 
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┃★日銀の敗北                           ┃
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円ドルレートが103円まで回復し、100円割れという円高はいったん回避できた。
原因は、FRB(米国連邦準備制度)のイエレン議長が利上げの可能性を示唆したからである。
このことで、世界経済を動かしているのは米国であり、日本の力の小ささを改めて確認させられた感がする。
思い返せば、2013年、日銀黒田総裁の異次元緩和がデフレ経済からの脱却を果たしたとされてきたが、それもFRBが利上げに向かう局面と重なったからである。
FRBの利上げによりドルが買われる局面に乗っかり、異次元緩和が円売りに拍車をかける格好になっただけだったのである。
その証拠に、その後、FRBが利上げペースを鈍化させたことでドル買いが鈍り、円安も勢いを失った。
それに伴い、アベノミクスも息切れしてきた。
 
黒田総裁は必死になって円安へ誘導しようとしているが、FRBに比べて日銀の力は微々たるものである。
1998年に日銀法が改正され、日銀は為替への関与を完全に否定された。
為替相場への介入権は財務省の専権事項となったが、安倍内閣になってからは一度も介入を行っていない。
ゆえに、海外の投機筋は安心して円を買うことが出来、世界経済が不安定になると機械的に円を買う(つまり、円高になる)という図式になっている。
日本政府は、為替介入という武器を持たない日銀の敗北を認めて、戦略を練り直すしかない。
安倍首相は、アベノミクスの推進に強気だがが、外交に比べて経済に対する首相の力不足は明らかである。
今の戦略ではもう無理だと認めるべきである。
 
ではどうすべきかは、次号で述べることとする。
 
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┃☆AIは果たして人間社会に益をもたらすのか(2)          ┃
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前号で述べたように、これからさまざまな産業でAI(人工知能)化が進んでいくものと思われます。
AIのアルゴリズム(プログラム技術)そのものは、40年も昔に完成していましたが、コスト面の制約から軍事システムの世界に留まっていました。
一部の技術は民間市場に降りてきましたが、それも航空産業や原子力発電所など、製品単価が異常に高い産業に限られていました。
民間市場では採算の壁を乗り越えることが難しかったのです。
私は、原子力施設を設計するシステムの開発に携わったことがありますが、完成したシステムを一般の建物の設計・施工に応用する取り組みも行ってきました。
しかし、それは失敗に終わりました。
AIプログラムを実行するには高額な超高性能のコンピュータが必要でした。
時には1秒100~300円の使用料がかかるスーパーコンピュータが必要でした。
それでは、大型ビルといえども、とてもコストが合わなかったのです。
 
それが、近年、パソコンの性能が飛躍的に向上し、コストが合うようになってきたのです。
40年前と比べると、コストは1~10万倍は下がりました。
これから劇的にAIが民間市場の仕事に使われだしてくるものと思われます。
 
ただし、そのことは同時に、大量の職業が人間の手を離れていくことを意味します。
そして、それらの職業の担い手の多くが失業という悪夢が現実になるかもしれません。
ある調査によると「日本の労働人口の49%がAIによって代替できるようになる可能性が高い」という結果が出ました。
そうなったら社会はどうなるかが心配だし、なにより「自分はどうなる?」という不安が大きくなります。
 
ここで少し考えていただきたいことがあります。
今までのコンピュータ化は、経理の伝票作成などのルーチンワーク的な職業を淘汰してきましたが、AIが淘汰していくのは、比較的「年収が高い」職業にまで及ぶということなのです。
会計士、弁護士などの高い専門知識が必要な職業ほど、AI化のメリットが大きいからです。
囲碁や将棋の世界で名人が敗れていく姿は、そんな未来を暗示していると言えます。
 
建設の世界に目を転じると、AI化の波はこれから一気に進んできそうです。
土木の現場では、すでに機械化施工が行われています。
近い将来、無人の現場が出現してくることを疑う人はいないでしょう。
弊社が企画・設計中の案件でも、積極的にAIを活用し、大幅なコストダウンと正確性の双方の向上を目指しています。
狭い屋内作業が多い建築の現場では機械化施工は難しいですが、それも時間の問題と思われます。
40年前、軍事システムで味わった世界を建設の世界でも味わえる時代がようやく来たという思いです。
これが「人間社会に益をもたらすのかどうか」は、いったん横に置いて、次回は、そのような未来社会の姿を想像してみたいと思います。
 
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┃☆小さな会社の大きな手(17=最終回):中小企業の目指す経営とは ┃
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1年半に渡ってお送りしてきたこの連載も、そろそろまとめになりました。
最後に、前号で少し取り上げた日本電産会長兼社長の永守重信氏の言葉を一緒に考えてみたいと思います。
もちろん、日本電産は大企業ですが、創業当初は中小企業でした。
一代で大企業へと飛躍した現代の経営者には、ソフトバンクの孫社長とかユニクロの柳井社長、楽天の三木谷社長とかがおられますが、あまりにもカリスマ的過ぎて、正直参考にはなりません。
その点、メーカーに徹してこられた永守社長の言葉は、中小企業の経営に通じることが多く、参考になると感じています。
そんな言葉を幾つか紹介します。
 
(1)上に立つ人間は、人を明るくしたり、楽しくしたりしなければいけないが、そういう経営者は少ない。
みんな謙遜して、慎重に発言する、ごく普通の人が多いね。
 
→「なるほど」と思います。
ですが、謙遜や慎重な発言を「美徳」と思っておられる方のほうが多いのではないでしょうか。
また、よほど自分の経営に自信がないと、永守社長のようには発言できません。
でも、永守社長は、会社の規模が小さい時から、このように発言されてきたのだ
と思います。
「かくありたい」と思わせる言葉です。
 
(2)投資しすぎた。腹八分目というか、ちょっと休まなければね。
私は人を切るのは絶対にいやなんですよ。リストラしたほうが、会社にとって早い。
でも人材は大切だ。最後、一番強いのは人を切らないことだ。
 
→戦略投資は必要だが「腹八分目」というのが“みそ”なのでしょうね。
投資の失敗で人を切ることだけはしたくないという強い思いが伝わってきます。
人を切らなければ会社が存在できない事態に追い込まれてはいけないという“戒め”にも聞こえます。
私はリストラが必ずしも悪いとは思っていませんが、ずさんな経営でリストラに追い込まれたとしたら経営者として失格なのは当然です。
戦略投資には、常にそのリスクが生じますので、リストラに追い込まれる前に撤退する勇気も必要と解釈しています。
 
(3)結局、酒を飲んだりゴルフをしたりして解消するようなストレスは、ストレスじゃない。
仕事のストレスは、仕事でしか治せない。
開発者だったら新商品を作る、営業だったら新しい注文をとる。
酒ではストレスをごまかすことはできても、治すことはできないよ。
 
→これは「そのとおり」と言うしかありません。
ほとんどの経営者は自覚しているでしょうが、経営とはストレスの塊です。
それが辛いのは当たり前です。
でも、そのストレスから逃げたいのであれば、そもそも経営者になるべきではないのです。
なにより、そんな逃げ腰の経営者に使われる社員が気の毒です。
建設会社の社員だったある日、国交省からの天下り役員と飲む機会がありましたが、その役員がこんなことを言いました。
「こんな大変とは思わなかった。僕は楽をするためにここに来たのに・・」
酒の席とは言え、こちらの気持ちは暗くなりました。
「そんな後ろ向きな気持ちの“あんた”の下に付く、こっちの身になってくれ」と怒鳴りたかったのですが、気弱な当時の私は言葉を飲み込むしかありませんでした。
30年以上経った今でも、あの時の苦い気持ちは忘れられません。
 
ここまで「小さな会社の大きな手」という命題で、このコラムを続けてきましたが、「大きな手」の真の解釈は、読者の皆様それぞれにお任せします。
この連載の中で、私は、自分の数々の失敗を語ってきました。
書きながら、「こんな失敗続きで、自分は本当にダメな社長だったな」と思う反面、「でも、ここまで生きてこられたということは、我が社は生きる価値があったということだ。その価値をこれから大きく育てていこう。本当の勝負はこれからだ」と思いました。
次の「大きな手」を読者の皆様にお届けすることを目標に、いったん本連載を終えます。
 
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<後記>
「建設ビジネスサロン」の立上げに向けて、いろいろな方と相談しています。
近く草案をまとめ、案内を出す予定です。
期限を決めたり、大上段に振りかぶったりせずに、ルーズで“だけど面白い”サロンにしたいと考えています。
ぜひ、ご参加ください。
 
 
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