2019年9月30日号(経済、経営)

2019.10.01


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2019年9月30日号
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発行日:2019年9月30日(月)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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           2019年9月30日号の目次
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◇原発の処理水
★韓国経済のメルトダウン
◇これまでの経済、これからの経済(2)
☆今後の建設需要(2):建設産業の改革
 
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
原発事故の責任を問う裁判で、東京電力の当時の3首脳に対し無罪判決が出ました。
かつて、この原発の仕事に携わった者として複雑な思いです。
「原発事故は防げなかったのか?」という疑問の答えは明白です。
防げたけれど、当時の東電にも国にも、防ぐ仕組みがなかったということです。
しかし、その仕組みを作らせなかった国民の意識レベルが一番の要因かも。
 
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┃◇原発の処理水                          ┃
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韓国が言いがかりをつけてきたことで、福島第一原発の汚染処理水が再び話題になっています。
反原発派は「東電はウソをついて、放射性物質入りの汚染処理水を海に流そうとしている」と、韓国と同じようなことを主張しています。
 
この主張、ある意味では当たっています。
現在、保存タンクに貯められ、海洋投棄が検討されている処理水にはトリチウムが含まれています。
トリチウムは放射性物質の一種ですから、たしかに「放射性物質入りの汚染処理水」ではあります。
しかし、「トリチウム」という単語は恐ろしげな感じがしますが、日本語で書くと「三重水素」となります。
そうです。トリチウムは水素の同位元素の一種で、そもそも海水に大量に含まれています。
半減期は12.3年で、専門的に言うと「β崩壊してヘリウムになる」元素です。
この時、放出されるβ線のエネルギーは小さく、薄紙1枚で止まってしまいます。
 
かつて私が施工を担当した放射光実験施設は、稼働の際、このトリチウムが発生します。
稼働する時、警報サイレンが鳴り、施設の外に出るようアナウンスが流れます。
私は稼働後も点検のため、何度も施設に立ち入っていました。
ある時、作業中に警報サイレンが鳴り退去アナウンスが流れました。
しかし、作業を中断できず、そのまま施設にとどまっていました。
一緒に作業していた職人が不安顔だったので、説明してあげました。
「今、発生しているトリチウムはほとんど無害だよ。この作業服一枚、通過する力も無い。
何の心配も要らないよ」
 
トリチウムは、他の物質とほとんど反応しないため、化学的に取り除くことが難しく、汚染水の処理装置をくぐり抜け、最終的に残ってしまいます。
なので、汚染水ではなく「処理水」と呼ばれているのです。
大量に保管されている汚染水の90%近くは、こうした処理水です。
この処理水を永久保管することは現実的ではないため、トリチウムを基準値以下の濃度にして海水へ放出する案が有力になっています。
しかし、風評被害を恐れる地元漁協などが反対し、暗礁に乗り上げています。
こうした事態を韓国が利用し「放射能五輪だ」と風評被害の拡大に余念がないわけです。
 
放射能に対する国民(世界中の人間かもしれませんが・・)の無知が、この問題の根底にあります。
実際、韓国を含む世界中の原発は、こうした処理水を大量に海水へ放出しています。
それなのに・・となるのは、政府や東電が地道な広報をさぼってきたことの“つけ”なのです。
原田前環境相が「海洋放出しかない」と発言して問題になりました。
記者会見の釈明をTVで観ましたが、素人感丸出しで「こりゃ、ダメだ」と思いました。
「しかない」ではなく「環境に対する問題が無い」ことを科学的に説明するべきでした。
 
小泉進次郎氏が新大臣となりましたが、前大臣同様、まったくの素人を任命する安倍首相の見識を疑いました。
国民や世界が納得するだけの知識と知見を持つプロは、日本にもいます。
首相に少しでも問題意識があれば、こうした安易な人選はしなかったでしょう。
国会議員ではなく、民間から人材を抜擢すべきだったのです。
 
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┃★韓国経済のメルトダウン                     ┃
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前号で、「4000億ドルと言われている韓国の外貨準備高の実態は、1/4の1000億ドル」と書きました。
それを裏付ける記事がいろいろ出ています。
実際、調べていくと「4000億ドルの内訳は有価証券が3000億ドルで、キャッシュは1000億ドル弱」ということです、
さらに、上場株式の時価総額の5割近くを外国人投資家が保有し、しかも大半が短期保有です。
証券市場そのものが、これらの投資が一斉に引くという危険を抱えたままの脆弱体質です。
 
世界の金融市場を動かしている為替商品の取引における韓国の影響力はほぼゼロです。
国別の割合を見ると、イギリス43.1%、米国16.5%、シンガポール7.6%、香港7.6%、日本4.5%となって、この5カ国で79.4%と市場を独占しています。
韓国は、0.7%で15位です。
通貨別で見ると、米ドル88.3%、ユーロ32.3%、日本円16.8%です(売買双方の集計なので、合計は200%)。
韓国ウォンはわずか2%に過ぎません。
公開市場を介さないデリバティブ商品取引に至っては、0.1%とほとんど相手にされていない状況です。
 
こうしたデータが物語っているのは、韓国経済の国際市場での弱さです。
それはつまり国家としての信用度の低さを表しているのです。
韓国政府がすぐにでも着手しなければならないのは経済対策であり、その対策を国際金融市場へアピールすることです。
しかし、経済通が不在に等しい現在の文政権には、その危機が認識できません。
日本との和解が何より急務なのですが、「日本は通貨スワップに応じるべき」と上から目線の言い方しかできないのです。
三度目のIMF管理下に入るのは時間の問題かもしれません。
日本企業は、その余波をかぶらないよう対策を打ったほうが良いかも。
 
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┃◇これまでの経済、これからの経済(2)              ┃
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前号で「貨幣経済に移行すると『蓄財』が起きる。そして『過剰蓄財』となっていく」と説明しました。
では、こうした過剰蓄財を積み上げた者(つまり金持ち)は、ただ蓄財していくだけでしょうか。
日本昔ばなしの長者は千両箱を前に高笑いしていましたが、そんなわけはありません。
現実の長者は、この蓄財を活用して、もっと儲ける(蓄財を増やす)ことを考えます。
 
まず、考えられることは、金貸しです。
過剰蓄財を積み上げる者が出るということは、一方で、必要なモノを買えない者(つまり貧乏人)が出るということを意味します。
貨幣経済が生まれたことで格差が拡大する世界が始まったということです。
つまり、「格差をなくせ」という主張は、「貨幣経済を止めろ」という主張となってしまうのです。
 
話を戻します。
現代でも同じですが、金貸しという商売は「カネにカネを稼がせる」という効率の良い商売です。
いわゆる「濡れ手に粟」商売です。
しかし、大きなリスクを抱える商売でもあります。
その最大のリスクは「貸したカネが戻らない」というリスクです。
幕末の志士として有名な坂本龍馬は借金の返済を迫る相手に「返すカネがあるなら、借りないわ」と、煙に巻いたと言います。
このように金貸しは、非常にリスクの高い商売です。
ゆえに、金貸し商売が始まった頃の金利は100%でした。
「そんな法外な!」と思うでしょうが、それでも2件に1件踏み倒されたら利益はゼロとなってしまうのです。
貸す側からしたら、法外どころか、安心できる金利ではないのです。
 
やがて貨幣経済が順当に回り出し、貨幣の流通量が実態経済の2倍近くになってくると、カネの貸し借りの原資が安定し出します。
定額の給料をもらえる人(つまり、サラリーマン)が出現するようになると、借金踏み倒しのリスクも軽減されていきます。
それにつれ金利も下がってきて、金貸し商売は拡大していきました。
そのことで、利益を後で回収する「投資」がスムースに出来るようになり、経済は活性化されていきました。
江戸時代も、3代家光の頃になると、国内の戦争はほとんど無くなり、サムライの主要な仕事は事務作業となり、ますますサラリーマンとなっていきました。
それでも家計は必ずしもバランスせず、借金への需要は増え続けました。
この時代、幕府の旗本(今の国家公務員)や大名の城勤めの侍(地方公務員、企業社員)は世襲制でしたから借金踏み倒しの恐れが少ないとして、安い金利でカネが借りられました。
それでも金利は25%くらいでしたから、決して低金利とは言えません。
これでも、4人に1人に踏み倒されたら利益はゼロになります。
つまり、カネを貸す側からしたら、25%は譲れない水準で、現代でも通じる数字なのです。
 
金貸しの話は、経済の核心的な話なので、次号以降、もう少し続けます。
 
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┃☆今後の建設需要(2):建設産業の改革              ┃
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前月号の予告で「地方行政の弱さの解決策を論じる」としましたが、その前に建設産業の弱さを論じることにしました。
 
働き方改革や情報化施工の波が産業の最後尾を走っている建設産業にも及び始めました。
そうした記事が業界紙に連日掲載されていますが、実態はどうなのでしょうか。
記事になるのは大手や中堅企業の取り組みばかりで、地方、それも中小企業の記事は皆無と言ってもよい状況です。
現場の土日閉所にしても、業界紙を読む分には「進んでいる」という印象を受けますが、付き合いのある会社に聞くと、歯切れの悪い返答ばかりが返ってきます。
私自身の現場経験は、もう古い時代の話となり参考にならないかと思いますが、仕事柄、今でも現場に接する機会は結構あります。
それを見る限り、現場の状況がそれほど激変したとは感じられません。
大手や中堅のモデル現場では対外的な広報を意識して土日閉所を掲げていますが、追い込み時期にはそれも崩れているという本音を聞くこともあります。
実際、自分たちが発注者の立場で施工した案件でも、引き渡し1ヶ月前からは土日閉所どころか、土日全部が作業日となってしまいました。
発注者としても、完成の遅れを容認するわけにはいかず、「休日なし」を黙認せざるを得ませんでした。
 
人間作業の比率が圧倒的に高く、それなのに不確定要素を潰しきれない業界慣習が最大の障害となっています。
全てが一過性の生産となってしまう建設産業の宿命ともいえますが、ここを是正していかない限り、土日閉所は絵に描いた餅に過ぎないとなってしまうでしょう。
 
ITによる情報化施工は、人間作業の比率を下げる切り札として期待されていますが、その道程は険しく、手すら付けられない中小企業が大半ではないかと思われます。
重層下請け構造が最大のネックと言えますが、ここに手を付けるということは業界の再編・縮小を意味することから、業界も行政も及び腰です。
 
私は、働き方改革や情報化施工を批判したいわけではなく、推進すべきという考えです。
しかし、表層で語られている土日休みとかBIMとかの「美しい話」が、根の深いところにある根本的な「暗い話」を置き去りにしていることを危惧しているのです。
華々しい話題をぶち上げて世論を喚起することも必要ですが、地道に根源的な問題を取り上げ、是正していく活動はもっと大事です。
そうした活動の一端が「地方行政の弱さの解決」に繋がっていきます。
改めて、次号で、そのことを論じたいと思います。
 
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<編集後記>
ソフトバンクの売上が10兆円に近づいています。
日本の10兆円企業は、トヨタ、ホンダ、日産、NTT、日立の5社です。
NTTを除けば、全て製造業です。
そこに割って入ろうという孫正義会長の野望が各所で語られていますが、同社が1円の法人税も払っていないことが話題になっています。
日本の法人税法がざる状態なのを巧みに利用している同社ですが、それを称賛する気にはなれません。
消費税が10%になる日を迎える一般国民からすると、もやもや感は消えませんね。
 
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