2021年1月1日号(国際、政治) (臨時号)

2021.01.05


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年1月1日号
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発行日:2021年1月4日(月)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年1月1日号の目次
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◇国際情勢の激変
◇欧州各国は腹をくくった
◇米国は、戦略を大転換するか
◇中国の対抗戦略は?
◇日本はいかにするべきか
 
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こんにちは、安中眞介です。
新年の年明けに、臨時に国際問題の特集号をお送りします。
 
コロナ禍が深刻化する中での新年です。
本メルマガをお読みの皆様も、とても「おめでとう」という気分ではないかと思います。
その気分を、さらに暗くするかもしれませんが、新年の特集号として、日本を取り巻く国際情勢の分析をお送りします。
最初に国際情勢全体を俯瞰した上で、米国、欧州、中国、そして日本それぞれの政治・軍事戦略を簡単に分析してみたいと思います。
 
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┃◇国際情勢の激変                         ┃
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コロナ禍の拡大をよそに、昨年10月から国際情勢は大きく動き出している。
10月6日:日米豪印の外相が東京に集まり、第2回の4カ国外相会議を開いた。
この会談で4カ国は、海洋進出を進める中国を念頭に、日本が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進し、さらに多くの国々へ連携を広げていくことの重要性で一致。
 
11月17日:ドイツのホイスゲン国連大使は、日米英仏を含む39カ国を代表して中国の人権問題を批判する声明を発表。
 
このように、EU主要国は、環太平洋の主要国である4カ国と団結し、中国の覇権主義的な海洋進出を封じ込めようとする姿勢を鮮明にした。
こうした「中国包囲網」に危機感を覚えた中国の王毅外相は、外遊先のマレーシアの記者会見で日米豪印外相会議に触れ、「インド太平洋版の新たなNATO(北大西洋条約機構)の構築を企てている」、「東アジアの平和と発展の将来を損なう」と批判し、警戒心を露わにした。
以下、欧州、米国、中国の立場で戦略を解説し、最後に日本の取るべき戦略を解説したい。
 
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┃◇欧州各国は腹をくくった                     ┃
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英国のEU離脱で揺れている欧州だが、対中国戦略では足並みが揃ってきている。
英国が空母クイーン・エリザベスを中心とする空母打撃群の西太平洋への派遣を決めた。
今年の日米軍事演習にも参加し、長期駐留を念頭に、横須賀、佐世保、沖縄ホワイトビーチを補給基地とする見通しである。
すでに在日米軍や海上自衛隊との共同活動も視野に入れている。
 
フランスも、今年5月、日本の離島で行われる日米の「離島の防衛・奪還訓練」への参加を決めた。
英国同様、空母艦隊の派遣も考慮中とのことである。
さらに、ドイツも駆逐艦の派遣を決めたという報道も入ってきている。
中国との親和性が高いと見られていた欧州主要国が足並みを揃えて、中国との対決姿勢へ舵を切ったのである。
 
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┃◇米国は、戦略を大転換するか                   ┃
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このように、日欧豪印が対中国戦略で足並みを揃える中、その中心に位置する米国が、未だ大統領選挙後の混乱を抱えているのは皮肉としか言いようがない。
 
バイデン次期大統領は、1月20日が来るまでは何もできない。
これまで、バイデン次期大統領の安全保障に関する発言がほとんど無いので、正直、今後の米国の外交・軍事戦略は読めない。
それゆえ、国防長官の人事が注目されていたが、有力視されていたオバマ政権の国防次官だったミシェル・フロノイ氏ではなく、ロイド・オースティン元陸軍大将が浮上した。
フロノイ氏なら女性初、オースティン氏ならアフリカ系初ということで注目を集めた人事となっているが、正式発表はまだである。
中東や西アジアを統括する中央軍司令官だったオースティン氏の軍歴は豊富で、米軍内部の支持は高いと見られるが、政治的手腕はやや不安視されている。
 
また、駐在中国大使に名前が上がっているピート・ブティジェッジ氏は、民主党の大統領候補選の初戦で名前を売った若い政治家である。
ゲイであることを公言していることもあって、人権で中国に圧力を掛ける狙いもあるとされている。
 
トランプ氏とは違う外交姿勢を鮮明にしたいバイデン氏ではあるが、中国の外交・軍事姿勢に対する米国民の世論は嫌悪に近い状態になっている。
日欧豪印の中心にいる米国の戦略路線は、トランプ政権以上に強硬になっていく可能性が高いと見られる。
 
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┃◇中国の対抗戦略は?                       ┃
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日米豪印4カ国に欧州が加わる。
この戦略的意図を一番分かっているのはやはり中国自身で、自分たちが包囲されつつあることに危機感を募らせている。
 
では、中国はどのように西側先進国に対抗しようとしているのか。
昨年10月5日、同じ国連総会の第3委員会において、中国の張軍・国連大使はアンゴラ、北朝鮮、イラン、キューバ、ジンバブエ、南スーダン含む26か国を代表して、アメリカと西側諸国による「人権侵害」を批判した。
中国を含めて「人権」を語る資格があるとはとても思えない国家ばかりだが、世界の「問題児国家」や「ならず者国家」「古くからの独裁国家」が中国の旗下に馳せ参じ、「反欧米」で結束したこの構図は、これからの中国の姿勢を鮮明に表したものと見ることができる。
つまり、「中国を基軸とする独裁国家群vs西側民主主義先進国群」という、新しい対立構造を作ろうとしているのである。
 
中国は、軍と民間が統合された軍民統合で世界の覇権を狙っている。
その一例が、新型コロナウィルス禍に乗じ「健康のシルクロード」なるものを提唱し、開発途上国へのワクチンや医療品などを供給する戦略である。
実際、アリババはエチオピア、UAE(アラブ首長国連邦)などにワクチン倉庫を建設、ブラジル、モロッコ、インドネシアにはワクチン生産拠点を建設中である。
さらに、こうした拠点を中南米にも広げようとしている。
建前は「ワクチン供給で各国の国民を助ける」としているが、コロナ禍を利用して中国の影響力を高めようとしているのは見え見えである。
 
実は、中国の一部エリートは、そのような習一派との無理心中を恐れている。
古くから習近平主席の腹心であった王岐山(ワン・チーシャン)副主席が、習近平グループの保守路線から距離を置きつつあるとの情報もある。
今後の中国トップ層の動きに注目していきたい。
 
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┃◇日本はいかにするべきか                     ┃
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日本は、「安全保障は米国、経済は中国重視」という政策は通用しないと腹をくくるべきであろう。
日本に進出している中国企業は、すべて人民解放軍の出先機関でもあると認識すべきである。
すでに、サイバー空間は戦場と化している。
また、宇宙開発において、ロシアすら参加している国際協力の輪に入らず、独自路線を貫く中国をみていると、宇宙が戦場と化す日も来ると認識したほうがよい。
 
すでに、日本の大学、研究所などにも中国人民解放軍の手は複雑に入り込んでいる。
たとえ民間の技術とはいえ、新技術は軍事にとっても魅力的なものである。
もはや経済と軍事は切り離すことができない関係となっている。
 
遅まきながら、こうした新しい脅威に対応するため、日本政府は国家安全保障会議に経済班を作り、さらに、貿易経済協力局を中心に体制強化を図ってきている。
 
今の中国指導部は、軍事力を中心に据えた外交力で「中国の夢」を実現しようとしている。
そして、第一のターゲットは台湾であり、その先に沖縄までを見据えている。
 
日本人として考えるべきことがある。
台湾は、民主主義・市場経済で日本と同じ考えを有する国家である。
しかし、その台湾に米国の軍事基地はない。
台湾有事における米軍の出撃基地は沖縄であり、第7艦隊の母港は横須賀である。
必然的に日本列島は中国軍の標的となる。
台湾が侵攻された場合、否が応でも日本は戦わなくてはならないのである。
そして、自衛隊に中国と戦う力があることが重要なのである。
その力が米軍と一体になっていることを恐れるがゆえに、中国は台湾侵攻に躊躇している。
バイデン新政権は、トランプ政権とは違い、こうした日本の役割を重要視するであろう。
 
ただし、求められる日本の役割は、米中および台湾との調整役である。
問題は、日本でそのようなことができる力量を持つ政治家がいないことである。
中国の台湾侵攻を思いとどまらせるよう、外交と武力で牽制・抑止していく戦略家が欲しい。
菅政権は“つなぎ”の役割で、次は岸田氏が有力視されている。
岸田氏は、外務大臣として「慰安婦合意」をまとめた経験もあるし、バイデン政権とのパイプもある。
しかし、線の細さと二階幹事長の影響力から自由になれるかが懸念材料である。
二階幹事長を使いこなすぐらいの力量の片鱗でも発揮して欲しいものである。
 
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<編集後記>
日本国内に目を向けると、ひとつの価値観で収められる時代ではなくなり混迷が深まっている。
しかし、日本人は、まだまだ周囲に合わせようとする「ムラ社会」傾向が強く「空気を読め」という無言の圧力がかかる社会である。
そうではなく、もっと自由に自分の意見をきちんと主張し、しかし、それを自分自身が率先していける行動力を備えた人材が渇望される。
若い経営者、若い人材に期待するところである。
 
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