2021年4月30日号(経済、経営)

2021.05.06


HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2021年4月30日号
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発行日:2021年5月1日(土)
 
いつもHAL通信をご愛読いただきましてありがとうございます。
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2021年4月30日号の目次
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◇これからの近未来経済(6):バイデン政権の経済政策
◇経済政策の通信簿(その1)
☆商品開発のおもしろさ(11)
★今後の建設需要(16)まちづくり
 
<HAL通信アーカイブス>http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
今号は、経済、経営の話題をお送りします。
 
「衆参補選で与党全敗、首相の求心力低下」
決まりきった見出しに「芸の無いこと・・」とつぶやいてしまいました。
この結果、誰もが予想していたことです。
私なら「予想通り、大きな変化なし」と書きますね。
3つの選挙区のうち、北海道は不戦敗、長野は野党の地盤、唯一自民党地盤の広島は、選挙違反で逮捕された議員の後釜選挙です。
与党に勝てる要素が全く無い選挙です。
たから「予想通り・・」が正しい伝え方です。
 
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┃◇これからの近未来経済(6):バイデン政権の経済政策        ┃
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就任3ヶ月でバイデン大統領の経済政策がはっきりしてきました。
先に政権は200兆円規模の経済対策に加え、200兆円規模の先端技術開発への投資を発表しました。
しかし、その財源を国債発行に求めるのかという疑問がありました。
その答えとして、大統領は財源を増税に求めるという政策を発表しました。
中身は、年収100万ドル以上の富裕層への税率を現行の20%から39.6%に引き上げる案です。
 
米国の富裕層は、収入の多くを投資によるキャピタルゲインで得ています。
すでに、所得が20万ドル(夫婦合算の場合は25万ドル)以上の者に掛けられている純投資所得税が3.8%ですから、キャピタルゲイン税率は43.4%に跳ね上がる計算です。
日本では考えられない規模の大増税です。
この報道を受け、米国の株式市場は下落しました。
 
また、増税には議会の承認が必要です。
当然、野党共和党は反対に回りますし、与野党が50:50の上院では、身内の民主党の中から一人でも造反が出れば否決されます。
 
ここで、誰もが疑問を持つはずです。
バイデン大統領は、豊富な政治経験を持つ百戦錬磨の政治家です。
否決される危険を犯してまで、なぜ、こんな大増税案を出したのでしょうか。
たぶん、これが彼特有の政治戦術なのだと思われます。
先に39.6%という「過激な」案を出し国民の関心を引きつけ、落とし所をぼかす作戦です。
狙っている落とし所は、現行の20%との中間、29%あたりでしょうか。
 
さらに、この金持ち増税案に合わせて、一般の所得税の限界税率を現行の37%からキャピタルゲイン税率と同じ39.6%に引き上げる方針も伝わってきています。
対象者の多い、こちらの法案こそが真の狙いともいえます。
先に金持ちへの大増税案で注目を引きつけてから、一般の所得税増税案を出すというわけです。
バイデン大統領は、結構したたかな戦術家です。
菅総理は、大統領からこうした戦術を学んでくれば良かったのにと思いますが、さて、どうでしょうか。
 
この増税案に反応して、米国の株式市場は含み益の多いハイテク関連の銘柄が多く売られ、株価は下落しました。
しかし、長期金利は上昇しませんでした。
それは、冒頭で述べた成長戦略の財源が国債増発だけでなく増税も充てることが明確になったからです。
来年の中間選挙をにらみ共和党は反対するでしょうが、成長戦略には反対しにくいですから、難しい対応を迫られる公算になります。
この先のバイデン政権の政策には目が離せないようです。
 
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┃◇経済政策の通信簿(その1)                    ┃
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弊社の創業は1991年4月です。
バブル崩壊は1991年3月といわれていますので、まさにバブル崩壊とともに創業したわけです。
その後、日本の景気は急下降し、今に至るまで低迷が続いています。
弊社はこの波に翻弄され続けましたが、それが創業の狙いでもありました。
厳しい経済環境に生き残れてこそ本物の経営者になれると思ったからです。
結果、なんとか30年を生き延びてきましたが、それだけでは合格とはいきませんね。
 
そこで本題です。
この30年間の歴代首相の経済政策の通信簿(100点満点)をつけてみようと考えました。
長くなるので、3回ぐらいに分けてお送りします。
 
海部俊樹(89年8月~91年11月)
株価は10ヶ月で半値に下落。さしたる成果もなく、91年11月で総辞職。
通信簿は0点。
 
宮沢喜一(91年11月~93年8月)
公共事業を中心に24兆円弱の景気対策を実施。だが効果は限定的で不況を食い止められず。
通信簿は30点。
 
細川護熙(93年8月~94年4月)
円高で株価は暴落。合計21兆円強の景気対策も効果なく、消費税増税案の反発を受け政権を投げ出す。
通信簿は0点。
 
羽田孜(94年4月~94年6月)
超短命だったので成績を付けられず。
 
村山富市(94年6月~96年1月)
政治的駆け引きの中で社会党党首の首相が誕生。
しかし、経済は苦手で金融機関の破綻が相次ぐ。
14兆円超の景気対策を打つも住専処理問題で効果ゼロに。
通信簿は10点。
 
橋本龍太郎(96年1月~98年7月)
消費税率を5%に引き上げ。北海道拓殖銀行、山一証券などの大型破綻が続く。
企業倒産負債総額14兆209億円は過去最高額に。
「財政構造改革」と称して、政府支出(特に公共投資)を削減。同時に消費税率を引き上げ。
つまり、政府需要と民間需要の両方を一気に減少させる政策で、日本経済がデフレ不況に突入する当然の結果を招いた。
通信簿はマイナス100点。
 
小渕恵三(98年7月~2000年4月)
総額107兆円に及ぶ史上最大の経済政策を実施
さらに18兆円の追加景気対策を打つも、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が破綻。
企業倒産負債総額は14兆3812億円と過去最高額を更新したが、徐々に対策の効果が出て、翌年は13兆5522億円と減少、日本経済は恐慌をまぬがれ、一息つくことができた
もう少し長く公共投資の拡大を続けていれば、日本経済はデフレを脱却し、成長軌道に乗っていたと思われたが、小渕首相の急死で頓挫。
通信簿は80点。
 
この続きは次週で。
 
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┃☆商品開発のおもしろさ(11)                   ┃
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前号で、いきなり「親切なバーテン」と「客が感じる別世界という商品」の話をしましたが、少し補足説明させてもらいます。
店のあった場所は、渋谷から横浜を結ぶ東横線の沿線でした。
駅から数分のビルの地下に、その店はありました。
 
私は、店に入る前に、近くのバーのバーテンに話を聞くことを日課にしていました。
普通に考えれば「忙しい」と断られるのがオチですが、しかし、どういう風の吹き回しか、彼は開店の準備をしながらお酒の味やクセ、カクテルを作るときの秘訣とか、いろいろ教えてくれたのです。
 
そんなある日、私は彼にこう聞きました。
「水商売の商品とは、何なのでしょうか?」
彼は、ちょっと困った顔をしましたが、こう話してくれました。
「そうだな・・、第一は酒、それも酒に付加価値を付けるバーテンの技術が加わった酒、それと客を気持ちよくさせるコツを心得たホステス、そして、客が感じる別世界が商品かな」
最後の「客が感じる別世界」が私の記憶に強く残り、考え続けたのです。
 
話を戻します。
最初の1ヶ月が終わって、給料を支払い、家賃や買掛金を支払い、お酒の残量確認(つまり棚卸し)、伝票の整理、残金の確認、収益計算をしたところ、若干の黒字になりました。
ようやく赤字体質から脱したと、母と喜び合いました。
あの日のことは、今でも忘れられません。
水商売は典型的な日銭商売ゆえ、結果はストレートです。
この経験が、その後のビジネス人生に生きたといえます。
 
ただし、私の給料は大学の学費と引き換えでゼロ、母は無給でしたから、まだまだ利益は不足していました。
でも、収益を上げる基礎が出来た意味は大きく、「このやり方で頑張ろう」という気持ちが生じました。
 
それから半年で金銭的余裕も出来、店の経営も軌道に乗ってきました。
私は、改めて、例のバーテンに「客が感じる別世界が商品」のことを聞きに行きました。
彼は「そんなこと言ったか?」と言いながら、話してくれました。
 
「水商売の客は、日常と切り離された別世界を味わいたくて来るんだよ」
「例えば、女性にモテっこない“冴えない”ヤツでも、カネさえ払えば若い女の子が相手をしてくれる。
もちろん、店の中だけの話で、カネと引き換えだってことくらい、みな分かっているさ」
「でも、もしかしたら・・という淡い期待もあるし、実際、すぐ側で感じる若い女の子の濃厚な気配に理性は吹っ飛び、背伸びしてカネを使うんだよ」
「しかし、大事なことはここからだ。その客が、後で空になった財布を見て、『こんなこと、もう止めよう』となって店に来なくなったのでは、商売が続かない。『また行こう』と思わせることが大事だ。
こんな“いい余韻を残せる”店の雰囲気が商品と言えるかな」
 
私が「なんか危ない“別世界”のようですが」と言うと、彼は大笑いして「そうだな」と言い、話を続けました。
「水商売の接客とは『疑似恋愛』だな。その時間限りのお芝居恋愛だよ」
「いいかい、女の子がこの商品の真の中身じゃない。あくまでも“まんじゅうの皮”だ。皮も美味いにこしたことはないが、“あんこ”じゃない」
 
私が「じゃあ、“あんこ”は何ですか?」と聞くと、彼は、こう答えました。
「この店で過ごす時間の『別世界感』だよ。女の子との会話もいいけど、純粋に酒が好きな客もいる。バーテンと話したい客もいる。ママさんの話を聞きたい客もいる。そうしたすべての嗜好を満たす店の空気だよ」
 
まるで禅問答でしたが、最後に彼が言った次のことが引っかかりました。
「まだ、この店に“あいつら”は来てないみたいだけど、本番はこれからだよ。そんとき、オレは助けられないから、あんたの力で切り抜けるんだぜ」
 
それが何のことか分かりませんでしたが、まもなく、そのことが分かる日が来ました。
その話は次号で。
 
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┃★今後の建設需要(16)まちづくり                 ┃
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SDGsについて、前号では説明不足でした。
読者の皆様には「釈迦に説法」ですが、簡単に説明します。
2015年に国連サミットで採択された2016年からの30年間で達成すべき「持続可能な開発目標」ということで、17の目標と169のターゲットで構成されています。
国連好きの日本がこの言葉に飛びつき、政府、マスコミ、企業が連呼する状況になっています。
しかし、肝心の国民の多くは「なんのこっちゃ?」という状態だと思います。
 
実は、SDGsの17の目標の中に「住み続けられるまちづくり」があります。
だから、自分にも関係する言葉なのですが、なんでもかんでも横文字をありがたがる風潮に、嫌味のひとつも言いたくなったわけです。
前号で述べた「もっと人間味ある言葉が欲しい」は、生活感のある日本語が欲しいなということで申し上げました。
 
本題に戻ります。
まちづくりのプロジェクトを進める過程で、多くの専門家や大学の先生方と知り合い、様々な討議を行い、現在も続いています。
その中で感じたことです。
 
原野の中に新しい街を作るのでなければ、「まちづくり=街のリノベーション」となります。
ということは、その街には既に人が住んでおり、そこに新たな人も入ってくるという“波乱”が起きるわけです。
最近のはやり言葉の「多様性の受容」が必要となるわけですが、「多様性の受容」とは「わがままを許す」ことにつながり、我欲のぶつかり合いを招きます。
その中で、全員の合意を得る難しさはひとしおです。
多くの人の参加を促し、長い時間を掛けた対話を続け、少しずつ合意を形成するというプロセスが必要となります。
そこには、不動産権利の複雑さが立ちはだかり、私権の調整という難問が口を開けています。
 
かつ、最大の問題はファイナンスです。
「まちづくり」には巨額な費用がかかります。
参加者の自前の資金がぜいたくにある場合や気前の良いスポンサーが現れるなどという「おとぎ話」は、まずなく、金融機関やファンドからの資金調達が必要となります。
しかし、金融機関などと協議すると、必ず聞かれる言葉があります。
「出口戦略をお聞かせください」
ようするに、「いつ、お金を返していただけますか?」という、金融機関としては当然の質問です。
「いやあ、そう言われても、いつかは出来ますから・・」では、どこも門前払いです。
 
それゆえ、デベロッパーによる開発は、排除、選別の誘惑に勝てないのです。
結局、言葉で顧客を幻惑するしかなく、空虚な言葉が氾濫することになるのです。
しかし、これも一企業としてはやむを得ない制約ですね。
 
では、この制約をどう乗り越えるかの難問を、次回論じてみたいと思います。
 
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<編集後記>
NHKの朝の番組で興味深い実験が紹介されていました。
大学生を使った実験で「記憶の定着」がテーマでした。
ネットの発達で、「辞書を引く」ことが死語となりつつありますが、「スマホ検索は記憶に残らない」ということです。
辞書を引く場合は3~4割ぐらい残る記憶が、スマホの場合はゼロでした。
 
また、リアル会議では、参加者の「大脳の前頭前野」が同調して活性化しますが、オンライン会議では、この同調がほとんど起きないのです。
議論が深まらないわけで、これらの結果には納得です。
日頃実感しているからです。
また、睡眠と運動が脳を活性化させるという指摘にも納得です。
朝のランニングにも拍車がかかりそうです。
 
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