2017年1月15日号(国際、政治)

2017.02.01

HAL通信★[建設マネジメント情報マガジン]2017年1月15日号
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発行日:2017年1月15日(日)
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2017年1月15日号の目次
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★欧米の慰安婦報道にこそ注意を向けるべき
★米中ロ、そして日本の軍事力
★プーチン大統領は、本当にサイバー攻撃を指示したのか?
☆トランプ大統領の米国とどう付き合うか(1)
http://magazine.halsystem.co.jp
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こんにちは、安中眞介です。
だいぶ遅くなりましたが、新年おめでとうございます。
新年最初の今号は国際問題、政治問題をお送りします。

新年こそ明るい話題をと思ったのですが、問題山積みの世界、そして日本です。
腹をくくって、この混迷の時代を乗り切っていこうと覚悟するしかないようです。
元英国首相サッチャーは、「こと安全保障に関する限り、自分は保守的なほうに間違えたい」と述べました。
賛否はともかく、重みのある言葉です。
米国新政権の対日政策の先行きが見えない中、中ロ両国の軍拡と威嚇は増える一方です。
日本国民は、先のサッチャーの言葉を噛み締める覚悟が必要なのかもしれません。

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┃★欧米の慰安婦報道にこそ注意を向けるべき            ┃
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釜山に設置された少女像は、このままでは韓国外交の大きな汚点となります。
しかし、大統領の疑惑で火がついた韓国国民の気持ちは収まりそうにありません。
出口のない苛立ちが日本に向かっているのです。
日本は、当面、韓国とは距離を置くしかありません。
駐韓大使と総領事の一時帰国は、そうした日本の意思を表示する意味で妥当な策といえます。
ただし、日本政府がすぐに手を打たねばならないことがあります。
それは欧米のリベラル系メディアとそれに呼応する欧米世論への対策です。
たとえば、先日の英国BBCの記事です。
韓国の大学教授が「一部の慰安婦は”自ら売春を志願した”、あるいは“日本兵と恋仲になった女性もいた”」と指摘したことに言及して、
論調は日本軍による強制を否定しているかのように思わせながら、最後には、決まり文句の「慰安婦は”残酷な搾取”であった」と日本非難で締めくくっています。
どうにも“おかしな”論理の組立てなのですが、我々は、これが欧米メディアの実態なのだと理解する必要があります。
考えるべきは、どうして欧米メディアは、こうまでして「日本を悪者にしたいか」です。
それは先の世界大戦を「悪に対する正義の戦い」として、永遠に留めておきたいからです。
特に、米国にとっては、原爆投下を永遠に「正当な行為だった」としておくためには、徹底的に旧日本軍の邪悪さを強調し、日本人を除くアジア人は「“我々が救った”哀れな被害者」としておくことが都合が良いのです。
この心理はリベラル派も保守派もそう変わらないので、慰安婦問題に対する欧米の世論はそう簡単には変わりません。
さらに、欧米社会(特に米国)で生きている日系人たちの中に、日本人としての要素を捨て、白人社会に合わせようとする者が少なからずいることも問題です。
彼らが日本非難の急先鋒になっていることに対し、日本政府も日本国民もあまりにも無頓着です。
慰安婦を「性奴隷」と呼び、日本非難を声高に主張していたマイク・ホンダ氏が日系人であることを思い出せば分かると思います。
そもそも米国社会に「慰安婦=日本の悪行」という考えを根付かせたのはホンダ氏です。
しかし、「ホンダ氏が悪い」というより、こうした考えが根付いたことを厳しい現実と受け止め、欧米人の関心を過去より未来に向ける努力を継続すべきなのです。
良い兆しもあります。
1月7日のニューヨーク・タイムズの記事では、釜山の少女像をめぐり日韓の摩擦が激化していることに関し「1年前の日韓の慰安婦合意は守られなくてはならない」との立場を表明しました。

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┃★米中ロ、そして日本の軍事力                  ┃
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中国の「環球時報」に興味深い記事を見つけた。
それは1隻の潜水艦に関する記事で「乗員は、三日間熱い料理を食べていない」とあった。
もちろん美談仕立ての記事なのだが、こんなことが美談になっていること自体に驚いた。
そのくらい中国軍では食事状態が悪いのであろうか。
その不満が表面化しないよう、こんな”おかしな”記事を書かせたのかと思ってしまう。
誰もが分かっていることだが、米国の軍事力は群を抜いている。
武器の質・量だけでなく、兵員の質や組織体制、指揮命令系統、すべてにおいて中ロを圧倒している。
特に、兵站(補給力)と兵員の訓練度においては、中ロ両国は足元にも及ばない。
先日、中国の空母艦隊が第一列島線(九州から沖縄を経て、台湾および南シナ海の外縁を結ぶ線)を越えて太平洋へ進出した。
日本のメディアは「中国海軍の軍事力向上」と報じたが、今の中国海軍には「そこまでが限界」と解釈するほうが正しい見方である。
つまり、中国は「そこまで行けるんだぞ」というアピールがしたかったのだが、「そこまでしか行けない」ことを認めたようなものである。
そこを超えれば兵站が届かず、万が一戦闘になってしまったら、この艦隊は全滅してしまうのである。
どの国であれ、強大な軍事力を支えるには強い経済力が必要である。
では、今世紀中頃にはGDPで米国を抜くといわれる中国は、軍事力で米国に追いつくのか。
答えは“NO”である。
その理由が冒頭の「潜水艦の美談」である。
今の中国の指導層は、軍事力というものを正しく理解していない。
いや、理解しているが、質・量を整えることに精一杯で、戦略構築が後回しになっているものと思われる。
近年、中国は海軍軍人の教育訓練をロシアに委託しているようであるが、兵站と並んで軍人の質の向上が思うようにいっていない証拠である。
たしかに、中国海軍の軍人がロシア海軍のノウハウを学ぶことが出来れば、中国海軍の運用レベルはそれなりに向上する可能性があるが、ロシアとて、中国には警戒している。
効果は限定的なものに終わるだろうと思う。
では、日本はどうかというと、中国を笑うことは出来ない。
もっとお寒い状態だからである。
日本の場合、兵員、艦艇、戦闘機などの数量においては、中ロよりかなり劣っている。
しかし、質においては同等かそれ以上であり、兵員の能力においては両国を凌駕しているといえる。
だが、自衛隊の足を縛っている現在の法律があるかぎり、有事に遅れを取ってしまうことは確実である。
現行法では、自衛隊には「平時の自衛権」が認められていない。
政府によって「有事」と認定され、さらに「防衛出動命令」が出てはじめて軍事行動ができるのである。
だが、中国やロシアの軍用機が接近した時に、航空自衛隊がスクランブル(緊急発進)をかけているではないかと反論されるであろう。
たしかにそうなのだが、あのスクランブルは法を厳密に解釈すると違法である。
仕方ないので、法律を拡大解釈し、「軍事行動」ではなく、「警戒監視」として戦闘機を発進させているのである。
ゆえに、自衛隊機は領空侵犯があっても戦闘はできない。
ネットでは「撃ち落とせ!」というような勇ましい意見が散見されるが、法律の拡大解釈でも「できない」のである。
相手から攻撃を受けた場合にのみ自衛のための反撃ができるが、その時には・・「時、すでに遅し」となる。
自衛隊機のパイロットにしてみたら「やってられない」のが現状なのだ。

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┃★プーチン大統領は、本当にサイバー攻撃を指示したのか?     ┃
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結論から言えば、「本当」です。
FBIの報告書を読むと、APT28とAPT29というサイバーソフトを民主党のサーバーに侵入させ、情報をリークさせていました。
驚くなかれ、APT29は2015年春頃から、APT28は2016年春頃から民主党のサーバーに侵入していたのですから、明らかに米国大統領選挙が狙いでした。
FBIの報告書には、その仕組みの図解まで載っていました。
APT28はロシアの軍参謀本部情報総局(GRU)が開発したソフトで、APT29は連邦保安局(FSB)が開発したものですから、ロシアの犯行であることは確実です。
その手口を簡単に説明すると、以下のような方法です。
政府関係者を含む1000人以上に対し、マルウェアに感染させるリンクを張った“なりすましメール”を送り続けます。
こうしておけば、少なくとも1人がマルウェアに感染すれば、そのルートで大量の電子メールを盗み出すことができます。
実際、そうして入手したクリントン氏のメールを大量に内部告発サイト「ウィキリークス」にリークし、外部に流出させたわけです。
また、なりすましメールで「パスワードを変更するよう」呼びかけパスワードを盗み出し、電子メールなどにアクセスしていました。
メールの流出がクリントン陣営には致命傷ともいえる痛手を与えたわけですから、プーチン大統領の高笑いが聞こえてきそうです。
ロシアの情報工作には伝統的な強さがあります。
第二次世界大戦では、米国のルーズベルト大統領周辺にソ連のスパイ網が張り巡られていたことは周知の事実です。
こうしたスパイ網によって得た情報で、ソ連は、日米開戦や終戦時の対日参戦に対するルーズベルト大統領の判断に大きな影響を与えました。
誰もが知っているように、プーチン大統領はKGB(ソ連国家保安委員会)出身です。
裏の戦略を知り尽くしている人物です。
プーチン氏は、大統領に返り咲いた2012年からハッカー戦争やサイバー戦争の能力向上のため、資金と人材を大量に投入したと言われています。
今のロシアの戦争は、情報戦争と実際の軍事行動とを組み合わせた「ハイブリット・ウォー」とでも呼ぶような戦術なのです。
こうして、戦争と平和の境を意図的にぼかすことで、ウクライナなどで侵略の成果を収めているわけです。
このように、サイバー空間はすでに戦争状態に陥っていて、その影は現実社会に落ち始めています。
オバマ大統領は、この度35人のロシア外交官を国外追放しましたが、1年以上も後手を踏みました。
プーチン大統領は「報復はしない」と余裕を見せています。
この戦争の第1ラウンドはロシア優勢で推移していますが、オバマ大統領の平和主義が裏目に出て、
核戦力と情報戦争において、米国は停滞を余儀なくされました。
次のトランプ氏は、プーチン大統領の発言に対し、「ウラジミール・プーチンの対応は偉大だ。私は常にプーチンが非常にスマートであることを知っている!」とツイートしています。
すでにトランプ氏がロシアに取り込まれているのか、あるいは、その“ふり”をしているだけで、巻き返しを狙っているのかは分かりません。
どちらにしろ、物騒な世界になってきたことだけは確かです。

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┃☆トランプ大統領の米国とどう付き合うか(1)          ┃
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いよいよ今月20日にトランプ大統領が出現する。
報道内容を鵜呑みにしていると「ゴジラ出現」みたいに感じてしまうが、しばらくは冷静に観察していくしか手はない。
トランプ氏の人間性や考え方は、当選当時よりは鮮明になってきた。
短気、独りよがり、自惚れ屋、差別主義、古い価値観・・と、短所のオンパレードである。
長所を探すのは難しいが、家族思い、平気で前言を翻(ひるがえ)す(短所とも言えるが・・)などの性格を、日本はうまく利用するしかないであろう。
トランプ氏の発言で「おもしろい」と思ったことがある。以下である。
「他人を挑発するのは大好きだね。それは本当だ。競うのが大好きだし、競争はときに他人を挑発する。挑発することは厭わない。特にそれが正しい種類の人間を対象にしているときはね」
つまり、「正しいことをして、正しいことを言う人間」が嫌いなのである。
そうした人間を見つけると、「挑発したくなる」のである。
このようなことを平気で公言できる人間、これがトランプ氏である。
日本ではそうではないが、米国では、「正しい(と思われる)人」が、グローバル社会で「先端的な知的労働者」として評価され、巨万の富を得ている一方で、多くの市民はジリ貧を感じている。
ヒラリー氏は、そのような国民に対し「再分配に期待するか、学び直しをしなさい」と言った。
それに対し、トランプ氏は、「この国を再び、強く豊かにしたいんだ」と言った。
そのための方策として「アメリカ・ファースト」と主張した。
ヒラリー氏の意味不明で回りくどい言い方よりも、トランプ氏の直線的な言い方のほうが大衆に受けるのは当然である。
より深刻なことは、従来の「先進国モデル」を否定するトランプ現象が21世紀の世界共通の課題となり、米国がその課題の真っ只中に突っ込んだということである。
その米国のこれからであるが、米国は大統領だけで動かせる国ではなく、議会の力も同等に強い。
しかも、与党共和党は上下院を制している。
日本は、1月20日以降の米国議会の動きを注視していくことが肝心で、ここであわてて動くのは損である。
次回は、トランプ時代の日本の外交・軍事戦略を論じてみたい。
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<編集後記>
2017年1月から建設ビジネスサロンを開設しました。
まずはネットの世界からと、メール会員の募集から始めました。
どのようなお立場、お仕事をされている方(あるいは、されていない方)でも結構です。
会員になる資格も必要なければ、規約も会費もありません。
気楽にご参加くださることをお願いいたします。
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とは言っても、会員のみなさまからは、なかなか切り出しにくいと思われるので、最初は当方から情報を出します。
普遍のテーマとして、「基本の原価管理術」という連載をお届けすることから始めます。
なお、通年で会員募集しますので、まだの方、思い立った時にご参加ください。