米中首脳会談

2026.05.18


一言で言えば「具体性、ほぼゼロの会談だった」です。
「9月24日に習主席夫妻をホワイトハウスに招待する」とのトランプ発言も、11月の苦戦が予想される中間選挙対策の“子供だまし”のようなもので、巷の反応はゼロ状態です。
 
会談の冒頭、習近平主席は「世界は新たな岐路に立っている。両国は手を携えて地球規模の課題に対応できるのか、美しい未来を創造できるのか。これらは歴史的な問いであり、大国のトップとして答えを出さなければいけない」と述べ、さらに「中国とアメリカはパートナーであるべきで、ライバルであるべきではない。2026年は両国にとって歴史的な一年になるだろう」と述べました。
これに対しトランプ大統領は、「友人である習主席と会談できて光栄だ。最大規模の会談になり、今後は素晴らしい関係を築いていけると信じている」と応じ、「米中関係はかつてないほど良好になるだろう。困難な時期でも我々はうまくやってきた」と続け、「問題が生じる度に、私があなたに電話し、あなたが私に電話し、我々はすぐに解決してきた」と両氏の良好な関係をアピールしました。
 
しかし、知りたいのは、こんな“歯の浮くような”言葉ではなく、両首脳の本音です。
その焦点の一つがイラン情勢ですが、両者は「ホルムズ海峡は開放されたままであるべきだとの認識で一致した」とされています。
トランプ大統領はFOXニュースのインタビューで「習主席から、ホルムズ海峡の開放に向け支援の申し出があった」と言及し、さらに「習氏がイランに軍事支援しないと明言した」と言いました。
しかし、中国側の発表はゼロなので、この話は嘘だと思ったほうが良さそうです。
この会談の直前、米国はホルムズ海峡でイランの石油タンカーをミサイル攻撃しました。
ただし一隻のみで、それも機関停止だけを狙った精密攻撃でタンカーを動けなくしました。
これが、この攻撃の狙いで、イランの石油輸出の阻止が目的です。
この攻撃で、他のイランタンカーは動けなくなると考えたのです。
では、この効果はあったのでしょうか?
会談直前というタイミングは、中国へのアピール(脅し?)と考えるべきでしょうが、狙った反応は引き出せなかったようです。
 
次の焦点はイランの核開発ですが、詳細は完全に伏せられたままです。
ホワイトハウスの報道官は、両首脳が「イランが核兵器を保有することは決してあってはならない」で合意したと述べていますが、「嘘だろう」と突っ込みたくなります。
会談に同行しているルビオ国務長官は、出発前に米国のニュース・インタビューに応じ、イラン情勢で「中国がより積極的な役割を果たすよう説得したい」と述べていましたが、会談後は無言でした。
そもそも、中国の説得をイランが受け入れるか以前に、中国は、イランの核疑惑をこのまま残しておいたほうが“利がある”と考えているはずです。
ゆえに、この問題は俎上にすら乗らなかったと考えるのが妥当でしょう。
 
経済協力の拡大は、関税騒動が落ち着いていることもあり、さらに両国とも苦しい事情は同じですから、貿易拡大を目指す枠組みの合意は当然のことです。
 
最後に、日本が最も関心を持つ台湾問題について述べます。
会談前、米政府高官は、米国の従来の台湾政策に「変更はない」と強調し、大統領自身も台湾への武器売却について協議する方針を表明していました。
しかし、中国は「この問題は適切に処理されなければ両国は衝突し、中米関係全体を非常に危険な状況に追い込む」と述べて米国をけん制し、「『台湾独立』と台湾海峡の平和は相容れない」と強く釘を刺していました。
習氏としては、会談で台湾有事に対し米軍が動かない確証を得たかったはずですが、さすがに、トランプ氏に対しストレートには要求しなかったようです。
大統領自身から、面と向かって拒否される可能性が大きいからです。
 
それでも、中国としては何らかの言質が欲しい。
せめて、台湾に対する武器売却を止めるか延期の確証が欲しい。
だが、この売却は米国にとり大きな利益になるので、トランプ大統領が承諾するはずはありません。
では、その代わりに中国は何を要求したのでしょうか。
 
危惧されるのは、トランプ大統領が過去に発言した「世界を米中の2大国で治める」ことの再確認を与えることです。
傲慢極まりない話なのですが、トランプ氏は後から「あれはジョークだ」と煙に巻けば良いと軽く考える人物です。
それでも、この言質を得たら中国は具体的に動き出すでしょう。
その第一のターゲットは、当然台湾ですが、第二は日本となる可能性が大きいです。
トランプ氏は、そこまで明確な合意は与えないと思いますが、小さな言質でも、どんどんと拡大解釈してくるのが、今の中国です。
今回の会談内容は霧の中のままでしょうが、日本の安保体制の強化を急ぐ必要があります。