「責任ある積極財政」の意味を読み解く

2026.04.30


学問の世界では、経済学は文科系に分類されています。
現に、大学の大半は経済学部を文科系に位置付けています。
しかし、経済の基礎理論は数学にありますから、その意味では理科系といえます。
現に、理科系に属する数学科出身の経済学者や評論家は何人もいます。
ということで、ここからは数学(算数レベルですが・・)で考えます。
 
経済は緊縮財政で縮み、積極財政で伸びる、これは数学を持ち出さなくても当然の理屈です。
江戸時代、八代将軍に就いた徳川吉宗は「質素倹約」を旨とする緊縮財政を進めました。
歴史の時間で習った記憶もあると思いますが、有名な「享保の改革」です。
江戸幕府が開かれてから100年以上が経ち、幕府の台所は火の車に陥っていました。
吉宗の緊縮財政への転換は当たり前と思われるでしょうが、この改革の断行で日本の経済全体は大きく落ち込みました。
幕府は、財政緊縮だけでなく、芝居などの遊興の禁止や華美な服装を取り締まるなどの「質素倹約」を極端なレベルまで押し進めたからです。
 
ところが、この吉宗の政策に真っ向から逆らったのが、御三家筆頭の尾張藩でした。
藩主の徳川宗春は、積極財政を唱え、芝居や音曲などを積極的に奨励したのです。
結果、日本全国が不況に沈む中、尾張だけは好景気を謳歌したのでした。
と、これは中学生レベルの話ですね。
 
では、話を現代に戻します。
高市首相は、就任以来「責任ある積極財政」を唱えています。
しかし「責任ある」は緊縮財政的な言葉で、「積極財政」とは矛盾する要素をはらんでいます。
果たして、首相の軸足はどちらに乗っているのでしょうか。
それが重要です。
 
マスコミや経済評論家は、以下のような論調で首相発言を解説しています。
「積極財政とは、景気対策のための支出を増やし、場合によっては国債発行も増やす政策です。
一方、『責任ある』の表現は、財政再建は堅持する、借金を増やさない、PB(プライマリーバランス)の黒字化を目指すという“引き締め政策”を意味します」。
この程度の解説で経済評論家を名乗らないで欲しいと思いますが、それは横に置きます。
 
一言で言えば「将来世代へのツケは増やさないで経済を活性化させる」ということのようですが、
理想論過ぎて、あえて「意味不明」な政治スローガン的な言葉と言わせてもらいます。
国民が聞きたいのは、「責任ある」と「積極財政」という相矛盾する2つのテーマをどのようにバランスさせるのかという具体的な政策です。
しかし、現在に至るまで首相からそうした具体的な説明はなく、掲げた「責任ある積極財政」は「意味不明」な政治的スローガンのままです。
 
首相自身の口から明確な説明が成されることを期待していましたが、その前に世界経済がトランプ米大統領によって引っかき回され、予測不能な状態になってしまいました。
そして今、その影響による原油価格の高騰で円安が進行しています。
現在、米ドルが159円から160円、ユーロが187円台で推移していて、対ドル以上に対ユーロの上昇が懸念されます。
また、人民元が23円台となっていることは、もっと気がかりです。
世界の金融マーケットが、経済減速が明らかな中国より「日本はもっと悪い」と見ているということだからです。
 
海外投資家は「日本は、物価高騰の中で、利上げができない、積極財政で財政規律が緩む、貿易赤字が拡大している、というように悪材料だらけ」と見ています。
その結果、「日本は中国より悪い」と考え、日本国債の購入機会をうかがっているのです。
もちろん「日本を助けよう」ではなく「日本から利益をむしり取ろう」ですが・・
高市首相は、こうした事態に、どのような策を打っていくのか、今後の政策が注視されます。
 
その一方、このところ税収の上振れ(年度末の税収増)が続いています。
4月27日の国会で、国民民主党の上田清司議員が「4年間で税収の上振れが23兆円強ある」と指摘し、
この上振れを活用した国民への富の返還として「基礎控除の所得制限の撤廃」などを提案しました。
これに対し、高市首相は
「すごく上振れた場合、補正予算の財源として活用するなどをこれまでしてきました。しかし、来年度から予算編成を変えますので、最初から補正予算ありきにはしません。予見可能性を高めるためにできるだけ必要なものは当初予算で措置をします」と明言し、
「緊急事態などの場合には補正も必要になることもあるので、税収の上振れについてはそういった形で対応していきます」と回答しました。
つまり、以前のメルマガで言及したように、6月に予定されている新しい「骨太の方針」を見てくれということなのです。
では、その内容を詳細に見てから、「責任ある・・」を評価することにします。